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急転直下⑥

11月5日 くもり 今日は、学祭の後片付け日です。 寝不足のぼんやりした頭で、今日学校に行くことを決めた。 受験組の生徒は、今日学校に行く必要はないんだけど……。 こうして眠れないほど悩んでいるくらいなら、悩みの中心人物であるふっきーに会おうと思った。 学祭でクラスの出し物を仕切っていたふっきーが、今日の片付けに参加するっていうのは、学祭の時に聞いて知っていた。今日学校に行けば、ふっきーがいる。 本当は皇に会えたら、それが一番いいのかもしれないけど……。 皇は今日、学校には来ないだろう。学校以外で皇に会うための理由が見つからない。それに……皇に聞いたところで、答えてはもらえない気がする。 だからとりあえず、ふっきーに会いに行こうと思った。 ふっきーに会っても、知りたいことは何もわからないかもしれないけど……。 それでも、うちでウジウジ悩んでいるより、そっちのほうがまだ、自分を納得させられる気がした。 どうしてふっきーは、皇の携帯電話の番号を知っていたんだろう?ふっきーへの嫌がらせがどうなったかも気になる。一番気になっているのは、大老様が言っていたことだけど……。 皇がふっきーを嫁に決めたかどうかなんて、ふっきーに聞くことじゃないのはわかってる。もし本当にそうだとしても、ふっきー自身だって、知らないかもしれない。それでも……屋敷でじっとしていられなかった。 「いってきます」 「いってらっしゃいませ、雨花様」 学校に向かう車は、本丸の脇を通って曲輪を出て行く。 今、皇は、本丸にいるんだろうか? 昨日の朝まで一緒にいたのに、そのあと色んな事があったからか、長く会っていない気がする。 皇と会ったあとは、いつもどこか不安になるんだ。”次”は、来るんだろうかって。 学校で会えなくなった今、オレは……週に一度か二度、皇が渡って来てくれるのをただ待つしかなくなっちゃったんだ。 「はぁ……」 オレは皇が会いに来てくれるのを待っていることしか出来ないのに、ふっきーは、電話一本で皇を呼んだ。 候補には電話番号を教えたらいけないって言ってたくせに、どうしてふっきーには教えてるの? ふっきーが……皇の特別、だから? 「……」 皇のそばにいることを、ギリギリまで諦めないって決めたけど、オレの知らないところですでに、皇の答えが出ているのだとしたら? 「……」 両頬をパンパン叩いて、弱気になる自分に喝を入れた。 昇降口に着いてすぐ、後ろからサクラに声を掛けられた。 「ばっつん!どうしたの?」 「あ……おはよ」 ふっきーが気になって学校に来たとか言うと、詮索されそうな気がして挨拶だけすると『あ、そっか!忘れ物だ』と、サクラはオレを指差した。 「は?」 「え?違うの?制服、生徒会室に置きっぱなしでしょ?」 「あっ!」 すっかり忘れてた!そうだ。生徒会室に制服を置いたままだった。学校に来る十分な理由が、オレにはあったんじゃん。 「え?違うの?」 「いや、そう!それ!」 「そうなら何で今驚いたわけ?」 「いや、今、違うことを思い出して……」 ごにょごにょ言い訳しながら上履きに履き替えると、サクラは『ま、いっか。そんなことよりどうだった?』と、ニヤニヤしながら、オレの顔を覗き込んできた。 「は?」 「ちゃんとゲストのお願い、叶えてくれた?」 サクラのニヤニヤは止まらない。 「叶えた……かな?」 『オレの喜ぶ顔が見たい』……皇がオレに言った願いは、それ……だったよね?違うのかな? 『余の願いを忘れるな』なんて言ってたけど、皇がふっきーのところに行っちゃったのに……それでもオレが喜べると思ってるの?そんなの……。 「ばっつん?」 「あ……大丈夫」 皇には何人も嫁候補がいて、一人の候補を優遇したらいけないのが当たり前なんだ。 そんな皇からしたら、昨日オレのところからふっきーのところに行ったのは、てんで当たり前のことなのかもしれない。 「何?ぼーっとして。やり疲れ?」 「は?」 やり疲れって何? 「そっかそっか。がいくん、喜んでくれたでしょ?僕のナイスアシスト」 「へ?アシスト?」 「パジャマだよ。パンツの前部分、ちょっと強く引っ張っただけですぐ破れたでしょ?すぐ修理するよ?」 どうして、すでに破れている前提で話が進んでるんだよ!破れてないっつうの!っつか、その問いかけに、オレは何て答えたらいいわけ? いや、実際破れてないんだから、破れてないって言えばいいじゃん! 「破れてないし」 「え?嘘?!説明書なんか見ないだろうばっつんは、お尻に穴があいてることにも気付かずにあのパジャマを着てー、先にお尻の穴に気付いたがいくんがサカってー、無理矢理着衣エッチに持ち込んだ勢いでパンツの前部分を破いてー、さらにサカるっていうのが、僕の予想だったんだけどなー」 「……」 ほぼほぼ合っているサクラの予想に、変な汗が出た。

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