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夏休み~受験生だっつうの~③

7月15日 くもり 今日で合宿四日目です。 昨日、ふっきーが出場するなんちゃらオリンピックが始まった。 四日間、パソコンでデータの何か……作業?をして、優劣をつける大会らしい。 ふっきー頑張ってるかな? オレのほうも順調に、高遠先生が出してくれる課題をクリアしている。 塩紅くんが一緒に勉強することになったって聞いた時は、正直あんまりいい感情はわかなかったけど、毎日一緒に勉強しているうちに、やっぱり一緒に勉強してもらって良かったなって、思うようになっていた。 オレが気付かないでいたことを、塩紅くんが先生に質問してくれたりするし。 逆にオレの質問を、塩紅くんが真剣に聞いているのを見ると、オレも塩紅くんの勉強の足しになれたのかなって思えて嬉しいし。 毎日、朝起きて、ご飯を食べて、運動不足解消のために森を散歩して、朝の九時から、夕方の六時まで授業を受けて、夕飯を食べて、お風呂に入ってから、復習と予習をして寝るのが、ここでの日課だ。 そろそろシロと……皇が……恋しい。 夜、一人になると、急にそんな気持ちが湧いてくる。 こんな近くでの合宿なのに、ホームシックなのかな。 でも受験生なんだから!この時期くらい、我慢、我慢! シロの面倒は母様が見てくれてるから、心配いらないし。 皇とは……渡りの予定表通りだと、納涼祭の翌日の21日に、会える。それまであと……六日。 納涼祭でも皇には会えるだろうし。話が出来るかどうかはわからないけど……。見られるだけでも、きっとすごく、喜んじゃいそう。 去年と同じく、納涼祭ではふっきーが舞手を務めると聞いている。 なんちゃらオリンピックから帰ってくるのはいつなんだろう? ふっきーなら、舞の練習とかいらないんだろう。去年と同じだし。 去年、こっそりふっきーの舞を覗いていたことが、すっごく昔のことみたいに思える。 あの日、やつみさんが牢に入れられちゃったりして、大変だったっけ。 あの日のことを思い出して、吹き出した。 あの時は本当に大変だったけど、今ではオレにとってもうちの使用人さんたちにとっても、あの日の出来事は、笑い話の鉄板ネタだ。 「ふぃー……」 今日の復習と明日の予習を終えて、寝ようかなって体を伸ばすと、窓の外で何かをカリカリとひっかくような小さな音が聞こえてきた。 「えっ?!」 この音……まさかシロ?! 急いでカーテンを開けると、窓の外に、シロの大きな顔と、皇の顔が、浮かんで見えた。 「えっ?!」 嘘っ?! 乱暴に窓を開けると、ふわっとシロのいい香りと、皇の独特な香りが鼻に抜けていった。 「……何で?」 だって今日は……えっと……誓様のところに渡る……日、だよね。 あ!誓様のところに渡る日、だからか! 「長くは待たせぬと言うたであろう?」 終業式に会ってから、丸三日会ってないんだよ?オレにとって三日は……長いよ、馬鹿。 今すぐ抱きつきたいって思ったけど、オレのところに皇が来てることが見つかったら、もっと会えなくなっちゃうかもしれない! 嬉しいよりも、心配な気持ちがぶわっと湧いた。 「駄目だよ!見つかる前に早く帰って」 「余は今、誓のもとにおる」 「は?」 「誰もがそう思うておる。誓もそれを証明致す」 ……いいの?オレ、皇と……会ってても、いいの? 「梓の一位にも話は通した」 「えっ?」 「抜かりない」 「……」 「そこをどけ。早う入れろ」 皇はシロを撫でると、自分だけがひらりと部屋に入って来た。 「シロ」 シロを呼んで頭を撫でると、シロは窓のすぐ下で伏せをして、目をつぶった。 「ありがとね」 皇を、連れて来てくれて……。 「シロばかり気にしおって」 皇は、眉を寄せた。 「だって……」 何か……緊張して、上手く話せない。 「勉強は順調か?」 「うん。塩紅くんが一緒に勉強することになったの、聞いた?」 「ああ」 皇はベッドに座り込むと、オレの手を引いて、隣に座るように促した。 「一緒に勉強してるとさ、オレが気づかなかったことを塩紅くんが質問してくれたりして、すごいいい勉強になるんだ」 「そうか」 「同じとこ目指してるもの同士、一緒に頑張ろうって思って」 「同じ大学を目指しておるのか」 「え?うん。東都大医学部」 「そうか」 「え?言ったよね?オレ、東都目指してるって」 「そなたの目標は聞いておる。晴れも東都志望だとは知らぬでおった」 「……そうなんだ?小さいうちからの知り合いだと、わざわざそういう話とか、必要ない感じなの?」 じゃあ、いつもはどんな話をしてるんだろう?皇と塩紅くんって。 「小さいうちからの知り合い?」 「え?うん」 「誰がだ?」 「は?」 何?この噛み合わない会話。 「塩紅くんと皇が、だよ。小さいうちから知ってるんでしょ?」 「あ?またそなたは勘違いをしておる」 「は?」 え?勘違い?オレが何を勘違いしてるって?

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