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求愛⑤

「ちょおっ!」 皇の肩を掴んで剥がすと『確かに美味いな』と、真面目な顔をした。 「お前のお皿にもまだ里芋乗ってるじゃん!」 「そなたの食うた芋が、殊更美味いかもしれぬではないか」 「んなわけあるか!」 もー!ホントこいつ、何なの?! あっ!さっきから何度もキスしちゃってるけど、ここ、防犯カメラとかあるんじゃないの?! キョロキョロ見回すと『どうした?』と、皇もオレの視線を追った。 「だって!こんなことして!どこかに防犯カメラが……」 「ない。この零号温室は、お館様が寄贈したものだ」 「へ?」 お館様と母様も、その昔この神猛に通っていて、昔から植物好きだったお館様が、いくつか温室を学校に寄贈したのだと、皇が話してくれた。 「この零号温室は、御台殿と逢引するために、お館様が建てたものだとおっしゃっていた。外からは見えぬ作りで、防犯カメラも付けてはいないと聞いておる」 「え?お館様が高校の時に逢い引き用に作った?高校の時から母様に決めてたってこと?」 そう聞くと皇は『詳しい事情はわからぬ』と、ふいっと顔を逸らして、お弁当を食べ始めた。 「ふーん」 母様、地下牢に入れられたり、色々あったみたいだし、不良だった過去は皇も知らないって言ってたから、オレも黙ってたほうがいいよね。 これ以上突っ込んで、つい母様のことを話してしまわないように、その話は流すことにした。 「あ!そうだ!修学旅行で皇が買ってくれたキッシュが美味しくて、それからハマってさ」 話題を変えようと、ほうれん草の胡麻和えを食べながらそう言うと、ちょっと考えた皇が『ああ』と、思い出したような顔をした。 「そなたはどこでも生きていけるな」 「え?」 「修学旅行にそなたがおらねば、皆パリで野たれ死にしておった」 うわっ……そんな風に思ってくれてたんだ?嬉しくて、鼻が膨らんじゃうじゃん! 「修学旅行で死ぬまで放っておかれるわけないだろ」 「死なずとも、そなたがおらねばただの苦行だった。良き思い出にはならなかったであろう」 「……そっか」 「ん?」 「……」 はあー駄目だ!そんな風に言われちゃうと……。 恥ずかしくて顔を伏せた。 オレがいたから修学旅行が良い思い出になったって、言ったよね?言ったよねー! めちゃくちゃ嬉しくて……どうしよう。 「どうした?」 皇がオレの頭を撫でた。 「……嬉しぃ」 家事が出来たって、鎧鏡の嫁には必要ないと思ってたけど、皇の役に立てたんだ!家事手伝わされてて、良かった! 「……赤い」 皇がオレの耳を撫でて、顔を寄せた。 柔らかい感触が当たって、耳にキスされたのだとわかる。 体が震えて耳を押さえると、皇に手を取られて、顔を覗き込まれた。 「……」 耳だけじゃなくて、絶対、顔も真っ赤だよ、オレ。 顔を逸らすと、皇にソファに押し倒された。 「なっ……に……」 「……」 驚いて開いていた口に、何も言わない皇の唇が、かぶりつくように合わさった。 「ふっ、んぅ……」 「雨花……」 首筋に降りて行ったキスが『始まり』を予感させて、下半身が熱くなる。 「ご、はん……」 そんなほんの少しの抵抗は、ただの照れ隠しで……。 「飯は、後だ」 皇のその言葉に、ドキドキしながら、目を閉じた。 強く降り出した雨の音が、漏れる声を掻き消していく。 「はっ、あっ……すめら、ぎ」 五時間目の予鈴が鳴る音が、雨音に混ざって遠くで聞こえた。 でももう、授業のことなんて……考えられない。 乳首を舌で転がしながら、皇の指は、オレのペニスを撫でるようにしごいていた。 「あ、あっ……」 皇に手を取られて、皇のペニスを握らされた。 皇はオレのペニスを握って『余を真似よ』と言うと、オレのペニスを強めに擦り上げた。 「んあっ!」 皇のペニスを同じように擦ると、皇の手に力が入って、擦り上げる速度が上がった。 「やっ、皇っ!や、あっ!」 同じように、擦る手を速めると、皇は息を乱して、キスをしてきた。 「んぅっ……あっ!……いっ、っ!」 出る! 「はっ、は、あっ、ふっ……っ!」 大きく息を吸い込んで、ほぼ同時に精液を飛ばした皇は、散々キスをしたあと『飯にするか』と、オレのパンツを床から拾った。 「……ん」 この"やっちゃった後の空気感"……恥ずっ! また顔が熱いよーと思いながらパンツを受け取ると、皇が『そなたが照れる様は扇情的だ』と、掴んだ手首にキスをした。 「照れてないっ!」 扇情的って……したくなるとか、そんな意味じゃなかった? またあんなことしてたら、六時間目まで出られなくなる! オレはビシッとパンツとズボンを履いて、グワーっとご飯を食べ始めた。 でも……オレが照れると、皇……あんなことがしたくなるのかと思うと、ずっとドキドキが続いて……全然食べた気がしなかった。

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