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微触⑦
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「あ……」
高遠先生の授業が終わって和室に戻ると、皇がこたつでうたた寝していた。
こたつの横に布団が敷かれている。
シングルサイズの布団が二組、くっついて敷かれてるんじゃなくて、特注なんじゃないかっていうくらいどでかい布団が一組……。
恥ずっ!何?このお膳立て!
ここに何を増設してるか、いちいさんも知らないって言ってたけど、こんな布団を用意してるくらいなんだから、ここに和室を増設してるって、いちいさん、本当は知ってたんじゃないの?
いちいさんって、オレのこと驚かせたがりだもん。
「……」
皇はすっかり寝入っているようだ。
こたつで寝るなんて風邪ひくじゃん。
皇を起こそうと近くに座って、寝顔を覗いた。
そういえばあげはがいつか、若様はいびきがうるさいから、人前で寝ないって本当ですかって、言ってたことがあったっけ。
思い出して吹き出しそうになった。
皇がいびきをかいてるのなんて、聞いたことがない。
今もゆっくり胸を上下させて静かに寝てる。
寝方も何だか、殿様っぽいっていうか……まぁオレ、殿様っぽいって、よくわかんないけど。
……やっぱりカッコイイよなぁ、皇って。寝てても絵になるっていうか。むしろ、いびきが酷いくらいで良かったのに。そうだとしてもオレだったら全然、幻滅したりしないのに。
「……」
風邪ひくよって、声を掛けようと思ったのに……皇の、力の抜けた唇に、吸い込まれるみたいに……唇を重ねた。
「うわぁっ!」
皇にキスした瞬間、体をグルンと回された。
畳の上に仰向けにされたオレを、口端を上げた皇が見下ろしていた。
「なっ……」
寝てたんじゃないの?!
「余の寝込みを襲うとは……」
オレの両手を畳に縫い付けるように、皇の両手が押さえ付けた。
「……起きてたの?」
「そなたが楽しげに床を鳴らしながら歩いて参った時点で起きておった」
「……」
楽しげって何だよ。寝たフリとかしやがって!すごい恥ずかしいことしちゃったじゃん!うおおおお!
ギッと皇を睨むと、嬉しそうな顔をして、オレの目尻にキスをした。
「待っておった。……次はそなたが、待つ番だ」
「え?」
皇はゆっくり、口端を上げた。
「う、あ……」
混じる唾液が口の端から溢れていくのを、どうにも出来ずに皇の腕にしがみつくと、皇は口の中に舌を差し込んだまま、オレのセーターの中に手を入れた。
「っんぁ!」
薄いTシャツの上から乳首を撫でられて、すでに晒されていた下肢が、意図せずビクリと痙攣した。
「ん、ん……んんっ……」
皇の厚い舌で、口の中がいっぱいになってる。
皇の舌に促されるまま、自分の舌を絡め続けた。
熱い……熱いよ。もう、体中が……皇を、待ってる。
どれだけ長く、キスされてるんだろう?
あっという間にズボンもパンツも脱がされたから、すぐにでも……触られると……思ったのに。
皇の指はオレの指を繋ぎ止めたまま、時折きつく握ってくるだけで……。
ようやく乳首に伸ばされた皇の右手に、体が喜ぶのを隠せない。
晒された下肢が幾度も震えて、先端から滲んだ雫が、陰茎をツーっと溢れて濡らしていった。
「す、め……らぎ……」
待てない。
もう、待てない!
早く……触って。
「ん?」
皇の口が、ゆっくり弧を描く。
「皇っ」
「ここにおる」
「あ、はっ……」
皇の指で、布越しに潰される乳首が、どんどん快感を膨らませていく。
「あっ、あ、あぁっ……皇っ!」
我慢出来ない!
解放された左手を、自分のペニスに伸ばすと、触れる直前、手首を掴まれ止められた。
「そなたに触れて良いのは余だけだ。そなたであろうが、余の許しなく触れてはならぬ」
「や、はっ……すめ、らぎ……はぁっ」
「……待てぬか?」
「はぁ……っは……」
皇の膝が、閉じていたオレの膝を割った。
オレは我慢出来ずに、立てた膝を自分から開いた。
「あ、あ……はぁっ、皇……」
「待てぬか?」
皇は、荒い呼吸を続けるオレの口に指を伸ばした。
オレの口の中に指を入れて、軽く舌を撫でてくる。
必死に皇の指に吸い付くと、足の間に置かれた皇の足が、ピクリと揺れた。
「はっ……待、て……なぃ……」
そんなこと……恥ずかしくて、言いたくないと、思ってたのに……。
もう、これ以上無理。もう、なんでもいいから……早く、してよ。
「っ……」
オレを見下ろしていた皇が、小さく息を漏らして、オレに覆いかぶさった。
首筋を唇で啄むようにキスしながら耳までたどり着くと、吐息混じりに、囁いた。
「これ以上は、余が……そなたを待たせられぬ」
オレの唾液で濡れた指を舐めた皇は、大きく開いたオレの足の間に、手を入れた。
クチッという小さな音をたてて、皇の指が、オレの中に入って来た。
「ああっ!」
覆いかぶさる皇の腹に、ペニスを擦りつけるように、激しく腰を振った。
「青葉……」
ああ、もう……。
もう、理性とか、飛び散っちゃうくらい……気持ちぃ……。
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