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みたらし団子も好きになったようです①

9月4日 晴れ 今日は、オレがランチ当番の日です。 「すめくん、おはようございます」 朝、教室に着いてすぐ、天戸井が皇のところにやって来た。 二学期に入って、天戸井が皇のもとにやって来るペースがさらに上がった気がする。 休み時間は、A組かB組のどっちかが移動教室でもない限り、必ず皇のところに来てるんじゃないかなぁ? あの皇と何の話があるっていうんだろう?内容までは聞こえないけど、何やら話しているのはわかる。ちゃんと話題があるらしい。 オレは皇といる時、何の話をしてるっけ?あまりにとりとめのない話をしてるから、どんな内容かよく覚えちゃいないけど……。 天戸井、頭いいし、実は話も面白いのかもしれない。 なんちゃらオリンピックが終わったから、ふっきーが皇の隣にいるのが当たり前状態に戻るのかと思ってたのに、今現在も、そうなっていないらしい。 『らしい』……なんて、他人事みたいなのは、オレはオレで用事があって、皇の休み時間の様子をよく見ていられないからだ。 「せんぱーい」 教室のドアからひょっこりと藍田が顔を出して、オレを呼んだ。 「……」 二学期が始まってから、藍田に会計業務の引継ぎをするため、休み時間は大体、教室にいない。 皇とふっきーと天戸井がどんなことになっているのか、人づて……っていうか、サクラづてに聞くしか、様子がわからない状態になっていた。 オレは筆記用具を持って、呼びに来た藍田と一緒に会計室に向かった。 「雨花、今日のお昼も会計室に来ればいい?」 藍田は、二人の時は『雨花』と呼ぶことが多い。 「今日、昼は用事があるから、これが終わったらあとは放課後にな」 「……すーちゃんとお昼?」 「え?……あ、うん」 嘘を吐く必要もないので、正直に頷いた。 「……そっか」 そう言って、机に突っ伏した藍田は『でも、明日は一緒に食べられるよね?』と、ほんの少し頭を上げて、目の前に座っているオレを見上げた。 伏せをしながら視線だけでこちらを伺う犬みたいだ。 「お昼を一緒に食べるのが目的じゃないだろ。しっかり引継ぎしろよ」 「……わかってるよ」 わかりやすく不貞腐れた藍田は、大きくため息を吐きながら、また机に突っ伏してしまった。 「藍田」 「……」 呼んでも藍田は、顔を上げない。 「藍田」 「はぁ……ごめん。何かさ……雨花はここにいるのに……ちっとも距離が縮まらなくて……泣きたくなるよ」 「……」 どうしてこいつは……こう、直球なんだろう。そんなこと言われたって……。 「ああああ……ごめん。かっこ悪ぃ!今のなし!あとは放課後にね!」 藍田はガバッと荷物を抱えると、まだ何の引継ぎもしていないっていうのに、急いで会計室を出て行ってしまった。 「……」 放課後一気に教えればいっか。 あんな空気感の中、オレも冷静に引継ぎとか出来そうにないし。   あからさまに好意を向けられるのは、初めてってわけじゃない。 だけど……向けられた好意に対して、こんなに居心地が悪くなるのは……初めてかもしれない。 今までも、はっきり告白されたことがないわけじゃない。 でも、どこかで相手にもオレにも、断っても大丈夫そうな『余裕』があって……でも……藍田には……それがない気がする。 「……」 違うか。余裕がないのは、オレのほうか。 チラチラと塩紅くんの顔が浮かぶ。 オレが藍田にハッキリNOと告げても、藍田は塩紅くんみたいなこと……しない、よね? 塩紅くんが自分を傷付けた本当の理由は、お父さんの期待に応えたいって思いからかもしれないけど……きっかけは皇に自分を見て欲しいってこと、だったんだろうし……。 だからって、藍田の気持ちに応えることは出来ないけど。 藍田のことは、好きか嫌いかで言ったら、もちろん『好き』だ。 だけど、藍田がオレを思ってくれてる『好き』が、オレが皇を思う『好き』と同じなら……オレが藍田に対して思ってる『好き』は、藍田がオレを思ってくれている『好き』とは、種類も重さも、全然違う。 「はぁ……」 何か……オレ、偉そう。 藍田といると、自分がものすごく傲慢で冷たい人間な気がしてくる。 オレだって、応えてもらえない辛さは、わかってるつもりなのに。 『好き』だと思う気持ちが、自分を『好き』だと思ってくれる人にだけ働けばいいのに……。 だったらこんなに、モヤモヤしなくていいのに……。 皇に冷たく扱われたらオレ、どれだけ落ち込むだろう。 そう思うと……あんな風に距離をつめようとしてくる藍田に、どう接したらいいのかわからなくなる。 変に期待させられることが辛いのも、わかってるのに……。

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