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クールビューティーと双子の弟②
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「失礼致します」
釣り勝負の最中、駒様が入って来た。
「あ!駒様、帰っていらしたんですか」
「私は候補様方の教育係でもあります。新たな候補様が決まり次第、すぐに仕事が始まりますので、昨夜には曲輪に戻っておりました」
そう言えば、去年オレが選ばれた時も、駒様は皇と一緒に展示会にいた。
って……あれ?
「駒様、去年、展示会にいらっしゃいましたよね?候補様なのに……」
候補は展示会が終わるまで、皇に会ったら駄目なんじゃなかったの?
「もちろん私も候補ですので、若様が候補様を決められたと知らせを受けてから、会場に入りました。去年私が会場に入った時には、若様はすでに、雨花様を選ぶと決めていらしたということでしょう」
「そう、だったんですね」
去年の展示会の時、オレしか見えてなかったって、皇が言ってくれたのを思い出して顔が熱くなった。
でも……。
今年もそんな風に、誰かを選んでいたとしたら……そんなの、いやだ。
「駒様、もしかしてさっきの太鼓の音、候補様が決まったんですか?」
梅ちゃんが釣り堀を見ながらそう聞いた。
あ!釣り勝負はまだ終わってなかったんだっけ。
「はい。決まりました。もう外出なさって大丈夫だと、皆様にお伝えに来たのです」
「え?早くないですか?今年選ばれた候補様もお一人ですか?」
梅ちゃんは釣りをやめて駒様に向いた。
新しい候補様のことを聞きたい、けど、聞きたくない。
でも、どうせいつかは知ることだ。
「いいえ、お二人です」
「お二人?!」
釣り堀周りの側仕えさんたちまで、それを聞いてざわつき始めた。
二人……。
一人だけを選ばなかったと聞いて、少しホッとしていた。
「杉の丸に、お楽 の方様、桐の丸に、晴れの方様と名付けられた候補様が入られます。お二方共、今年度より高校三年生ですので、皆様方とは神猛学院でお顔を合わせることになるでしょう」
「あ!あの!」
駒様に向かって手を挙げた。
「はい、何ですか?雨花様」
「あの……おらく様とはれ様は、どのような字を書くのですか?」
雨の字は……使ってない?
「楽しいという字でお楽様。天気の晴れで晴れ様です」
「そう、ですか」
それを聞いて、さらにホッとした。
「新しい候補様はどのような方々なんですか?」
梅ちゃんは興味津津で楽しそうにそう聞いた。
本当は皇の嫁候補じゃない梅ちゃんからしたら、新しい嫁候補がどんな人かなんて、他人事だもんね。気楽なもんだよ。
「そう……ですね。少々ご挨拶させて頂いただけですので何とも……。お楽様は大変しっかりした方という印象を受けましたが、もうお一方の晴れ様は……」
「晴れ様は?」
「そのうちおわかりになるでしょう。……腕が鳴ります」
「え?!」
腕が鳴る?!去年オレ、駒様に同じこと言われた!
もしかして……仲間?!オレの仲間っぽい人?
「では、私はこれで」
駒様は頭を下げて、いそいそと部屋を出て行った。
駒様も同じ候補なのに忙しそう。去年の今日、駒様がつきっきりでオレの曲輪入りの準備をしてくれたことを思い出した。
これから新しい候補を二人も迎えるんだから、駒様はそりゃあ忙しいよね。
「どんな方々か楽しみですね」
「腕が鳴るとは……晴れの方様はどのような方なのでしょう」
それから新しい候補様の話やら、去年オレが入った時の話やらをしながら釣り勝負は続き、最終的にいつみさんの活躍で、またうちが優勝した。
でも今回の準優勝は、樺の丸だった。
「梓の丸は強いですね。素直に負けを認めます」
樺の一位さんがそう言って笑った。
おお!これが勝負で芽生える友情ってやつ?
「あ、ありがとうございます!」
樺の一位さんに頭を下げると『側仕えに頭を下げるなど候補様がなさることではございません』と、樺の一位さんに一喝された。あう。
「いいえ。うちの雨花様はこれで良いのです」
いちいさんがそう言ってにっこり笑った。
いちいさあああん!
「そうだよ、一位。お前は僕の一位だろう?雨花様のことは梓の一位が考えることだ」
「梅様……そうですね。雨花様、出過ぎたことを申しました。お許し下さい」
「あ、いいえ!むしろ、ありがとうございます!」
怒ってくれる人は、オレのことを考えてくれてる人だって、柴牧の母様がいつも言ってた。
「私が梓の一位でなくて良かったですね」
樺の一位さんがそう言って笑うと、隣のいちいさんもふっと笑った。
「ええ、本当に。あなたではなく、私に梓の一位という職務を与えてくだされたサクヤヒメ様に感謝致します」
いちいさんっ!
「雨花様は側仕えに愛されてますね」
梅ちゃんがそう言うと、いちいさんはまたにっこり笑った。
「はい。ですが、梅様も同様かと存じます」
「あ、うん。そうだよね!ありがとう、梓の一位」
いちいさーん!もー!ホント大好き!
オレも、いちいさんがうちのいちいさんで、ものすごーく、サクヤヒメ様に感謝です!
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