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クールビューティーと双子の弟⑦
サクラは『そっか。参考になった』と言うと、オレを引っ張って席に戻った。
「萌えさすぅー!」
席に戻って開口一番、サクラは拳を握って、天を仰いだ。
「は?」
「何あれ?!」
「何って、何?」
「全然似てないだって!ばっつんとゆきちゃんがぜんっぜん似てないだって!それってアレだ!オレの青葉は唯一無二の存在だ!ってことだよ。オレの天使がこの世に二人も存在するわけないだろーが!って言ったんだよ」
言ってない。皇は全然そんなこと言ってない。
「がいくんってさ、ばっつんが本当に一卵性の双子だったとしても見分けられるんじゃない?同じ服着てどっちが青葉だー?とか、何度やっても絶対見分けられちゃうみたいな。双子萌え漫画、地でイケちゃう人なんじゃないの?萌えスペック、高っ!」
サクラの鼻の穴がさらに広がった。
「もーさー。絶対がいくんって、ばっつんのこと好きだよ」
「なっ……」
オレもたまーに……皇ってオレのこと好きなんじゃないの?って思うけど……。
でもオレだけを好きかって言ったら……そうじゃない。
サクラは能天気なことを言ってくれちゃってるけど、皇が、オレと塩紅くんが似てないって言ったのは、塩紅くんが皇の唯一無二の存在になったからって可能性だってあるんだよー!サクラー!
もう全部ぶっちゃけて、話を聞いてもらいたいくらいだよっ!
鎧鏡家のことを話すなんて、出来ないけど。
落ち込み始めたその時、廊下が一層ざわついた。
何?
「ガヤガヤ騒いでますけど、早い話が僕の好みを知りたいんですよね?教えてやりますよ」
廊下からそんな声が聞こえてきて、ガラッと教室のドアが開けられた。
入ってきたのは、イラついた顔をした超絶美形の天戸井くんだった。
え?何事?
教室に入って来た天戸井くんは、ツカツカと歩いて、皇の前で止まった。
「僕の好きな人は、この鎧鏡くんです。ですからいくらそうして騒いだところで、僕は貴様らの手には落ちません」
うっ……そぉ!
咄嗟にふっきーを見ると、ふっきーもこっちを見ていた。
お互い微妙な顔でしばらく見つめ合ったあと、目配せして視線を外した。
何か楽様って、色々すごい人みたいだ。
「鎧鏡くん、これからよろしくお願いします」
天戸井くんは皇に向かってお辞儀をすると『お騒がせしました。失礼します』と言って、教室を出て行った。
「……」
「……」
ぽかーんな空気感が漂っている間に予鈴が鳴って、廊下の人だかりはさーっと消えて行った。
「ちょっと……何あれ?」
サクラはまた小鼻を膨らませている。
「何だろうな?」
「のんきだなぁ!ばっつんは!白雪姫対オーロラ姫対天才眼鏡くんの抗争勃発ってことじゃんか!顔だけなら、オーロラ姫が有利かも」
サクラ、知らないの?ふっきー、メガネ外すとすごい顔整ってるんだから!
「でも安心して。僕はどんなに超絶美形が新規参入してこようが、がいばつ派だから。ばっつんって、どうも応援したくなるキャラなんだよね」
”がいばつ”っていうのは、”がいくんとばっつんカップル”の略なんだと、サクラがこの前教えてくれた。
応援してくれるのはありがたいけどさ。
サクラが皇の嫁を決めるなら、オレもこんな悩まないのになぁ。
✳✳✳✳✳✳✳
「すめくん!お昼ご飯、食べましょう」
お昼休みのチャイムが鳴るとすぐ、隣のクラスから天戸井くんがやって来た。
いつの間にか天戸井くんは、皇をすめくん呼びしてて、お昼ご飯も一緒に食べるようになっていた。
「じゃあ行こうか」
ふっきーがそう言って立ち上がると、天戸井くんは苦々しい顔をした。
「またキミも一緒に行くつもりですか?いい加減、遠慮してもらいたいんですけど」
「ん?」
「僕はすめくんと二人でお昼をいただきたいんです」
うっわー。何なの?あいつ!
「そう……すめがそれでいいならそうするけど」
そう言って、ふっきーは皇を睨むように見上げた。
珍しいっ!あのふっきーがイライラしてる!
「行くか」
皇は天戸井くんにそう声を掛けると、二人で教室を出て行った。
嘘だろ!何あれっ?!
その場に立ったまま動かないでいたふっきーに『一緒にお昼食べよう』と、声を掛けると、ふっきーはハッとした顔をして『うん』と、心なしか弱々しく返事をした。
「……」
何なんだよあれ!皇めー!
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