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クールビューティーと双子の弟④
このまま行くと……昇降口でばったり、会える?かも。
……どうしよう。
うわ、なんか……バクバクしちゃって……どうしよう。
こんなんで皇に会ったら、倒れちゃいそう。
でも……会いたい。
結局この前は声を聞いただけで、一ヶ月近く、姿を見ていない。
え?ちょっと待って!さっき校庭を歩いたのって、皇、だよね?チラっと目の端で捉えただけだったけど、皇を見間違えるわけない。
しっかり確認しようと、もう一度窓の外を見てみると、さっきいたはずの、皇らしき人の姿はもうなかった。
「え?」
あんまり会いたいって思ってるから、幻覚見えた?とか?
それでもどこかにいないかとキョロキョロ探していると、後ろから急にお腹を抱えられて、体が浮いた。
「うおあっ!」
なにーっ?!
「騒ぐでない」
「あ」
皇……だ。やっぱりさっき校庭歩いてたの、皇だったんだ。
「参れ」
皇はオレを肩に担いだ。
「ちょおおおっ!」
参れって、お前に担がれてるんだから行くしかないじゃん!
「え、ちょっ、何して……」
皇は、階段下の物置のドアを開けた。
前も一回、ここに押し込められたことがあった。
「そなたこそ何をしておる?」
オレを肩から下ろして、顔を覗き込んでくる。
「……」
皇と視線を合わせた途端、何も言えなくなって、皇の胸におでこをつけた。
皇もそれ以上何も言わないで、ぎゅうっとオレを抱きしめるから……オレも皇のシャツの背中を、ぎゅっと握りしめた。
うう……皇のにおいだ。
すぅっと皇の胸の中で、大きく深呼吸した。
会いたかった。
すごい、会いたかったよ。
展示会のあと、すぐに渡りを再開すると思ったのに、全然しないし。
会えてホッとしたら……我慢してた分、ものすごい腹が立ってきた。
皇の背中をきゅっとつねると、皇がビクッと震えた。
「何だ?」
皇を睨み上げると、皇がふっと笑った。
笑ってんなよ!オレは怒ってるんだから!
「何をむくれておる?」
「別にっ?!」
長く放っておかれて、ムカついてるとか言えるか!
鼻で笑った皇が、オレの髪をさらりと撫でた。
キス、される?
そう思ったのに、皇はまたオレを胸に抱き込んだ。
「皇……」
キス……しないの?
皇の腕の中で顔を上げた時、廊下で予鈴が鳴り始めた。
今日はさすがに授業はないけど、ホームルームがある。
絶対自己紹介とかするはずだ。去年と全く同じメンバーだけど……。
「教室に参るか」
皇はオレを腕の中から解放して、背中を向けた。
本当に、キスもしないで、出て行くの?
「……」
もしかしたら、本当に新しい候補様を嫁にすることに決めて……だからオレとは……キスも、しないって、こと?
でも本当に新しい候補様に決めたんだとしたら、オレのこと、こんなとこに引っ張りこまない、と、思う。
こんなところに連れ込んだくせに、キスも、しないとか……わかんない。皇が何を考えてるのか……わかんない。
胸がぎゅうぎゅう苦しいよ。
キス……しないの?本当に?
物置から外に出ようとしている皇の腕を掴んだ。
「雨花?」
「……」
すごく怖いのに……怖いから、皇の気持ちを今すぐ確かめたい。
振り向いた皇の胸倉を掴んで、ぐっと引いた。
驚いた顔をしてる皇の唇に、自分の顔を近付けると、皇にふいっと顔をそむけられた。
「っ!」
「ならぬ」
な……んで?
なんで?
本当に、もうオレとは……キスも……したくない、の?
皇の胸倉を掴む手の力が抜けた。
ずるりと下に落ちそうになったオレの両手首を、皇が強く掴んだ。
「これ以上そなたに触れれば……余は今この場で、際限なくそなたを求める。良いのか」
な、んだよ。お前……どうしていっつもそうなんだよ!
ものすごーく不安にさせて……そのあとものすっごく……喜ばせて!
ホント、ムカつく!
すごい怖かったじゃん!
もうお前の側にいられないって……すごい……怖かった。
「オ、レ……」
オレは……梅ちゃんの誕生日の次の日、お前を送り出した時から、もうずっと……お前のこと……求めて、たよ。すごく、すごく……。
今言ったことが本当なら……いいに決まってる。
場所なんかどうでもいいから……今すぐ際限なく、求めてよ。
手首を掴まれたまま、もう一度皇の胸倉を掴んで、強く引いた。
「次、よけたら……怒る」
そう言って近付けた唇が、ほんの少し重なると、それから先は、本当に際限ないんじゃないかって、怖くなるくらい……求められた。
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