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嫉妬④

10月13日 晴れ 今日は、学祭準備で午後から登校予定の祝日です。 受験組は受験勉強に集中して……とか、言ってもらってはいたんだけど……。 生徒会役員の仕事って、各々全く違うから、お互いの仕事を完全にカバーし合うなんて無理ってことに、最近気が付いた。 やることはわかっていても、細かいところまでは、やっていた人にしかわからないんだよね、結局。会計は特にね。 ってことで、学祭準備も何だかんだ参加してると思う。 休みの日に生徒会の用事で登校する時は、午前中で用事を終わらせて、昼前には屋敷に帰ることが多いんだけど、昨日の放課後サクラから『明日は絶対昼過ぎに来て!昼前は絶対来たら駄目!』と、ものすごい剣幕で言われたから、今日は午後登校にした。 ……怪しい。何で昼前は駄目なんだろう? あまりの剣幕に、何の反論も出来なかったけど、そんなムキになって昼過ぎに来いとか言われたら、昼前に来いってことのフリかと思うじゃん。 そんなことを考えながら、朝ご飯を食べるためにダイニングに行くと、いちいさんに『今日は何時にお出掛けですか?』と、質問された。 「うーん……そうですね」 どうしよう。ちょっとでも早く行けば、早く終わらせられるかな?昼過ぎって、何時のことだよ?12時過ぎてたらもういいのかなぁ? そう思って、こちらを11時半くらいに出ると、いちいさんに返事をした。 「雨花様、もうすぐ生徒会任期満了ですね。あ!一位様!雨花様の生徒会任期満了祝いをしませんか?」 一緒にダイニングテーブルについたあげはが、人差指を立てながら、そんなことを言い始めた。 「え?任期満了祝いって……」 「いいですね。ぜひやりましょう」 いちいさんが、にっこり笑った。 「え……でも、この先行事続きだし、年末も近いし……みなさん、お忙しいんじゃ……」 「そんなに行事ありましたっけ?」 「ほら、もうすぐ楽様の誕生会だし、そのあとすぐに新嘗祭だし」 「どちらもボクたちにはあんまり関係ない行事ですよ。ボクたちは全然忙しくないですよね?一位様」 「そうですね。しかし、雨花様は何かとお忙しいでしょうから、雨花様が落ち着いたら……ということに致しましょうか?」 「はい!またみんなで出し物とかゲームとかしたいです!」 「ふふっ。雨花様の誕生会、楽しかったですからね」 「はい!本当にボク、雨花様の小姓で良かったです。他のところの誕生会、あんなことしないですよね?きっと」 「あ……でも天戸……あ、楽様の誕生会は、すごいんじゃないかな?」 「え?」 あげははポカンと口を開けた。 あげはが天戸井の実家のことを一度も騒いでないのって、やっぱり天戸井の実家のことを知らないからなのかな? 「楽様の誕生会、有名人がいっぱい来るみたいだよ?」 「ああ……そうみたいですね。杉の丸の使用人が騒いでましたよ。自分たちも出席したかったーって」 「え?あげは、楽様の実家のこと知ってた?」 「知ってますよ。楽様が候補に決まった時、杉の丸に配属が決まった使用人たちが話してるの聞きました」 「へぇ」 あげは、知ってたんだ? 「え?何でですか?」 「あ……あげはから楽様の実家の話とか、聞いたことなかったから、知らないのかと思って。晴れ様がしらつき病院の外科部長の息子だって話は、あげはが教えてくれたんだよね?確か」 「そうでしたっけ?でも、楽様のご実家については話題にするまでも……」 そこでいちいさんが『あげは』と、咎めるようにあげはを呼んだ。 「候補様の生まれを詮索するような話をしてはなりませんよ」 「……はーい」 あげはは口を尖らせながらも素直に返事をしたあと、オレに向かって『あとで』と、口だけを動かしてニッコリ笑った。 朝ご飯を食べ終わったあと、一緒にオレの部屋に入って来たあげはが、ソファに座りながら『楽様のご実家が気になるんですか?』と、鼻の穴を膨らませた。 「気になるっていうか……だって楽様、あの白映の社長令息だよ?この前知って、ビックリしたんだ」 「え?驚くようなことですか?」 「え?驚かないの?」 「直臣第七位の柴牧家様のご子息様である雨花様のほうが、全然驚きですよ!晴れ様がしらつき病院外科部長のご子息様っていうのも、ちょっと凄いって思いましたけど……楽様のご実家はそこまでじゃ……」 あげはの話では、どうやら鎧鏡家の使用人さんたちは、一般的な社会的地位よりも、鎧鏡一門の中での地位のほうを重要視するらしい。 天戸井のお父さんが三代目になる白映は、しらつきグループの中では全然新しい会社で、家臣団でもない天戸井の実家は、どれだけ大きな会社だろうが、鎧鏡一門の中では”その他大勢”なのだと、あげはは心なしか声を潜めてそう言った。

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