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楽しい2学期はーじまーるよー⑦

「二人、知り合い?」 梅ちゃんと藍田が絡んでるの、見たことあったっけ? 「うん。藍田家の跡取り候補がここに入学してきたっていうのは前から知ってたけど、話したのはこの前の体育祭の選抜リレーの時……だよね?藍田、すっごい速いから、陸上部にスカウトしたんだよ。そしたら、バイトしてるからって断られてさ。その時、藍田、ここには嫁探しに来たって言ってて……どう?いい子、見つかった?」 「うん。見つかったよ。はい、雨花!」 藍田はオレの肩に手を置いた。 「……は?」 梅ちゃんはピンと来ていないらしい。 藍田がオレにちょっかいかけてること、梅ちゃん、知らなかったんだ? 「雨花を見つけたんだよ。今は雨花が僕を選んでくれるのを待ってるとこ」 もともと大きな丸い目をさらに丸くした梅ちゃんは『すっごい面白いね、お前』と言って、爆笑した。 冗談だと思ってるのかな? 冗談ならいいんだけど……。 「笑いを取りに行ったつもりはないんだけど」 藍田はオレをぐっと引き寄せた。 こいつはー!調子に乗るな! 後ろにいる藍田を『お前、引継ぎしなくていいらしいな』と、睨みつけると、藍田は『うわっ!ごめんなさい!』と、急いでオレの肩から手を離した。 「お前、本気で雨花ちゃん狙ってんの?ウチと揉める気?」 「揉める?鎧鏡と?どうして?雨花自身が僕を選ぶなら何の問題もないじゃん。逆に、僕と雨花が結婚したら、藍田と鎧鏡の絆はさらに強くなるんだよ?」 梅ちゃんがオレを怖い顔で見るから、オレは細かく横に首を振った。 オレが藍田を選ぶわけないじゃん! 梅ちゃんは『だよね』と言って、ふっと表情を緩めた。 「雨花ちゃんはお前を選ばないってさ。お前がこれ以上雨花ちゃんにちょっかいかけるなら、ボクも黙ってないよ?」 梅ちゃんは、オレの前にスッと立った。 オレより小さいけど、こういう時の梅ちゃんの威圧感は、半端ない。 なんてったって梅ちゃんの体術の先生は、元傭兵だもんね! 「何で梅が?」 「なんで?ウチの若様が奥方様を決定するその日まで、候補は一人として欠けてはならないからだよ。お前が雨花ちゃんにおかしな真似をするなら、ボクは鎧鏡一門として、お前を全力で潰す」 藍田は『全力で潰す?すーちゃんもおんなじこと言ってたっけ。梅は詠より物騒な候補だね』と、鼻で笑った。 「一人も欠けてはならないって、すでに一人欠けたようだけど?」 藍田はそう言って、ふんっと鼻で笑った。 塩紅くんが転校したこと、藍田も知ってるんだ? 「藍田家の三男様には関係ないだろ?」 「まあね。僕だって雨花以外の誰がどうなろうが、何の興味もないよ。でも……梅って、そんな可愛い外見なのに強そうだね。興味出ちゃうなぁ。ちょっと潰してみて欲しいかも。……出来るもんならね」 こちらに近付いてきた藍田のネクタイを、梅ちゃんがグッと引っ張った。 「いつでもぐっちゃぐちゃにしてやるよ」 藍田のネクタイを掴んでいる梅ちゃんの手首を、藍田が掴んだ。 そのまましばらく二人は睨み合って……。 「ちょっ……ここ、廊下!みんな見てるから!」 オレがワタワタすると、二人は二カッと笑い合って、手を離した。   「あ、雨花。早くしないと昼休み終わるよ?」 「あ!そうだった!」 藍田に促されて、その場をあとにした。 梅ちゃんと藍田があれだけ言い合ってたのに……何て言うか、この二人は全然心配じゃなかった。 ふっきーと天戸井の二人については、妙に心配になるのに……。 ふっきーへの嫌がらせの犯人が誰かはハッキリしないけど、下手に疑うのはいけないと思いつつ、どうしても天戸井の顔が浮かんでしまう。 そういえば、ふっきーが新嘗祭でも舞うことになったなんて天戸井が知ったら、またふっきーに対抗心を燃やすんじゃないの? 「……」 ふっきーのことだから、大丈夫だとは思うけど。 万が一、ふっきーに嫌がらせをしているのが本当に天戸井だとしても、ふっきーには何か策がある気がする。 だって、今まで見たことないくらい、ふっきー、楽しそうだったし。 「雨花?何かあった?」 ふっきーのことを考えながら歩いていると、だいぶ先まで進んでいた藍田が、心配そうな顔で戻って来た。 「あ……何でもない。っていうか、お前ね、周りの目もあるんだし、先輩って呼べ」 「えー……雨花が僕を衣織って呼ぶならいいよ?」 「は?」 何だ?その交換条件。まぁ別に……呼び方くらい、何でもいいけど。 「あ!やっぱり、雨花が僕を衣織とか……何か、恥ずかしい」 「はぁ?」 藍田はしきりに照れている。 一学期までの藍田なら、その仕草も可愛かったかもしれないけど。ムキムキになったお前がやってもさ……。 「……」 「え?何その顔?」 「何でもない。昼休み終わるぞ。早く来い」 「早く来いって、それ僕のセリフだよ。って……雨花に"早く来い"なんて……うわっ!」 藍田はまた照れている。 「……」 ……放置。 「ちょっ!雨花!待ってよ!」

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