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夏休み~息抜きは必要だよ、うん~⑦

皇は、二人分の精液を受け止めた自分とオレの手を拭きながら『駄目だ』と呟いた。 「え?」 「ここでは狭すぎて、そなたを好きに出来ぬ。早う参るゆえ、隣に座れ」 もう十分、好きにしてると思うけど。 言われるまま助手席に戻った。 ……体が、熱い。 合宿所に着いて、高遠先生に、戻りましたという挨拶もそこそこに、皇と一緒に部屋に入った。 ベッドに押し倒されると、まださっきの余韻が残る体を、また命令されるまま皇に晒した。 「上に乗れ」 恥ずかしいよ。 「いつまで……言いなりなんだよ」 「……これが最後だ」 そう言って皇が笑うから……オレは、車よりも若干広い程度のシングルベッドで、言われるまま皇の上に乗って……皇のペニスを、受け入れた。 「雨花」 二人でお風呂から出て服を着ると、皇はオレを呼んで抱きしめた。 「ん?」 「そなた、課題をするのであったな。余は本丸に戻る」 「あ……うん」 もう変な焦りはないし……このまま泊まってくれたらいいのに……とか思ったけど。 結局課題はしないといけない。 「暗いのに、一人で危なくない?」 引き留めようとしたわけじゃないけど、この真っ暗な中、一人で運転して帰るなんて……心配になる。 「あの車で事故を起こすことはないらしい」 「へぇ」 そっか。あの車、皇専用の特注品だっけ。事故は起こさない……か。一門が作った皇の車ならそれも納得だ。 皇を見送るために、皇と一緒に部屋を出ると、キッチンに下りてきた先生とばったり出くわしてしまった。 「高遠先生、先程は挨拶もそこそこに、申し訳ありませんでした」 皇がそう言って頭を下げると、高遠先生は『ははっ』と笑って『お館様にそっくりだ』と、皇の肩をポンッと叩いた。 「そっくり……ですか?」 「お館様も今の若と同じように、よく車でここまでお陽殿を送っていらした」 母様もここで勉強してたって言ってたもんね。へー、お館様も車の運転が出来るんだ。 「か……あ、御台様が候補の時ってことですよね?」 母様が勉強してた時っていうんだから、オレと同じように受験勉強をしている時のことだろう。 「ああ。雨花殿と同じく、東都大を目指して受験勉強なさっていらっしゃるところに、お館様がよく覗きにいらした。誰もが奥方様はお陽殿で決まりだろうと思う程に、溺愛なさっていらっしゃった」 「へー……」 確かに今でもラブラブだもんね。 でも、候補の時は誰を奥方様に決めるかわからせちゃいけないんじゃないの?母様の時は違ってたのかな? 「そのせいで、お陽殿は幾度となく命を狙われたと聞いた」 「えっ?!誰に?ですか?」 「さぁなぁ。結局誰に狙われていたのかわからなかったらしいが、外部からの攻撃には相当の備えをしているはずの候補が狙われた、ということは……内部に犯人がいるんじゃないかと噂が出てな」 「内部って……」 鎧鏡一門内部って、こと? 「先生」 皇が先生の話を遮った。 「ああ、話しが過ぎた。若、お気をつけてお帰りくだされ」 「はい。ありがとうございます。失礼します」 皇と二人で外に出た。 皇は先生の話に何も言わなかったけど……母様の話、本当なの? 鎧鏡一門の誰かが候補を狙うなんて……そんなのあり得ないよね? 「皇」 「ん?」 「鎧鏡一門の人が、母様を狙ってたなんて、ただの噂だよね?」 家臣さんたちは、候補が多くいればいるだけ、安心なんじゃないの? 奥方様が決まるまで、候補は一人も欠けたらいけないんじゃないの? 「鎧鏡一門において、御台所の力は大きい。地位を欲する者の中には、後ろ盾を得るため、贔屓の候補を御台所とすべく、手段を選ばぬ者もおったらしい」 「鎧鏡一門の中に、母様を狙った人が本当にいたってこと?」 「……詳しくはわからぬが、御台殿が狙われた話は聞いておる。先生がおっしゃったような理由で、家臣の他、候補の仕業も疑われたと聞いた」 「えっ?!」 同じ奥方候補に、狙われた?嘘……。 「案ずるな。御台殿はご健在であろう?」 「そう、だけど……」 「そなたは……余が守る」 自分のことじゃなくて……。 頭の隅に、ふっきーを睨む天戸井の顔が浮かんでた。 ふっきーと天戸井……大丈夫、だよね? 皇はポンッとオレの頭を撫でて、運転席に乗り込んだ。 「気を付けて帰ってよ?」 「ああ。……雨花」 エンジンをかけた皇が、窓を開けてオレを呼んだ。 「ん?」 「顔を貸せ」 それって……キス?って、こと? 「……さっきで、言いなりは終わりって言ったじゃん」 「ああ、そうであった」 笑いながらハンドルを握った皇に、窓から顔を突っ込んで、キスをした。 「気を付けて帰ってよ!」 「……ああ」 目を細めてほほ笑んだ皇は、ゆっくり車を発進させた。

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