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夏休み~積み重なる原因~②

「そなた、何も感じぬのか?」 信じられないというような顔をしてオレを見た皇は、さらにオレのワキをさわさわと触った。 くすぐってるつもり……なんだろうけど、何か……そうじゃない。くすぐったいツボは完全に外れている。 皇がこんなことするなんて、めちゃくちゃ意外! そっちのほうに気が取られて、ぽかーんとしていると『むず痒くはないのか?そうか、腹か』と、皇は、今度はオレの脇腹をさわさわとさわり始めた。けどやっぱり、くすぐったくない。 「お前……くすぐるの下手くそだね」 「あ?」 「こうするんだよ!」 皇のワキをくすぐると、皇がビクリと体を震わせた。 「あははっ!くすぐったかった?」 「……」 悔しがってる! 皇の顔を見て吹き出すと、皇はもう一度オレをベッドに押し倒した。 「余が下手なのではない。そなたがおかしいのだ。手が駄目なら、こうしてくれる!」 皇は、オレの半袖シャツを肩までめくって、腕を掴んで持ち上げた。 何?!と思っていると、ワキに唇を付けて、軽く吸い付いた。 「ひゃっ……ちょっ……」 それは!くすぐるのとは、違うじゃん! っていうか!ワキに口付けるとか!やだ! 逃げようとしても、覆いかぶさっている皇に、体を押さえつけられていて逃げられない。 「そうか。このほうがそなたには効くらしい」 「やだ!ひゃっ……うっ……それ、ふっ……ずるいよっ!」 「何とでも申せ。余の真の目的は、そなたを笑わせることではない。そなたの口を割らせることだ」 そうだった! 「や、だ!」 皇が何度もワキに唇を付けて、軽く吸い付いていく。 こんな……ちょっ……やばい!主に下半身がやばい! 「やだ!」 必死で身をよじって逃げようとしても、全然逃げられない。 「では申せ。何をにやついておった?」 「……」 「まだ足りぬか」 またワキを吸われた。 「ひゃあっ!」 オレ、ワキ弱かったっけ?ちょっと……もー! でもだって、何を考えてにやついてたかって……モナコに行く前、お前が最後に渡るのがオレのところで喜んでたとか……言えないでしょ!絶対、無理! 「きょっ!今日の夕飯!……美味しかったなって思って……」 「……でたらめを申すな!」 「何でわかるんだよっ!」 「そなたが嘘を申す時の癖がある」 「嘘っ!?」 何?そんなの知らない!誰にもそんなこと、言われたことない。 「真だ。早う、口を割れ」 皇は、さらにワキに唇を付けた。 「ひゃうっ……あ……恥ずかしいからヤダ!言いたくない!」 そう言うと、皇は動きを止めてオレを見下ろした。 「……余のことか?」 「……」 「余がそなたをにやつかせたのか?」 何、嬉しそうな顔してんだよ! 恥ずかしくて両手で顔を隠すと、その手の甲に、ふわりと唇の当たる感触がした。 「雨花」 「……」 「……雨花」 オレの耳にキスした皇の視線と、顔を覆った手の隙間から覗いたオレの視線がぶつかった。 「そなたの照れる様は、扇情的だと言うたであろう。余を煽っておるのか」 「ちがっ……」 「もう十分だ」 「え?」 「もう十分……煽られた」 それから……この流れだし……その……止める理由も何もないので……シテ、しまいました。 オレが煽ったとか……オレが誘ったみたいに言うなよ!恥ずっ! 翌朝、勉強部屋に行こうと支度をしていると、塩紅くんがやって来た。 塩紅くんが部屋に呼びに来るのは、もうすでに日課みたいになっている。 以前塩紅くんに、皇の匂いがするって言われてから、皇がここに来たあとの消臭には、かなり気を使っていた。 皇がこっそり来てることがバレたら、本当に相当、まずい事態になりかねない。 塩紅くんも桐の一位さんも、何も言ってこないから、バレてはいないだろうけど……。 これからもバレないように、気をつけなくちゃ。 皇に会うのに、こんなコソコソしなきゃいけないなんて……。 ふっきーだけじゃなくて、塩紅くんに対しても罪悪感がわくけど、逆に正々堂々、皇に何度も渡ってもらえてる塩紅くんに対して、嫉妬する気持ちも……正直……ある。 「あれ?ばっつん、ここ蚊に刺されてるよ?」 塩紅くんは、支度をしているオレの後ろから、オレの腕をつんっと押した。 「え?」 蚊に刺されてる?痒くないけど……いつの間に?でもここ森の中だから、たまにやぶ蚊が入って来るからなぁ。 塩紅くんが指で押した腕の内側を確かめようと袖をめくって、壁にかかった鏡に腕を上げて映してみると、ワキから二の腕の内側にかけて、いくつも赤い斑点があった。 「っ?!」 夕べ、皇に吸われた痕だ! 驚いてシャツの袖をもとに戻したけど……。 塩紅くんに……見られた? 鏡越しに見えた塩紅くんの顔は、別段、変わりがないように見える。 「俺、先に行くから」 塩紅くんはそれだけ言って、部屋を出て行った。 「……」 見られて、ない……よね?

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