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学祭騒動再び~ニ日目・決別~②
「ふっきー!」
「あ!雨花ちゃん、おはよ」
「おはよ。……準備、大丈夫?」
「うん。今日はほら、無事だからね」
ふっきーは、なんちゃらマシンを見てふっと鼻で笑った。
「昨日のこと……皇に話した?」
「ううん。言ってない。今さ、昨日のことで田頭とかサクラが動いてくれてるみたいだから。……嫌がらせなんて、僕一人で何とか出来る……なんて泳がせてたせいで、みんなに迷惑かけちゃった」
ふっきーが大きくため息を吐いた。
「ふっきーが原因かわからないじゃん!」
「いや……完全に僕でしょ?みんなを巻き添えにするなんて、考えてなかったんだ。嫌がらせなんか一人でどうにか出来ると思ってたし、そう出来れば能力を認めてもらえる材料になると思ってて……」
「え?」
「あ……ううん。うちの生徒会の情報収集能力、すごいみたいだから、とりあえず田頭とサクラにお任せしようと思ってる。それでどうにもならないようなら……すめに話すよ。まぁ、今はすめもそれどころじゃないだろうけどね」
「あ……駒様、まだ……体調悪いみたいだもんね」
「うん。今日もすめはこっちに来ないだろうね。雨花ちゃんは今日もショーに出るの?」
「あ!どうだろう?大久保、結局インフルだったの?」
「どうかな?ショーに参加するチームはまだ登校して来てないんだよね。大久保が休みだったら、また雨花ちゃんが呼ばれると思うけど」
「そっか。……ねぇ、ふっきー」
「ん?」
「昨日のアレ、さ。……天戸井の名前が出てるって……」
「ああ……うん。近くで見たって話ね。それだけで疑うのはどうかと思うとは言ったんだけど……みんな勝手に盛り上がっちゃっててさ」
「そっか」
A組とB組は、前から何やかやと張り合ってきてるし……。
何日もかけて作り上げてきたものを壊されて、それがB組の奴の仕業かもしれないなんてことになったら、そりゃあ勝手に盛り上がっていくのも、わからなくはないけど……。
本当に天戸井がやったのかな?天戸井の、ふっきーに対する態度はそりゃあムカつくけど……やっぱりオレは、昨日のあれが、天戸井の仕業って説にはピンとこない。
そこまで天戸井のことを知ってるわけじゃないけど……。ふっきーはどう思ってるのか聞いてみたかったけど、サクラの声で、今日の学祭の打ち合わせを始めるから、関係者は集合してって放送が入り、オレは第二体育館をあとにした。
生徒会室棟のエレベーター前に立っていると、衣織が走ってやって来た。
「体調、どう?」
「あ……メッセージの返信しないで悪い。もう大丈夫」
「本当?あんまり元気そうに見えないけど」
「大丈夫だよ。もう熱は下がったし。昨日、ごめんな」
衣織の手が、オレのおでこに伸びてきた。『ホントだ。下がったね』と笑ったあと、真っ赤になった衣織と一緒に、おかしな空気感のまま、生徒会室に向かった。
実行委員全員で、軽く今日の流れを確認したあと、早々に各自持ち場に向かった。
生徒会役員は、隣の部屋に移動するようにサクラに促された。隣室のドアを開けると、そこはすでに衣裳部屋になっていた。去年もこんなんだったっけ。
「……」
去年の学祭二日目は、本多先輩のこととか、珠姫ちゃんのこととか……すごく心配なことばっかり起こって……。でも、学祭の終わりを告げる花火が打ち上げられた時には、皇に、キスされてて……全部、大丈夫なことになっていた。
あの日から、もう一年。どんどん時間は流れてる。
皇のことを知りたいって思ってた。何でも知りたいって。知らないほうがいいことがあるなんて、去年のオレは思ってもなかったよね。
皇と駒様のことは、ずっと知らずにいられることじゃなかっただろうし、いつかは知る日が来たんだろうけど……。
「ふぅ……」
「やっぱりまだ体調悪いんじゃないの?」
ついため息をついてしまったのを、隣の衣織に聞かれてしまった。
「あ……全然大丈夫。何か、お腹きつくってさ。今朝、張り切って朝ご飯食べ過ぎたんだ」
「雨花ってさ、嘘つく時いつもより早口でたくさん話すって、知ってた?」
……知らなかった。
「今日休むとか、気が引けるのはわかるから止めないけど……でも無理はしないでよ?つらくなったら、すぐ言うこと!」
「……ああ」
衣織は、何も言わなくても……不調に気付いてくれる。
そのあと、女装大会で何を着るか、サクラに勝手に決められた。
オレは去年同様、和装担当だ。
スカートじゃなくて良かったぁ……と、隣で神猛女子部の制服を持たされている衣織を見ながら心底安心した。
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