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夏休み~息抜きは必要だよ、うん~②

「腕前を見せろって……どうやって?」 若干腹立たしげにそう聞くと、皇は片眉を上げて『そなた、相当な腕前らしいな』と、挑戦的な顔をした。 「まあね」 確かにテニスには自信がある。 「ほう?自信があるなら、余と勝負をせぬか?」 「勝負?……別にいいけど」 勝負とかわざわざ言うってことは、皇もテニス上手いのかな? 「そなたが勝てば、どのような望みも叶えてやろう」 「えっ!?ホントに?!」 「ああ。……たまには息抜きも必要だ」 そう言って皇がオレの頭を撫でた。 皇……朝からオレの機嫌が悪いって、気にしてくれてたっけ。 オレが勉強ばっかりで疲れて、機嫌が悪いとでも思ったのかもしれない。 そっか!オレが得意なテニスで勝負をしてオレに勝たせて、好きな物をプレゼントして機嫌を直そうとしてくれてるのかも! 「……ありがと」 「ん?」 「ううん。わかった!勝負する。えっと……ラケットは?」 「一位、ラケットはあるか?」 「はい。ございます。お着替えを終えるまでには用意致します」 一位さんはにっこり笑って、和室を出て行った。 「そなたが勝てば、そなたの望みを何でも叶えるゆえ、余が勝ったら、そなた、余の言いなりになれ」 「……はい?」 ちょっと待て。何だ、それ? お前、オレの機嫌を直すために、テニスの勝負をしろ、とか、言ってくれてる……ん、だよね? 「余が勝ったら、何の文句も言わず余の言いなりになれ。良いな?」 「ちょっと待て!お前、テニス強いの?」 オレの機嫌を直すために、わざと負けてくれる気じゃないの? 「ん?試合らしい試合は、未だしたことがない」 何だよ、もー!やっぱり、オレの機嫌を直すためのテニス勝負なんじゃん。 ああそっか。一応勝負なんだから、オレが勝った時のことばっかり約束したら、それらしくないもんね。 「わかった。お前が勝ったらお前の言いなりね?」 っていうか、そんなことを賭けたところで、オレはいっつもお前の言いなりみたいなもんなんだから、万が一負けたとしても、何の痛手もないしね。 「何の文句も言わず、言いなりになるのだぞ?」 「うん。わかった。お前もオレの望み、何でも聞いてくれるんだよね?」 「ああ。そなたが勝てば何でも聞いてやる」 「絶対だよ?」 「そなたこそ、忘れるでないぞ」 「男に二言はない!」 皇は優しげに微笑んで、もう一度オレの頭をポンポン撫でた。 「……」 恥ずっ! 勝ったら皇に何をしてもらおう? 欲しい物は特にないけど……して欲しいことは……たくさんある。 あれ?でも……そんなこと、言うの恥ずかしいじゃん! え……どうしよう。 何でも望み通りとか言われても……。ギューって……とか……うわっ……そんなこと、言えない!チューっとか……絶対無理!うわっ!どうしよう……。何してもらおう!恥ずかしくないお願いって、何?! 今日、やっぱり泊まって……とか……うわああああ!間接的に、何かイヤラシイことして欲しいって言ってるみたいじゃん!えっ……ホント、どうしよ……。 ちょっと待った!オレの願いって……恥ずかしいことばっかりなの? ……。 ……。 ……恥ずかしいこと、ばっかりだよ! ええええっ?! 当たり障りのない物を貰う……とか? えー……せっかくなのに、何かそれじゃもったいないし。 何かないかな?えー……どうしよう……。 あ!一緒に散歩、とか!ここのところ、シロの世話は母様に任せっきりだから、今日の夜の散歩、一緒に行ってもらう……とか。そしたら、そこまでは一緒にいられるし……。 試合をしている間に、他にいい案が浮かばなかったら、それをお願いしようかな。 そんなことを考えながら、とおみさんに出して貰ったテニスウェアに着替えて、皇と側仕えさん何人かと一緒に、曲輪の南側にあるテニスコートに向かった。 「そなた、今日は良いが、万が一他でテニスをするようなことがある場合は、そのような恰好をするでない」 「は?」 そのような恰好って……とおみさんが出してくれたのは、普通の半袖と短パンのテニスウエアだけど……。 「そのように足を出しおって」 「は?学校の体操着と変わらないじゃん」 「学校の体操着は膝まであろう!全く違う!」 「足、出てるからってこと?……見苦しいなら、目ぇつぶってりゃいいじゃん」 「見苦しい?……そなたは誠、人目を全く気にせぬで困る」 「人目って……男が足出して、何が人目だよ」 「話にならぬ」 「こっちのセリフだよ!……あ!」 今、皇に対するお願い事が閃いた。 プール特訓の水着といい、今回のテニスウェアといい……今後一切、オレの服装に対する口出し禁止を約束させてやろう! 「そなた……今おかしなことを思いついたであろう?」 「はっ?!」 ホントこいつ、変なところで鋭いんだから。

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