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楽しい2学期はーじまーるよー①

9月1日 曇り 今日は、神猛学院高等部、二学期の始業式です。 新生徒会役員の選挙があるわ、学祭の準備が入ってくるわで、これからの打ち合わせをするから、今日早く登校するようにと、夕べ遅く田頭から連絡があった。 連絡を貰った時、誕生パーティーのやり直しを終えて、皇がオレの隣で寝ていたため、どうせ皇が本丸に帰る時に起きるだろうと、目覚ましをセットもしないで寝た。 思った通り、ゴソゴソし始めた皇の気配で目が覚めたのは、朝の5時過ぎだった。 「ふぁ……オレも、支度……」 「あ?寝ぼけておるのか?まだ早い」 オレのまぶたにキスをして、皇はふっと笑って立ち上がった。 「んーーーっ!……今日、早く学校に来いって、田頭が」 伸びをしながらそう言うと、皇は不機嫌そうな顔で、オレを見下ろした。 「田頭と何をする?」 寝間着の着崩れを直しながら、視線をオレに向ける皇は、相変わらず……カッコイイ。 朝から不機嫌そうだけど。 昨日は、ものすごく上機嫌だったくせに……。 うっ……。 夕べのことを思い出して、顔が熱くなっていく。いかんっ!朝から盛ってる場合じゃない! オレも寝間着を直しながら、布団から出た。 「生徒会の仕事で呼ばれたんだよ。もうすぐ新しい生徒会役員を決める選挙があったり、学祭があったりで忙しくなるから、打ち合わせするんだって」 「そうか。……もうすぐ生徒会の任期も終わりだな」 「うん。とりあえずは学祭まで」 寝間着をキチッと着直した皇は、やっぱりすっごくカッコイイ。 布団の上で正座しながら、ぼーっと皇を見上げるオレに、皇は『ん?』と言いながら、腰をかがめて上からふっとキスをした。 ……恥ずっ! 「あ……皇?」 「ん?」 「昨日……ありがと」 誕生パーティーのやり直し、すっごく楽しかったし……すっごく嬉しかったよ。 「礼はそなたの側仕えに申せ。全く、そなたのところの側仕えは、愉快なことを考えつくものだ」 「あははっ。ホントだね」 昨日の誕生パーティーでは、側仕えさんたちが色々な出し物をしてくれたり、ゲーム大会をしてくれたり……最後には皇が花火大会をしてくれたりして……本当にすっごい楽しい一日だった。 「祝いが遅くなったな」 ちょっと残念そうな感じで呟いた皇は、オレの前にスッと正座した。 「あ!遅くないよ。誕生日、皇が一番に祝ってくれたんだから」 「あ?」 「手紙」 書院のひきだしにしまっておいた、皇からの手紙を持って来て見せた。 「ん?」 「誕生日になった瞬間に読んだんだ。だから、皇が一番にお祝いしてくれたんだよ」 驚いた顔をした皇は『はぁ……』と、ため息を吐いた。 「え?何?どうしたの?」 「今日が休みであれば……」 「は?」 「いや、休みでなくて良かったか。休みであれば、そなたの体力も考えず、抱き倒すところだ」 「はぁっ?!」 皇はふっと笑って、スッと立ち上がった。 「今年のモナコ土産は、そなたにしかくれてやれなかったな」 「は?オレ、何か貰ったっけ?」 お土産?覚えがないけど……。 「そなた、自分がモナコ土産に何を望んだか忘れたか?」 は?オレ、モナコ土産に何を……。 「……どぅはっ!」 思い出した! 皇がモナコに出発する前日、約束した"お土産”が、目の前でニヤリと笑っている。 「土産には満足したか?」 「うっ……」 何こいつ!恥ずっ!恥ずっ!バカ! 「ん?」 「……」 満足したかって……そんな質問に、何て返事をしたらいいんだよっ! 「足りぬか?」 皇がさらに意地悪く笑って、オレの頬をスルリと撫でた。 ちょっ……朝から何をっ! いかん!このままでは、朝からそんなことに! 「まっ!まんぞ……う……あ……した、からっ!早く戻れ!」 皇の背中をぐいぐい押すと『そうか。満足か』と、笑いながら振り向いた皇に、手首を取られた。 「……何?」 「雨花」 「何?」 「……あとでな」 皇はそう言って、オレをふわりと抱きしめた。 うっ。何か……ドキドキする。夕べ散々……もっとすごいこと、してたのに……。 「ん……」 ポンッとオレの頭を撫でて、ニッと笑った皇は、軽くキスをして和室を出て行った。 「うっ……」 ……カッコイイ。 バカ。 カッコイイよっ!ばかぁっ! ぐるぐると布団の上で悶絶していると、扉の外からいちいさんに声を掛けられた。 「雨花様、おはようございます。今しがた、雨花様がお早く登校するそうだと、若様に伺ったのですが……もうお仕度なさいますか?」 「あ!はいっ!しますっ!」 うおおおお!悶絶してる場合じゃない!支度!支度!

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