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学祭騒動再び~一日目・動揺~⑧
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ショーは成功だったと思う。いや、むしろ大成功でしょ?
朝、あのめちゃくちゃになっていたマシンを見た時には、今日うちのクラスは参加出来ないかもしれないと思ったけど……。
それがこうして無事に参加出来たのは……衣織のおかげ、かな?
衣織といえば!早く衣織と合流して、残りのクラスの審査を出来る限りやっちゃわないと!
急いでスーツから生徒会用式服に着替えて控室から出ると、ドアのすぐ前に衣織がヌッと立っていた。
「ぅお!」
ビックリしたぁ!
「雨花……めっちゃくちゃカッコ良かった!あんなに踊れる人だったの?!」
衣織は興奮気味にそう言って、オレの手を取ってぶんぶん振った。
「え……いや、ちょっと習ってて……って、もうそんなんいいから、早く審査しに行くぞ。お前どっか審査してきた?」
恥ずかしくなって話題を変えた。
かっこいいとか……直球で言われると何か……カユいし。
その時、ふっきーが走ってやってきて『本当にありがとう!藍田くん!』と、衣織に頭を下げた。
「僕が好きでやったんだからいいって。詠は雨花の大事な友達だから、僕にとっても大事な友達じゃん」
何をサラっと言ってんだ!こいつは!
「だからって、雨花ちゃんは渡さないよ?」
「下心はないよ。ただ雨花に笑ってて欲しいから動いただけ……って、あ、それが下心か?あははっ」
「雨花ちゃんへの下心でも何でも、結果僕は助かった。本当にありがとう」
「そっか。うん。でもそのおかげで、雨花のかっこいいダンスが見られたから、貸し借りなしね。何なら借りが出来た感じ?……それより詠、さっきも言ったけど、気を付けなよ?田頭先輩とかサクラ先輩が動くとは思うけど……。何ならすーちゃんに話したほうがいいんじゃない?」
「……うん。考えとく。ありがとう」
「うん。じゃ、行こっか?センパイ」
またセンパイ呼びに戻った衣織が、ニッコリ笑って歩き出した。
オレは先を歩く衣織の背中に向かって、小さく声を掛けた。
「どういうことだよ?」
「ん?」
「ふっきー、気を付けろって……」
皇に何を話したほうがいいの?
「ああ」
衣織は、あのマシンは誰かに故意に壊されたものだろうと話し始めた。
そうでもなければ、あんなにめちゃくちゃになるわけがないって。
誰がどういう理由でそんなことをしたのかはわからないけど、どう考えたって、あのめちゃくちゃな壊され方からして、何かしらの悪意があると思うのが普通でしょ?って……。
あのなんちゃらマシンを指揮してたのはふっきーで、ふっきーは今までも嫌がらせを受けている。もしかしたらあのマシンが壊されたのって、それが原因ってことも考えられるでしょ?って……。
確かに誰かのしわざなら、悪意があるとしか思えない壊れ方だった。あれが、ふっきーへの嫌がらせの可能性がある?そんな……。
「ふっきーへの嫌がらせで、あんなことする?」
「修理してる時、先輩のクラスの人たちが言ってた」
「え?」
「朝、第ニ体育館のほうで楽を見た人がいるって……」
「ラク?」
「すーちゃんの嫁候補の楽だよ。天戸井の息子」
「えっ?!」
天戸井?
「B組の奴が第ニのほうに来る必要ないのにいたのはおかしいって。あいつの仕業じゃないのかって盛り上がってたよ。詠と楽、前から揉めてたんだって?」
「ああ……」
確かに二人は揉めてたっていうか……言い合ってはいたけど。
「詠に負けたのが悔しくて、楽がやったんじゃないかって」
「確かに揉めたりしてたけど……天戸井、あんなことするかな」
テストで負けて悔しいからって、うちのクラスの出し物をあんなにぐちゃぐちゃにする?普通に考えたら、そんな理由だけであんなひどいことが出来るとは思えない。
みんなの前で面と向かってふっきーに文句を言える天戸井が、裏でコソコソうちのクラスの出し物を壊したりするかな?
裏でコソコソするのは、本人に直接文句が言えないからなんじゃないの?
その点天戸井は、言い方とかは腹立つけど、ある意味正々堂々と文句を言えるんだから、裏でコソコソする必要ないと思う。
それに、何となく天戸井は、違うと思うんだ。そんな卑怯なこと、しない気がする。気がするって、だけだけど。
「誰がやったかは多分、田頭先輩たちが解明してくれるよ。僕も楽がやったのかと思ってたけど、楽はやってないって雨花がいうなら、僕は雨花を信じる」
「……あっそ」
「あ!キュンとした?」
「するか」
「ひどいよー!」
「うるさい。行くぞ!」
「どうしたらキュンとしてくれるんだよー!もー!」
「……」
衣織とこんな話をしているのは……ホント、楽しい。楽しいし、ラクだ。衣織はオレより先に色々と気を回してくれて、オレをたててくれる。
好かれてるってわかってるからか、何か……一緒にいて居心地がいいし。
隣の衣織をふと見上げると、まだブツブツ言いながら、口を尖らせていた。
ふっと鼻で笑って視線を下げた瞬間、急に頭の中がクラリと揺れた。
「……」
う、わ……この感覚……何か、やばい。
え……何だろう?急に、頭が、クラクラする。
「え?センパイ?どうかした?」
「あ、いや……大丈夫。行くぞ」
衣織にそう返事をした時には、本当に大丈夫になっていた。
ちょっとした立ちくらみみたいなもんだったのかな?
そうだ!オレ、夕べほとんど寝てないんじゃん。昼も過ぎてきて、一気に寝不足の疲れが出て来たのかもしれない。
そんな風に呑気に考えていたら、クラスを回っている間に、どんどん具合が悪くなってきた。
……どうしよう。
でも会計は、学祭が終わってからが本来の仕事の始まりだ。
去年もそうだったけど、今日の売り上げの処理をしないといけない。去年は確か、夜の10時過ぎまでかかったんじゃなかったっけ?
オレ……大丈夫か?
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