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嫉妬⑦

10月18日 晴れ 今日は、天戸井の誕生会です。 しらつきホテルの別館まで一緒に来てくれたいちいさんは、ロビーで待っていた杉の丸の一位さんに『雨花様をどうぞよろしくお願い致します』と頭を下げると、早々に帰ってしまった。 杉の丸の一位さんに案内された部屋に入ると、そこにはすでにふっきー、梅ちゃん、誓様がソファに座っていた。 「本日は、私、杉の一位が、奥方様候補の皆様方のお世話を仰せつかっております。ご用の際は何なりとお申し付けくださいませ」 杉の丸の一位さんは、オレたちに深々と頭を下げて、オレに何が飲みたいか聞いたあと『開会まで、今しばらくこちらでお待ちくださいませ』と頭を下げて、部屋から出て行った。 他のお屋敷の一位さんには、今まであまり良い印象がない。 ふっきーのところの松の一位さんは、カッコイイなぁって思ったけど、うちの一位さんと怪しい関係なのかな?と思うと、ちょっと複雑な気持ちになるし。 梅ちゃんのとこの一位さんは、釣り大会で何となく和解したような感じにはなったけど、その前からの印象があまりに強烈過ぎて、未だに苦手意識があるし。 誓様は、どこに住んでいてどんな一位さんが付いているのかわからないけど、塩紅くんが住んでいた桐の丸の一位さんも強烈だったもんなぁ。 でも今見たところでは、杉の一位さんは、嫌な感じが全くない! あんな天戸井の一位さんだから、他の一位さん並みに強烈な人かと思っていたら、全然違っていた。 むしろ、腰が低くて感じがいい人だ。なんか、うちのいちいさんに通じる安心感がある。 杉の一位さんは、すぐにオレが頼んだ日本茶を持って来てくれて『もうすぐご案内出来そうですが、どうぞごゆっくりお召し上がりください』と、ニッコリしてくれた。 うわぁ。やっぱり感じいいなぁ。 オレがお茶を飲み終わるとすぐに、杉の一位さんが、誕生会の会場まで案内してくれた。 歩きながら杉の一位さんは、もう11月も半ばだけど、今日の最高気温は18度ってことで、今日のパーティー会場は、別館自慢の庭園だと教えてくれた。 庭園にはすでに相当な人数のゲストがいて、そちらこちらで楽しそうに話をしていた。 テレビで見る顔があちらこちらにいる。 うわぁ……と、思っていると、後ろから『雨花』と、声を掛けられた。 「えっ?!……何で?」 何でここに衣織がいるわけ? 驚くオレに衣織は、藍田家のグループ会社の中にはテレビ局もあって、天戸井のうちとは何かとやり取りがあるらしくて……と、聞いてもいないのにそんな説明をしてきた。 毎年、天戸井の誕生会には、衣織のお父さんが一人で参加していたらしいけど、今年は衣織が天戸井と同じ学校に通っていたり、衣織のお兄さんたちもこっちに出て来ていることもあって、衣織とお兄さんたち二人も、天戸井の誕生会に出ることになったのだそうだ。 衣織の一番上のお兄さんって、皇の親友……だよね?どんな人なんだろう? 「衣織、お兄さんは?」 「え?うちの?」 「うん」 「え?何で?」 「え?別に……。オレと同い年って聞いたから」 皇の親友だから見てみたい……とか、本当の理由は言いづらい。 「ああ、静生(しずき)のほうね?さっき、すーちゃんのとこに行ってくるって言ってたから、すーちゃんと一緒かな?」 衣織はそう言いながら、遠くの方に視線をうつした。 いくつか張られているタープテントの下に、誰かと話している皇の姿を見つけた。 一緒にいる人も、皇と同じくらい背が高い。 「あ、やっぱりすーちゃんと一緒だ」 そう言う衣織の言葉で、皇と一緒にいる背の高い人が衣織の上のお兄さんで、皇の親友の”静生さん”だとわかった。 よくよく見れば、皇のすぐ隣にはお館様と母様もいる。 何か……あそこだけ空気が違うんですけど。 この会場には、テレビに出ているような人たちがたくさんいるっていうのに、あそこの集団は、そんな人たちの集まりにも全然負けず劣らず華やかだ。 「あんな端にいても目立つねー、あの人たち」 衣織は皇たちの方を見ながら、ケラケラ笑った。 そのあと衣織のもとにかまちょさんが来て『ちょっと僕、挨拶しないといけない人に挨拶だけしてくる。またあとでね』と言って、人ごみに消えて行った。 衣織が消えてすぐ、天戸井の誕生会が始まった。 挨拶やら乾杯やらが終わり、自由に歓談してくださいってことになったんだけど、そっちこっちテレビに出ているような人ばっかりの中で、自由に歓談なんて、緊張しちゃって出来ないよ。 そんな風に思っていると、オレの隣でふっきーが、知らないおじさんに声を掛けられた。 おじさんは、ふっきーが金賞を取ったなんちゃらオリンピックの話を興奮気味に話し始めた。 そういえば、なんちゃらオリンピックって、権威ある大会なんだった。うわ!ふっきーって、結構有名人?!

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