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クールビューティーと双子の弟⑤

✳✳✳✳✳✳✳ 急にガタガタガタっと、階段を大勢が降りてくる音が聞こえて、びっくりして震えると、オレの中に入っていた皇のペニスが、トクンっと脈打ったのがわかった。 「んうっ……」 体の中からズルリと抜かれる感覚すら、どうしようもなく……気持ち、いい。 ひっきりなしに階段を降りてくる足音に、どれだけの時間、ここでこうしていたのかわからないけど、すでに下校時間になってしまったんだってことはわかった。 「どこか辛くないか?」 「ん」 皇は、乱れたオレの制服を整えると、どこかに電話をかけた。 「今すぐ迎えを寄越せ」 それだけ言うと、皇はすぐに電話を切った。 今の電話相手、誰だろう?駒様? オレが皇と電話をした時も、今と同じように言いたいことだけ言ったあと、ブツリと切られたのを思い出して、ちょっと笑えた。 「これから仕事?」 「あ?」 「迎えを寄越せって……」 「ああ、そなたの迎えを呼んだのだ」 「え?」 「今日はもう曲輪に戻れ。……すまぬ。無茶をした。誠、辛くはないか?」 皇は、そっとオレの頬を撫でた。 「痛、い、けど……」 辛くはない。何か……幸せ、で。 いっつも、もういいってくらい時間をかけて、オレに負担がかからないようにって、気遣ってくれる皇が……今日はいつもと全然違ってて……久しぶりにそういうことしたのに、何かあっという間にそうなっちゃって、その……要するにちょっと、痛い。 だけど……そんな痛みすら、皇と、そういうことをした証拠、みたいで……。 「……許せ」 皇は、またギュウッとオレを抱きしめた。 「怒ってない」 「そなたをもう二度と傷付けぬと誓ったに……加減することすら儘ならぬ」 加減なんて、しないでよ。 オレもギュッと抱きつくと、皇は、オレの頭に何度か頬を擦り付けた。 「雨花」 「ん?」 「余はこのまま、そなたと共に曲輪に戻ることは叶わぬ。一人で歩けるか?」 「うん」 ホント、殿様のくせに心配性なんだから。 皇を見て笑うと、安心したような顔をして、オレに軽くキスをした。 「雨花」 「ん?」 「この先、環境が変わるであろう。何よりそなた自身を大事にし、守れ」 「え?」 「良いな」 「……わかった」 皇が何で急にそんなことを言ったのかはわからなかったけど、環境が変わるっていうのは、新しい候補様を迎えたことを言ってるんだろうと、思った。 階段を降りる足音が止むのを待って、物置から出た。 携帯の着信履歴に、何件も名前が残っていた田頭に電話を入れて、今日は具合が悪いからもう帰ると伝えた。 そろそろ迎えの車が着く頃かもしれない。 職員室に行くと言う皇と、教室に鞄を取りに行かなきゃいけないオレとは、この先、向かう方向が逆だ。 「明日、ね」 「ああ」 皇の背中を見送ってから教室に向かった。 カバンを取って教室から出ると、隣のB組から、騒がしい団体が廊下に出てきた。 「あ!ばっつんだ!」 普通に通り過ぎようとすると、急にそんな風に声を掛けられてビックリした。 A組以外の奴とは、そこまで話したことがなかったんだけど……。 ばっつんですが、何か? 「ほら!ね?ソックリでしょ?」 団体さんの一人が、後ろに向かってそんなことを言った。 ソックリ?って、何? 「え?どれ?どれ?……うわあっ!」 団体さんの後ろの方から叫び声が聞こえると、いつか観た、海が割れる映画みたいに、団体さんが左右に割れて、奥のほうに立っていた人と目が合った。 「……」 め……ちゃくちゃ……綺麗! サクラが言ってた転入生だって、一目でわかった。 皇と会えて、新しい候補様たちのことを忘れてたけど、この人で間違いない!ものすごく綺麗な人だ。 その姿に視線を外せず固まっていると『痛ったぁ』と声がして、綺麗な人のすぐうしろで、転んでいる人がいるのに気が付いた。 さっきの叫び声は、どうやらこの人が転んだ時にあげた声らしい。 「ゆきちゃん、大丈夫?」 周りにいる人たちが一斉に手を出すと『あはっ、転んじゃった』と、床に座り込んでいた人が、頭を掻きながら顔を上げた。 「うっわ!やっぱりゆきちゃんとばっつん、そっくり!」 "ゆきちゃん"と呼ばれたその人は、オレをジロジロ見ると『ホントだ!俺、自分とこんな似てる人、初めて見た!』と、オレを指差した。 え?似てる?キミとオレが? ……そう、かな? っていうかこの人が、もう一人の、候補様?

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