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学祭騒動再び~一日目・動揺~③

会計の仕事が忙しいだろうって理由で、オレはクラスの手伝いをほとんど免除してもらっていたから、うちのクラスの出し物を詳しく把握していない。 第二体育館で『ルーブ・ゴールドバーグ・マシンと、ファッションショーの融合』とかいうショー?を、するっていうのは聞いてるけど……。 3年A組の企画書が生徒会に上がってきた時、ルーブ・ゴールドバーグ・マシンって、何?と、サクラに聞いたら『普通にやれば簡単に出来ることを、手の込んだいくつかのからくりを連鎖させて実行すること……らしいよ?』という説明を受けた。 どうやら、小さい頃教育テレビでみたピタゴラ装置のことらしい。 そのなんちゃらマシンを連鎖させながら、ファッションショーをするっていうんだけど……。 我がクラスながら、非凡な奴らが考えることは訳がわからない。 そのなんちゃらマシン作成の指揮をとっているのがふっきーで、ファッションショーの指揮をとっているのがサクラだってことも、サクラに教えてもらっていた。 サクラ、生徒会の仕事だって忙しかっただろうに……。 そんなことを思いながら第二体育館に着くと、何があったのかすぐにわかった。 ふっきーが指揮をとっていたなんちゃらマシンだっただろうものが、明らかにめちゃくちゃになっている。 オレは手伝いをしていないし、最初がどんなものだったか知らないけど、そんなオレが見ても、壊れてるってことが一目瞭然の有り様だった。 ……何があったんだろう? 「明らかに人為的なものだろ?これ。うちの発表、厳しいかも」 「あ……サクラ」 オレたちよりも先にここに着いていたらしいサクラが、オレの後ろからそう声を掛けてきた。 人為的なものって……わざと壊されたってこと?まさか! 「しかも、ショーに出る予定の大久保が熱出して休みだって連絡があってさ。インフル疑惑があるらしくって、先生が来るなって止めたらしいんだよね」 「え?!大久保、インフルエンザなの?」 「まだはっきりしてないけど、今、世の中の小学校は、すでにインフルエンザの流行が来てるらしくてさ。大久保、実家通いチームで、なおかつ小学生の妹がいるんだって。ま、インフルエンザじゃなかろうが、熱出してる時点で来られないけどね」 「そうなんだ」 「あれの修理のために、今、ふっきーが色々走り回ってるんだけど、材料調達が間に合うかわからないし……僕たちだって、もうすぐ学校説明会のほうに出席しないといけないじゃん?こっちの手伝いはしてられないってなると、人手も足りないし」 今年の学祭一日目は、来年、再来年の入学希望者を対象とした学校説明会が行われることになっていた。 説明会に参加した子たちは、説明会参加後、学祭を見て回っていいことになっている。 オレたち旧生徒会役員は、その説明会に参加して、生徒会活動についての説明をするように学校から依頼されていた。 時計を見ると、説明会会場である第一体育館に向かわないともう間に合わない時間になっていた。 「もう第一に向かわないと間に合わないよね?」 いつの間にか話に加わっていた田頭に向かってそう言うと、田頭も時計をふと見て『うわ!まじか!ホントだ!』と、言って『原稿、生徒会室だよ!急いで取ってくるから先行ってて!』と、バタバタ第二体育館を出て行った。 「先輩たち、いいよ。こっちは何とかしておくから、行って来て」 衣織がそう言って親指を立てた。 「よーし!ここは頼んだ、衣織。多分、すぐにるいとかこっち来ると思うからさ。ふっきーが戻って来たら、みんなと相談してもらって、中止になるようなら、校内放送入れておいてくれる?」 そう言ったサクラに『了解でーす』と、返事をした衣織は『ほら早く』と、追い出すようにオレたちの背中を押した。 「大丈夫かな?衣織」 第二体育館を出たところで、サクラにそう声を掛けると、サクラはふっと笑った。   「ばっつんが思ってるより、全然あいつ使えるよ?」 「……そっか」 すぐにるいも来るって言うし、衣織はただの留守番みたいなもんだしな。 そう思ってオレは、それ以上心配するのをやめて、第一体育館に向かった。 予定通り11時半に学校説明会を終えて、急いで第二体育館に戻ると、たくさんの生徒がごったがえす中、なんちゃらマシンは、ほとんど綺麗に直っていた。 えええ?! 「どうしたの?これ?」 「あ!おかえりなさい。何とかこっちの修理は間に合いそうだよ?」 衣織も修理を手伝っていたらしい。 その手を止めて、こっちに向かってニッコリ笑った。 「え……どっから材料と人員集めて来たの?ふっきー」 サクラが近くにいたふっきーにそう声を掛けると、ふっきーは『僕じゃないよ。藍田くんがどっからか材料と人を集めて来てくれたんだ』と、ニッコリ笑った。 ふっきーに『ありがとう』と、礼を言われた衣織は『へへ』と、照れくさそうに笑った。

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