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微触④

「ねえ、このこたつって何記念?」 「ん?」 「何で急にこたつくれたの?」 「あ?そなたが欲しがったからと言うたであろう」 「お前、候補が何か欲しがったら、その都度プレゼントしてるの?」 「そんなわけがあるまい。……そなただからだ」 えっ?!そなただから? ちょっ……ドキドキ、しちゃうじゃん!え?そんなこと言って、いいの?オレだからって……それって……。 「先日の詠の誕生日には温泉をやった」 「は?」 温泉? 「自分で掘ってみたいと申すゆえ、温泉が湧くであろう土地を贈ったのだ」 「はぁ」 ふっきーの誕生日に、何をプレゼントするか聞いた時、オレとは絶対かぶらないものって言ってたけど、確かにそりゃあ被るわけないよね。 「来月の梅の誕生日には、トレーニング用の運動公園を贈る予定だ」 「はぁ」 この鎧鏡家なら、そんなの作る場所、いくらでもあるだろうしね。 ってか、何の話?こたつは何記念かって聞いてるのに! 「駒には車を、誓には山を一つ贈った」 「……だから?」 だから何だよ?! 他の候補様たちへの誕生日プレゼントがあまりにすごくて、聞いてて何かムカついてきた。 「候補一人を特別扱いしてはならぬ。それは優遇だけに限ったことではない」 「は?」 「そなたの誕生日、余は何を贈った?」 「え?冷蔵庫」 「それをそなただけ冷遇しておると言う者もおる」 「え?」 冷遇?オレは、あの時一番欲しい物を貰って、ものすごい嬉しかったよ?冷遇されてるなんて、ちっとも思ってなかったのに。 オレが一番欲しい物をもらったんだから、それで良くない? 良く、ないからそんなこと言われてるんだもんね……。 候補は、全てにおいて足並みを揃えないといけないんだ。 誕生日に一番欲しかった冷蔵庫をもらっただけじゃ、オレだけ冷遇されてるなんて言われるのも、今ではなんとなく、わかってきたつもりだけど……。 「すごい嬉しかったのに……」 冷遇してるなんて……あの冷蔵庫をもらって、オレはすごく嬉しかったのに、何か喜んじゃいけなかったみたいじゃん。 口を尖らせたオレの頭をポンっと撫でた皇が、ふぅっとため息をついた。 「そなたが喜んだのは余とてわかっておる。だが鎧鏡の次期当主としては、そなたを冷遇しておるなどという声も拾わねばならぬのだ」 「そっか。だから……ここをくれたんだ?」 他の候補様と、バランスを取るために……。 「ああ、それがこの和室をそなたに贈るための、家臣団向けの理由だ」 「は?」 「実際はそうではない。……そなたがこたつを欲しがった時、実家に帰りたそうにしておったゆえ……こたつ一つで実家に帰りたいなどとそなたに言わせぬためだ」 え? そんな、理由で? ぷっと吹き出すと、皇は『笑い事ではない!』と、顔をしかめた。 だって……実家に帰りたいなんて言う訳ない。オレが帰る『うち』は、今はもうここなのに……。 皇は『これが一石二鳥というものだ』とぷいっと顔を背けた。 何それ?今日の皇、ちょっと可愛いよ? オレが実家に帰らないように、そんな言い訳まで考えて、ここをくれたなんて……。 「帰らないよ」 こたつがなくても……ここにはお前がいるじゃん。 「ん?」 小さく呟いた言葉は、皇には聞こえなかったみたい。 「なんでもない。あっ!課題忘れてた!」 それからオレは、こたつで高遠先生の課題に取り組んだ。 皇は本丸に戻らず、座椅子にもたれて、オレの隣で小説を読んでいた。 微かにこたつの中でぶつかる足にドキドキしながら、わからないところを皇に教えてもらいつつ、何とか課題を終わらせた。 「あ!もうこんな時間!」 時計を見るともう6時だった。そろそろ夕飯の時間じゃん! 「皇、本丸に戻らないでいいの?」 「あ?このまま渡りだ」 「……」 「不服そうだな」 「だって……ついこの前の夜も、オレのとこに、付いててくれたじゃん。……オレのとこばっかりになっちゃって、いいの?」 「本丸には、今夜は渡りだと言うてある。そなたに渡らぬで、余にどこに渡れと申す」 そう言って皇は、こたつの中で器用にオレの着物の裾を割って、オレの足の間に自分の足を滑り込ませた。 「ちょっ……」 その時、廊下がキュッと鳴る音が聞こえた。 誰か来る! 皇にもその音が聞こえてるはずなのに、皇はなおも足を伸ばした。 「や……」 ビクリと体を震わせた時、扉の外から声を掛けられた。 「失礼致します。夕餉の支度が整いました。こちらにお持ちいたしますか?」 いちいさんだ。 「すぐ運べ」 皇の足の指が、オレの……中心に届いた。 「んっ!」 ピクンっと、下着の中でペニスが震えた。 「かしこまりました」 いちいさんさんは返事をすると、すぐにまた床を鳴らしながら、去って行った。 「はっ……皇……」 皇の足の指が、オレの陰嚢を柔らかく揉んで、スウッと裏筋をなぞっていく。 「っ!……ちょっ……んっ」 体が小さく震えだした。 すぐ夕飯を運べって言ったのはお前なのに……側仕えさんたちが来ちゃうじゃん! 「余にどこに渡れと申す?」 「はっ、あ……」 逃げようとすると、皇に足首を掴まれた。 「逃がさぬ」 また廊下の鳴る音が聞こえてきた。 側仕えさんたちが近付いて来る。 「だ……っ!」 皇は、オレの下着の中に潜らせた足の指で、キュッとオレのペニスの先端を挟んだ。

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