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はじめてのおつかい⑤

✳✳✳✳✳✳✳ 「で?どこ行くの?」 梅ちゃんと並んで歩いていた珠姫ちゃんが、唐突に後ろを振り返った。 「え?」 ……決まってない。 「詠ちゃんの誕プレ買いに来たんでしょ?何買うの?」 「えっと……何がいいんだろ?」 「は?決めてないの?」 う……やっぱり珠姫ちゃんは怖い! 「予算は?」 梅ちゃんがそう言いながら首を傾げた。 うん、やっぱり梅ちゃんは可愛い! 「予算は特に言われてない。梅ちゃんは何にしたの?」 「プレゼント?ボクはプラモデル」 「え?」 「詠さん、好きなんだって。プラモデル」 梅ちゃんって、ふっきーのこと『えいさん』って呼んでたんだ? 学校では『ふっきー先輩』だったと思う。 何でオレは『雨花さん』じゃないの? まぁ、いいけどさ。 「プラモデルってなんの?」 「日本のお城シリーズ」 「……へえ」 ガ○ダムとかじゃないんだね。 お城のプラモデルとか、ふっきーっぽいなぁ。 「皇は?何にしたの?」 横を歩いている皇を見上げた。 「ん?」 「ふっきーに何をあげるの?」 「何故聞く」 「え?かぶったらイヤだし」 「そなたと被ることはない。このような場所に売っておる物ではないゆえ」 「は?」 一体何をあげるわけ? そう思っていると珠姫ちゃんが『あ!お兄ちゃん!あれ小さい頃一緒に遊んだことなかったっけ?』と、皇を引っ張って、店先に出ているおもちゃを見に行ってしまった。 皇、ふっきーの去年の誕生日に、パソコンルームをあげたんだよね。 それと同等のものなら、オレとかぶることは確かにないか。 オレ、何をあげたらいいんだろ。 オレの誕生日には、ふっきーからDVDをわんさかもらったから、それに見合うくらいの物がいいんだろうけど。 んん…。 「あれ?」 え?皆、どこ? ついさっきまでおもちゃを見てたみんなの姿が見当たらなくなってる。 キョロキョロ辺りを見回しながら、みんなを探そうと歩き出すと、後ろからコツンと頭を叩かれた。 「あ」 振り向くと、顔をしかめる皇がいた。 「この距離で何故見失う?」 「あ、後ろにいたんだ?はぁ……みんなどこ行っちゃったかと思った」 「全くそなたは……」 小さくため息をついた皇が、オレの手を取った。 ものすごく人通りの多い、街中ですけど! 「そなたは手を繋ぐか、リードをつけねばならぬようだ。どちらが良い?」 何だよ、その二択。 「……手で、お願いします」 そう言ったオレを見て皇が鼻で笑うと、女の子の声で『きゃあ』という、小さい叫び声が聞こえた。 ハッとして周りを見ると、何かすごい、ジロジロ見られてる! 「はいはい。見せもんじゃないわよ!」 背の高い珠姫ちゃんが、皇に見とれているらしい女の子たちを、しっ!しっ!と追い払った。 珠姫ちゃん!カッコイイ! まぁ確かに、オレも皇と珠姫ちゃんがそこらへん歩いてたら、間違いなく二度見するよなぁ。 背が高いだけじゃなくて、めちゃくちゃ美男美女なんだもん、この兄妹。 梅ちゃんだって、ものすっごく可愛いから、単体で歩いてたら絶対目立つんだろうけど、この迫力ある兄妹と一緒にいたら、梅ちゃんでさえ目立たなくなるっていうね。 「そういえば……こんな風に街中フラフラ歩いてて平気なの?」 出てきた時は、全くそんな心配してなかったけど、皇はしらつきグループを束ねてる鎧鏡さんちのご子息様じゃんこんなとこフラフラしてて大丈夫なの?護衛の人も見当たらないけど……。 あ、もしかしてぼたんがどこかで見てくれてるとか? キョロキョロすると皇が、オレの頭を手で抑えてふっと笑った。 「鎧鏡一族はサクヤヒメ様からのご加護があるゆえ、どこに行こうが何をしようが、家臣もみな不必要に心配せぬ。この四人でご加護がないのはそなただけだ」 「え?」 「だが梅がそばにおれば、何があろうと案ずることはない。梅の体術の師は元傭兵だ。梅が使うのは、型にはまった体術ではなく実戦向きゆえ」 元傭兵が体術の師匠?!って、もうそれ実戦向きの最高峰じゃん! 「梅が同行する際はボディガードも必要ない」 「だろうね」 「ただ、一つ難点がある」 「何?」 「珠姫が共におる場合、梅の最優先人物は珠姫ということだ」 「へ?」 「今我らが同時に攻撃されれば、梅は惑うことなく珠姫を庇うであろう」 「おお!」 梅ちゃん、カッコイイ! 「ゆえに、そなたは余が守る。余から離れるでない」 「……ん」 う……余が守る、とか!カッコイイんですけど! 繋いだ手をちょっとだけ強く握って皇を見上げた時、『ねぇ!ぶらぶら歩いてて決まるのぉ?!』と、珠姫ちゃんに後ろからそう声を掛けられた。 「決まらないなら、ちょっとそこらへんでお茶しない?」 「ホント女の子はお茶好きだね」 「え?!ちょっと!女のコはお茶好きだねって、みーちゃん、他の女の子ともお茶したわけじゃないでしょうね!?」 「するわけないだろ?ボク鎧鏡の若様の奥方候補だよ?」 梅ちゃんがそう言うと、珠姫ちゃんは『そうね。みよしがお兄ちゃんのお嫁さん候補になってホント良かった!』と、ホッとしたように息を吐いた。 梅ちゃんのちょっとしたことでヤキモチを焼いたり安心したり……こんな珠姫ちゃんは、やっぱり何か可愛らしい。 オレが小さく笑うと、珠姫ちゃんが『何よ?』と、口を尖らせた。 「珠姫ちゃんって、可愛いなって思って」 「え?!」 オレの言葉に、三人が一斉にドン引きした。 え?!オレなんか変なこと言った?

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