273 / 584
愛しい気持ち⑨
皇はオレを見下ろしたまま、ふっと笑った。
「なっ……に、笑ってんだよ!」
人が勇気を振り絞って言ったのに!
皇は、オレのシャツのボタンを全て外して、ゆっくりと開いた。
「そうか。……待っておったか」
オレの胸の上で、鼻で笑った皇の息が、くすぐったい。
「っ……」
「そなたも……待っておったか」
つうっと確かめるように、肌の上に指を滑らせて、皇は『口を開けよ』と、耳元で囁いた。
命令されると、反抗したくなる。
でも……キス……したい。
言われるまま軽く開いたオレの唇を食べるみたいに、皇の唇が触れてくる。
皇の匂い……大好き、なんだ、オレ。
いつの間にか口の中に入ってきた皇の舌に、口の中を舐められると、どうしてこんな感覚になるんだろう?キュウっと下半身が締まって……胸が……ジンジンする。
「そなたは、白いな……」
そう言って皇は、オレの胸にキスをした。
恥ず、か、しいよ。
両手で顔を隠すと『見えぬほうが良いか?』と、皇が部屋の灯りを全て消した。
真っ暗になった部屋の中、皇の手と舌が、オレの肌の上を滑って、自分でわかるくらい、吐息が熱を持っていく。
「はっ……あ、す、めら、ぎ……」
オレの赤くなっていく顔も、ヒクつく下半身も、皇にはよく見えない、よね?
いつもはほんの少しの灯りでも、近くの皇がよく見えて、恥ずかしさが先に立つ。
すぐ反応しちゃう自分を隠したくて、そっちに気を取られることが多い。
でも。
暗いと恥ずかしいって気持ちは、いつもより薄くって、皇の指と舌が、肌をなぞっていく快感に、ただ素直に、飲まれていける気がした。
「んぅっ……んっ、はぁ、あ……」
「雨花……」
皇が、ズボンの上からオレのペニスを、軽く握った。
「はっ、あ……」
腰の下のほうが、キュウキュウいってる。
皇に何度かズボンの上からしごかれて、ヒクヒクと小さく震えたペニスは、すぐに窮屈な下着の外に晒された。
皇の手が、オレのペニスの上を滑らかに何度か上下してはじめて、自分のペニスが、水音をたてるくらい、濡れていたのに気が付いた。
「は、あ……っん、んんっ、んぅっ」
「……猫のようだ」
皇はそう言って、オレの乳首を唇で包んだ。
「ふぅっ、んっあ……」
「雨花……」
どこにあるのか確かめるように、皇はオレの唇を指でなぞって、自分の唇を重ねた。
「ふっ、んっ、んんっ」
皇の指は、亀頭の割れ目を強めに撫でながら、ペニスを柔らかく揉んでいく。
「そなたが悦ぶ様を感じているだけで……満たされる」
「はぁっ……なっ……んっ、あ……」
何?それ?意味を聞こうと思っても……そんな余裕はすでになくて……。
ただ皇の指に、舌に……翻弄されて、息を忘れないようにすることで精一杯になっていた。
暗闇に目が慣れてきた頃にはもう、羞恥心よりも、ずっとこうしていたいって気持ちのほうが強くなってて。
ようやくオレの中に入ってきた皇が、眉根を寄せる顔を見ながら、オレとこうしていて……皇も、気持ち、いいのかなと思うと……幸せで……胸が一杯になった。
オレが悦ぶだけで満たされるって、皇が言ってたの……こういうこと、なのかな?
皇もオレと同じように……思ってくれてるって、意味かな?
こんな風に今、皇も幸せなの?だとしたら……オレはもっと……幸せ、だよ?
「皇?」
散々突かれたあと、皇はオレを自分の上に乗せると、抱きしめたまま動かなくなった。
途切れ途切れだったオレの息が整っても、皇はオレを放そうとしない。
「ん?」
今まで、汗をかいている人にくっつきたいなんて、思ったことがなかったし、自分で汗をかいている時も、誰にもくっつかれたくなかったのに。
離れたくない。
肌と肌をくっつけているこの瞬間が……すごく……好き、ではあるんだけど。ずーっとこの体勢だと、気になるじゃん。自分の重み、とか。
「離してよ」
「ならぬ」
「重いだろ?」
皇はため息を吐くと『例えば』と言って、オレを抱きしめたまま横になった。
「は?」
「この体勢では、余のこちらの腕一本でそなたを支えることになる」
「はぁ」
皇は、またオレをお腹に乗せたまま仰向けになると『このほうが安心ではないか』と、得意気な顔をした。
えっと……意味わかんない。
もういいや。皇の気が済むまでは、何をどう言っても下ろして貰えそうにない。早く重くて仕方なくなるようにと、皇に全体重を思い切り乗せてやった。
「そなたは、余に守られるのが苦手とみえる」
「苦手っていうかさ。だってオレ、大事な人を守れる男になれって、育てられてきたし」
「そうか。……そなたに守られてみたいものだ」
鼻で笑った皇は、オレをぎゅうっと抱きしめた。
ともだちにシェアしよう!