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学祭騒動再び~ニ日目・決別~⑩
「がいくん、今まで本当にありがとう。オレたちの代の生徒会が円滑に動けたのは、がいくんからの寄付金のおかげだよ」
サクラが開けたドアから、着物姿の皇が入って来ると、田頭が深々と頭を下げた。
っつか……今すぐ、ものすっごいツッコんでやりたい!
こいつぅぅぅぅっ!
何が、無理のない程度に礼をして参れだよーっ!
おかしいと思ったんだ!学校に泊まるかもしれないなんて、絶対ダメって言うと思ったのに、しっかり礼をして参れ……なんてさ!
そうだ!夏の合宿の時と全く同じパターンじゃん!皇がすんなり泊まりを許可するとか、絶対何か裏があるんだって!すんなり了承された時に気付くべきだった!
何が”そなたは礼を重んじる。後悔しないようにしっかり礼をして参れ”だよ!
礼をする相手、お前じゃん!
「今年の寄付金、歴代一位だって。でしょ?ばっつん」
「……ん」
確かにサクラが言った通りだ。
オレたちが生徒会役員になってから入金された鎧鏡家からの生徒会への寄付金は、とにかく莫大な金額だった。
「本当にありがとうございました、がいくん」
サクラとかにちゃんは頭を下げながら『ほら、ばっつんも!』と、オレにも皇に頭を下げるように促した。
「あ……」
『ありがとう』と、頭を下げようとすると『礼はいらない』と、皇はオレのおでこを手で押さえた。
「でっ!」
「この生徒会に、それだけの価値があったということだ」
どれだけカッコイイことを言ったって、オレを騙してたことは許さないんだからっ!
皇がさっき機嫌が良かったのって、オレがこうやって驚くのがわかってたからなんじゃないの?くっそー!皇め!
だけど……。
皇が楽しそうに向かって行った”誰にも譲れない用事”が、この謝恩会だったってことは……ちょっと……まぁ……いや、すごい……嬉しい……けど。
だって……あんなに楽しそうに向かって行く”用事”に、ちょっと……ヤキモチ、焼いてた、から。
それが……この謝恩会だったとか……嬉しいに決まってんじゃん!もー!余計ムカつく!皇のバカ!
「この生徒会にっていうか……ねぇ?」
サクラはかにちゃんと顔を見合わせたあと、オレを見てニヤニヤしている。
「なっ……何っ?!」
「べっつにー。さて!がいくん、打ち合わせ通り何も食べないで来た?」
「ああ」
打ち合わせ通り?打ち合わせなんてしてたんだ?教室とかで、サクラと皇が話してるところなんて見た事ない。いつの間に……。
「あっ!!」
この前の祝日!サクラに学校に来るなら、絶対お昼過ぎにしろって言われた日だ!祝日に皇が学校に来てるなんておかしいと思ったんだよ!温室に来たとか何とか言ってたから、それを信じてたけど、あれ、サクラと今日の打ち合わせに来てたのか?!
あの日にはもう、今日の謝恩会のことを知ってたんだ!なんだよ!もー!
っていうか、そういえばあの日から、皇と二人きりになることがなかったんだっけ。
皇を見上げると『ん?』と、顔を覗かれた。
「なっ!何でもない!」
「こらー!ばっつん!がいくんはボクらの大事なゲストなんだよ!今日はツン禁止!デレオンリーで!」
「はぁ?!」
デレオンリーってなんだよ?デレオンリーって!デレデレなんて……そんなの……恥ずかしくて出来るかっ!
そのあと、次々に運ばれて来る料理を食べながら、今までの生徒会活動はどうだったとか、これからどうしたらいいかとか、皇を交えてひとしきり話し合った。
料理を食べ終わって、デザートとコーヒーが運ばれて来ると、サクラは『そうだ!がいくんにプレゼント!』と、言って、部屋の奥に大型スクリーンを垂らした。
皇にプレゼント?サクラに『何?』と聞くと『ばっつんも見た事ないと思うよ?』と、ニッコリ笑った。
オレも見たことない?……新作映画とか?
そう思っていると、スクリーンに映像が現れる前に、壁に取り付けられているらしいスピーカーから、どこかで聞いた音楽が流れて来た。
「……」
嫌な予感がするー!
「ホンット失敗したんだよねー。最初、音しか録れてなくってさ。でもすぐ映像もくるから」
黒一面だったスクリーンに、急にドンッ!と、オレの顔のアップが映った。
「どあっ!」
これ……昨日の……ショーだ。クラスの。なんちゃらマシーンの。なんちゃらマシーンとなんとかの!なんとかとの融合の!
オレも見た事ないって……そりゃ見たことないだろうよ!自分で出てたんだから!何撮ってんだよ!サクラ!しかも、何でこんなの皇に見せるんだよ!ぎゃあああ!恥ずっ!
スクリーンには、オレの顔のアップから少しずつズームアウトされ、ステージ全体の様子が映し出された。
「……」
オレ……めちゃくちゃ楽しそうに踊ってるじゃん!恥ずっ!
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