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クールビューティーと双子の弟③

4月11日 晴れ 今日は、神猛学院高等部の始業式です。 クラス発表で浮かれるみんなを横目に、生徒会室に向かった。 4月2日以外、ずっと学校に来ていたオレは、自分が3年A組であることも、皇とふっきーと生徒会の面々が同じA組であることもすでに知っていた。 生徒会室でちょっと仕事を済ませると、始業式が開始されるので、体育館に集合するようにと放送が入った。 オレは急いで第一体育館に向かった。 生徒会役員は、こういった式典の際、先生方と同列に並ばされることが多い。 始業式も例に漏れず、オレたち生徒会役員は、先生方と一緒に前の方に並んで、校長先生の長い話を聞いていた。 「ねぇ、ばっつん」 「ん?」 「B組の転入生、見た?」 B組の転入生?!って、もしかして……新しく入った候補様、だよね。 「サクラ見たの?」 「声大きいよ、ばっつん」 「あ……」 つい興奮して……。 「三年になってから転入するなんてそうそうないのに、B組に二人も入って来るなんてね。さっき一人職員室でちらっと横顔だけ見たんだけど……ものすっっっっっっっごい美形だった!」 「……」 ものすっっっっごい……美形……。 「もう一人はどんな子かわかんないけど、同じB組であの美形と一緒の日に転入なんて、見る前から同情しちゃうね」 「サクラが見た転入生、そんなかっこいいんだ?」 「かっこいいっていうかね……綺麗系。ばっつんが白雪姫だとしたら、あっちはオーロラ姫って感じ」 「誰?」 オーロラ姫って誰? 「眠れる森の美女だよ。ばっつん、知らないの?」 「……」 何か馬鹿にされてる感がプンプンしてるけど、オーロラ姫知ってるやつ、この体育館に20%もいないと思う! 「僕は個人的に、可愛い要素の強い白雪姫のほうが好きだなぁ。小人たちにも大人気だしさ」 「はぁ」 サクラの好みはどうでもいい。 「でもあの転入生は、波乱の幕開けを予感させる美貌だよ」 いつまでもこそこそ話しているオレたちに、前に立っていた先生が振り向いて『しっ!』と小さく注意した。 「あ、すいません」 二人で謝ったあと、サクラがまたこっそり話し掛けてきた。 「あとで一緒にB組に見に行こうよ」 「あ、うん」 ものすごい見たい! サクラが言う美貌の転入生って、どっちだろう?楽様かな?晴れ様かな? しっかりしてるのが楽様で、オレっぽいらしいのが晴れ様、だよね? イメージ的には、そのしっかりしてるっていう楽様が、サクラ曰く美貌の持ち主……な、気がする。 その転入生が並んでいないかと、三年生の列を見て、いつも頭一個分飛び出ている皇がいないことに気がついた。 皇、今日も来てないんだ。 しらつきグループ各社の決算と新年度の始まりが重なっていて忙しいらしく、展示会が終わったあとも、皇はまだ誰のところにも渡っていない。 去年、皇が初めてオレのところに渡って来たのって、編入試験の日だったよな、確か。 ここのところ、全然渡りを知らせる鈴の音は聞こえないけど……もしかしたら、晴れ様とか楽様のところに、すでに渡ってたり……しないよね? 今日も……会えないのかな? 始業式終了後、生徒会役員と各委員会役員は、体育館の片付けに取り掛かった。 片付けをしている最中、サクラの話は、B組の転入生がものすごい綺麗だってことばかりだ。 「本当なのかね?」 かにちゃんが疑わしい目をサクラに向けた。 「何?」 「サクラの言う''綺麗"は微妙だからなぁ」 「ええっ?!何言ってんの?!僕の言う"綺麗"は世界基準だよ?」 「俺も見たけど、B組の転入生、ホント綺麗だったぞ」 田頭がそう言いながら立てた親指を、サクラがあらぬ方向に曲げた。 「ぎゃあっ!」 「今、きみやす……転入生のこと、綺麗って言った?」 「痛ったぁ!」 「言った?!」 「違っ!痛っ!痛いって!サクラ!」 さらに曲げられた田頭の親指を心配しつつ片付けは終わり、体育館の鍵を閉めた。 『鍵返してくる。先行ってて』と、一人職員室に向かった。 職員室のキーボックスに鍵を返して廊下に出ると、校庭をこちらに向かって歩いてくる人が、目の端に映った。 「っ?!」 ……皇?!

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