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クールビューティーと双子の弟⑤
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急にガタガタガタっと、階段を大勢が降りてくる音が聞こえて、びっくりして震えると、オレの中に入っていた皇のペニスが、トクンっと脈打ったのがわかった。
「んうっ……」
体の中からズルリと抜かれる感覚すら、どうしようもなく……気持ち、いい。
ひっきりなしに階段を降りてくる足音に、どれだけの時間、ここでこうしていたのかわからないけど、すでに下校時間になってしまったんだってことはわかった。
「どこか辛くないか?」
「ん」
皇は、乱れたオレの制服を整えると、どこかに電話をかけた。
「今すぐ迎えを寄越せ」
それだけ言うと、皇はすぐに電話を切った。
今の電話相手、誰だろう?駒様?
オレが皇と電話をした時も、今と同じように言いたいことだけ言ったあと、ブツリと切られたのを思い出して、ちょっと笑えた。
「これから仕事?」
「あ?」
「迎えを寄越せって……」
「ああ、そなたの迎えを呼んだのだ」
「え?」
「今日はもう曲輪に戻れ。……すまぬ。無茶をした。誠、辛くはないか?」
皇は、そっとオレの頬を撫でた。
「痛、い、けど……」
辛くはない。何か……幸せ、で。
いっつも、もういいってくらい時間をかけて、オレに負担がかからないようにって、気遣ってくれる皇が……今日はいつもと全然違ってて……久しぶりにそういうことしたのに、何かあっという間にそうなっちゃって、その……要するにちょっと、痛い。
だけど……そんな痛みすら、皇と、そういうことをした証拠、みたいで……。
「……許せ」
皇は、またギュウッとオレを抱きしめた。
「怒ってない」
「そなたをもう二度と傷付けぬと誓ったに……加減することすら儘ならぬ」
加減なんて、しないでよ。
オレもギュッと抱きつくと、皇は、オレの頭に何度か頬を擦り付けた。
「雨花」
「ん?」
「余はこのまま、そなたと共に曲輪に戻ることは叶わぬ。一人で歩けるか?」
「うん」
ホント、殿様のくせに心配性なんだから。
皇を見て笑うと、安心したような顔をして、オレに軽くキスをした。
「雨花」
「ん?」
「この先、環境が変わるであろう。何よりそなた自身を大事にし、守れ」
「え?」
「良いな」
「……わかった」
皇が何で急にそんなことを言ったのかはわからなかったけど、環境が変わるっていうのは、新しい候補様を迎えたことを言ってるんだろうと、思った。
階段を降りる足音が止むのを待って、物置から出た。
携帯の着信履歴に、何件も名前が残っていた田頭に電話を入れて、今日は具合が悪いからもう帰ると伝えた。
そろそろ迎えの車が着く頃かもしれない。
職員室に行くと言う皇と、教室に鞄を取りに行かなきゃいけないオレとは、この先、向かう方向が逆だ。
「明日、ね」
「ああ」
皇の背中を見送ってから教室に向かった。
カバンを取って教室から出ると、隣のB組から、騒がしい団体が廊下に出てきた。
「あ!ばっつんだ!」
普通に通り過ぎようとすると、急にそんな風に声を掛けられてビックリした。
A組以外の奴とは、そこまで話したことがなかったんだけど……。
ばっつんですが、何か?
「ほら!ね?ソックリでしょ?」
団体さんの一人が、後ろに向かってそんなことを言った。
ソックリ?って、何?
「え?どれ?どれ?……うわあっ!」
団体さんの後ろの方から叫び声が聞こえると、いつか観た、海が割れる映画みたいに、団体さんが左右に割れて、奥のほうに立っていた人と目が合った。
「……」
め……ちゃくちゃ……綺麗!
サクラが言ってた転入生だって、一目でわかった。
皇と会えて、新しい候補様たちのことを忘れてたけど、この人で間違いない!ものすごく綺麗な人だ。
その姿に視線を外せず固まっていると『痛ったぁ』と声がして、綺麗な人のすぐうしろで、転んでいる人がいるのに気が付いた。
さっきの叫び声は、どうやらこの人が転んだ時にあげた声らしい。
「ゆきちゃん、大丈夫?」
周りにいる人たちが一斉に手を出すと『あはっ、転んじゃった』と、床に座り込んでいた人が、頭を掻きながら顔を上げた。
「うっわ!やっぱりゆきちゃんとばっつん、そっくり!」
"ゆきちゃん"と呼ばれたその人は、オレをジロジロ見ると『ホントだ!俺、自分とこんな似てる人、初めて見た!』と、オレを指差した。
え?似てる?キミとオレが?
……そう、かな?
っていうかこの人が、もう一人の、候補様?
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