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……転…⑦
「離さぬ」
「あ、あっ……すめ、あ……」
「離さぬ……青葉」
ああ、もう……。
もう……ダメ。
「そなたを見ているだけで……」
ちゅっと音をたててキスをした皇が、耳元で小さく『果てそうだ』と囁いて、ゆっくり腰を動かし始めた。
ゆるゆると皇のペニスが動いて、気持ちのいい場所をこすっていく。
「あ、ん……あ……はぁっ、はぁ……」
もう、本当に……無理。
「皇っ」
「ん?」
皇はほんの少し息を乱しながら、またオレにキスをした。
「はぁ、もう……オレ……も……はぁ、もう……」
腰の奥に沸く快感。どんどん登りつめていく。我慢、出来ない。
もう……いきたい。
いきたい!
「青葉……」
皇の手が、オレのペニスを握った。
「ああっ、やっ!あ、すめ、あ……あっ!」
容赦なく、ペニスを扱かれる。
「あっ、はぁっ、あ……あ、ああっ!」
そんなことされたら、また飛んじゃう!
オレを扱く皇の手に手を伸ばしたけど、皇の手を止められない。
お尻の奥の快感と、直接ペニスに与えられる刺激で、もう……ダメだ。
「青葉、しっかり息を吐け」
皇の腕を掴むと、皇は片腕で、オレの体を包むように抱きしめた。
「はあっ……皇っ!やっあぁっ!」
皇の動きが、速くなった。
与えられる刺激全てが、快感になって、一気に登りつめていく。
皇の首に思い切りしがみついて、オレはまた吐精した。
「はぁっ、はぁ、はぁっ……」
いつまでもむずむずと続く快楽の波で、ガクガクと体の震えが止まらない。
皇はおでこにキスをすると、オレの中からペニスを抜いた。
「んんっ!」
オレのお腹の上に、温かいものが乗った感触で、皇も射精したのだとわかった。
「青葉」
皇に呼ばれて体を離すと、オレの前髪を撫でた皇が、ふわりとキスをした。
「そなたを離さなかったであろう?……怖かったか?」
「はぁ……はぁ……」
小さく横に首を振ると、皇は未だにビクビクと快楽にひくつくオレの体を抱き寄せて、ベッドにどさりと横になった。
一瞬、怖いと思ったけど……。
それより……嬉しい気持ちで……いっぱい。
また泣きたくなって皇にしがみつくと『どうした?』と、心配そうに聞いてくるから、本格的に泣けてきて、皇の胸に顔を埋めた。
皇に、すごく言いたかったことがある。
「「……会いたかった」」
オレがすごく言いたかったその言葉が、皇からも溢れて……重なった。
「っ!」
顔を見合わせた皇が、泣きそうな顔で、オレをまた抱きしめた。
もう一度『会いたかった』と囁いた皇が、また何度も唇を重ねてくる。
もうオレ……他には何にもいらない。
皇の体温を、こうして感じられるだけで……。
唇に触れる、柔らかい感触で目が覚めた。
「ん……」
「起こしたか?」
「……皇?」
まだ眠くて、目が開けられない。
耳元で皇が鼻で笑ったのがわかって、何だかオレまで笑ってしまった。
「何を笑っておる?」
「……わかんない」
何となく、嬉しいってだけで、とりたてて理由なんてない。
薄く目を開くと、皇がすぐ隣で、頬杖をついてオレを見ていた。
……照れる。
皇はオレの唇を指でなぞって、またふっと笑った。
「……今、何時?」
「もうすぐ五時だ」
「早っ」
「そろそろ出ねばならぬ」
「えっ?!」
そう言われて、ようやくぱっちり目が開いた。
もう皇……行っちゃうんだ。
「そのような顔を、するでない」
そのようなって?
「戻れなくなる」
「……」
戻らなきゃ、いいのに。
小さくため息を吐いてしまってからハッとすると、皇がギュッとオレを抱きしめた。
「雨花」
「……ん?」
「……何も囁けぬ余を……許せ」
「え?」
皇はそれ以上何も言わず、床からオレのパジャマを拾って、渡してくれた。
そのまま自分の着物も拾って着始めたから、オレも急いでパジャマを着て皇の着替えを手伝った。
「そなたにこのようにされると、気持ちが悪いな」
「はあ?!」
「ははっ」
うわっ……皇が……声を出して笑った!
「ん?」
「……ううん」
カッコイイ、とか……恥ずかしくて、言えるわけない。
「体は、平気か?」
着物をビシッと着終えた皇が、オレの頬を撫でた。
「……ん」
「来週は……学校に参るか?」
「……ん。行く」
「そうか」
皇が嬉しそうに笑うから、オレまで嬉しくなる。
「本丸に、戻る」
「……ん」
月曜日には、また会える。
そう思うのに……寂しい。
皇がドアの外の人に『戻る』と言うと、外から『お待ちください』という声が聞こえた。
「若様は本日、梓の丸で朝食をとるよう、ご宣託 が下されたとのことです」
「え?!」
ご宣託?
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