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はじめてのおつかい⑯

✳✳✳✳✳✳✳ 翌朝、外から聞こえてくるガタガタという、何だかわからない大きな音で目が覚めた。 「っ!?……うわっ!」 目を開けると、すぐ近くにいた皇と目が合って、さらに驚いて飛び退いた。 「化け物でも見たか?」 皇はそう言って笑うと、腕を引いてオレを胸に抱きしめた。 その途端、皇の下半身が固くなっているのが、ダイレクトに肌に伝わった。 「ちょっ……」 ……っと待ったー! オレも、同じ状態……だよね、これ。 知られまいと腰を引くと、皇にぐっと戻された。 「ちょっ、と……」 まずい! ただの生理現象だっていうのに、お互いこんな状態になってると、おかしな気分になってくるじゃん! 生理現象だから!ただの生理現象だから! 「……何だ?」 皇はニヤリと笑って、囁くようにそう言うと、体をピッタリつけたまま、何度か腰を小さく動かした。 「っ?!」 も……ダメだってー! 皇の胸に額を押し付けると、鼻で笑った皇が、自分とオレのペニスを一緒に掴んで、一気に扱いた。 「あっ!はっ……んっ……すめ、ら、ぎっ!」 「っ……青葉……」 もう!……朝から何してくれてんの?こいつ!とか思うんだけど……皇に、切なげに名前を呼ばれたら……止められないんだよ!バカ! だって皇が、オレのこと欲しがってるとか思うと、すっごい……嬉しくなっちゃうんだもん。 夕べ、相当イカされたはずなのに……オレは、皇の手の中に、あっけなく吐精した。 「本丸に戻る」 吐き出された二人分の精液を手で受けた皇は、そのまま洗面所に消えて行ったと思ったら、寝巻きを羽織って戻ってきた。 ささっと白い寝巻きを着ていく姿に、思わず見とれた。 「そなたも余ばかり見ておらぬで、早く着替えよ。一位が起こしに参るであろう?そのような姿、余以外に見せるでない」 「え?……あっ!」 布団の中のオレは、真っ裸だ。 ぎゃあっ! そこら中に散らばったままだった部屋着を取って、ささっと着替えた。 そのあとすぐに、いちいさんが起こしに来た。 ハッとして時計を見ると、もう5時を過ぎている。 「車を回してございます。朝のお支度に間に合いますでしょうか?」 「ああ。問題あるまい」 皇を玄関まで見送りに行くと、外は一面の銀世界になっていた。 「うわっ!雪?!」 「はい。これでは本日は、休校になるかもしれませんね」 「休校に……休校にぃ?!」 「どうなさいましたか?」 「あ……課題が……」 終わってなかったー!! うおおおっ!休校になってー! ふっと鼻で笑った皇を、ギロリと睨みつけた。 誰のせいで、課題が終わらなかったと思ってるんだよ!バカー! って……皇の、せいじゃないか。 夕べ弱音を吐いた皇が、オレから離れてしまいそうな気がして、手を伸ばしたのは……オレのほうだ。 課題が終わらなかったのは……オレが、それを選んだから。 「寒いであろう。早う中に入れ」 オレの頭にポンっと手を置いて、皇が車に乗り込もうと背を向けた。 ギシッと、胸が締め付けられる。 いつからか、皇の背中を見送るのが辛かった。いつか皇と離れる時の苦しみが、会えた時の喜びを超えてしまいそうだと思ってた。それでもまだ、大丈夫だったんだ。ついこの前まで。 なのに。 それに気付くのが、どうしてこんなに、幸せだなって思えた、今朝なんだろう?。 今……超えちゃったよ。 今日休校だとしても、明日になれば会えるのに、今、皇と離れるのが、めちゃくちゃ辛い。 他にも大事な人がいる皇を求めても、傷付くだけって怖がって、逃げることばっかり考えてた。 でも……皇といたい。 今はもう、傷付きたくないってことより、そっちのほうが全然……オレの中で大きくなってる。 運転手さんが車のドアを閉めようとしていた。 「皇!」 ほんの一歩、前に出た。 「……参れ」 車から身を乗り出した皇が、オレの手を引いて車に引きずり込んだ。 「うわぁ!」 「行くか?行かぬか?」 昨夜もそうだった。 ほんのちょっと自分から手を伸ばしただけで、皇はオレを一番近くまで引っ張ってくれた。 あとはオレが、決めるだけ。 「いちいさん、ごめんなさい!皇のこと本丸まで送ってきます!すぐ戻りますから!」 外のいちいさんが『いってらっしゃいませ』と、ニッコリ大きく頷いた。 本丸まで送るだけの短い時間でも、ちょっとでも長く、一緒にいたい。 オレ……皇と、これから先も……一緒にいたい。 一緒にいられるように、頑張る。 もうそれしか、選べない。

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