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愛しい気持ち⑨

皇はオレを見下ろしたまま、ふっと笑った。 「なっ……に、笑ってんだよ!」 人が勇気を振り絞って言ったのに! 皇は、オレのシャツのボタンを全て外して、ゆっくりと開いた。 「そうか。……待っておったか」 オレの胸の上で、鼻で笑った皇の息が、くすぐったい。 「っ……」 「そなたも……待っておったか」 つうっと確かめるように、肌の上に指を滑らせて、皇は『口を開けよ』と、耳元で囁いた。 命令されると、反抗したくなる。 でも……キス……したい。 言われるまま軽く開いたオレの唇を食べるみたいに、皇の唇が触れてくる。 皇の匂い……大好き、なんだ、オレ。 いつの間にか口の中に入ってきた皇の舌に、口の中を舐められると、どうしてこんな感覚になるんだろう?キュウっと下半身が締まって……胸が……ジンジンする。 「そなたは、白いな……」 そう言って皇は、オレの胸にキスをした。 恥ず、か、しいよ。 両手で顔を隠すと『見えぬほうが良いか?』と、皇が部屋の灯りを全て消した。 真っ暗になった部屋の中、皇の手と舌が、オレの肌の上を滑って、自分でわかるくらい、吐息が熱を持っていく。 「はっ……あ、す、めら、ぎ……」 オレの赤くなっていく顔も、ヒクつく下半身も、皇にはよく見えない、よね? いつもはほんの少しの灯りでも、近くの皇がよく見えて、恥ずかしさが先に立つ。 すぐ反応しちゃう自分を隠したくて、そっちに気を取られることが多い。 でも。 暗いと恥ずかしいって気持ちは、いつもより薄くって、皇の指と舌が、肌をなぞっていく快感に、ただ素直に、飲まれていける気がした。 「んぅっ……んっ、はぁ、あ……」 「雨花……」 皇が、ズボンの上からオレのペニスを、軽く握った。 「はっ、あ……」 腰の下のほうが、キュウキュウいってる。 皇に何度かズボンの上からしごかれて、ヒクヒクと小さく震えたペニスは、すぐに窮屈な下着の外に晒された。 皇の手が、オレのペニスの上を滑らかに何度か上下してはじめて、自分のペニスが、水音をたてるくらい、濡れていたのに気が付いた。 「は、あ……っん、んんっ、んぅっ」 「……猫のようだ」 皇はそう言って、オレの乳首を唇で包んだ。 「ふぅっ、んっあ……」 「雨花……」 どこにあるのか確かめるように、皇はオレの唇を指でなぞって、自分の唇を重ねた。 「ふっ、んっ、んんっ」 皇の指は、亀頭の割れ目を強めに撫でながら、ペニスを柔らかく揉んでいく。 「そなたが悦ぶ様を感じているだけで……満たされる」 「はぁっ……なっ……んっ、あ……」 何?それ?意味を聞こうと思っても……そんな余裕はすでになくて……。 ただ皇の指に、舌に……翻弄されて、息を忘れないようにすることで精一杯になっていた。 暗闇に目が慣れてきた頃にはもう、羞恥心よりも、ずっとこうしていたいって気持ちのほうが強くなってて。 ようやくオレの中に入ってきた皇が、眉根を寄せる顔を見ながら、オレとこうしていて……皇も、気持ち、いいのかなと思うと……幸せで……胸が一杯になった。 オレが悦ぶだけで満たされるって、皇が言ってたの……こういうこと、なのかな? 皇もオレと同じように……思ってくれてるって、意味かな? こんな風に今、皇も幸せなの?だとしたら……オレはもっと……幸せ、だよ? 「皇?」 散々突かれたあと、皇はオレを自分の上に乗せると、抱きしめたまま動かなくなった。 途切れ途切れだったオレの息が整っても、皇はオレを放そうとしない。 「ん?」 今まで、汗をかいている人にくっつきたいなんて、思ったことがなかったし、自分で汗をかいている時も、誰にもくっつかれたくなかったのに。 離れたくない。 肌と肌をくっつけているこの瞬間が……すごく……好き、ではあるんだけど。ずーっとこの体勢だと、気になるじゃん。自分の重み、とか。 「離してよ」 「ならぬ」 「重いだろ?」 皇はため息を吐くと『例えば』と言って、オレを抱きしめたまま横になった。 「は?」 「この体勢では、余のこちらの腕一本でそなたを支えることになる」 「はぁ」 皇は、またオレをお腹に乗せたまま仰向けになると『このほうが安心ではないか』と、得意気な顔をした。 えっと……意味わかんない。 もういいや。皇の気が済むまでは、何をどう言っても下ろして貰えそうにない。早く重くて仕方なくなるようにと、皇に全体重を思い切り乗せてやった。 「そなたは、余に守られるのが苦手とみえる」 「苦手っていうかさ。だってオレ、大事な人を守れる男になれって、育てられてきたし」 「そうか。……そなたに守られてみたいものだ」 鼻で笑った皇は、オレをぎゅうっと抱きしめた。

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