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祭りの準備をしようじゃないか③

すごく、懐かしい……。 みんな目が潤んでる。側仕えさんたちにも、すごく、すごく……心配かけたよね。 「おはようございます。オレ……寝過ぎちゃいましたよね。遅くなって……ごめんなさい」 すぐにしいさんが泣き始めてしまい、それに続いて、こらえきれないというように涙を零したいちいさんに、ハンカチを渡したとおみさんまで泣き出してしまい、それを見たやつみさんが、声を上げて泣き出してしまって……。 そんなやつみさんに、ここのいさんがティッシュをボックスごと渡すと、涙声で『すみません』と言いながら盛大に鼻をかみはじめるから、今度はみんなで一斉に笑ってしまった。 オレ……本当に、ここに帰ってきて良かった。 そのあと、母様は血液検査の準備をしてくると言って病室を出て行き、側仕えさんたちは、オレが昏睡状態でいた時のことを口々に話して聞かせてくれた。 いちいさんが、何かっていうと泣いてしまっていたこと。 ふたみさんが、オレがいつ目覚めてもいいようにと、昏睡状態の間も三食しっかりご飯を作ってくれていたこと。 さんみさんが、しらつき病院に泊まり込んでくれていたいちいさんの代わりに、しっかり梓の丸をまとめあげてくれていたこと。 しいさんが、オレが目覚めたあとにパーティーをしようと企画してくれていたこと。 いつみさんは何と、はーちゃんと大学で出会ったってこと!はーちゃんはイングランドから日本に戻って来たらしい。いつみさんと同じ、神猛学院の大学部で、建築を専攻してるって。っていうか、いつみさん経由で自分の姉上の現況を聞かされるとか……。教えておいてよ!はーちゃん! いつみさんに『よくオレの姉上だってわかりましたね』って聞いたら『そっくりですので間違えようもないです』って、笑われた。 それから……むつみさんが、オレの薬の材料を揃えるため、海外に行っていたってことや、その薬をしらつき病院に届けるたび、看護師さんたちにきゃーきゃー言われて困ったなんていう自慢話とか……。 ななみさんは、毎日オレの洗髪をしてくれていたって。そういえば頭がスッキリしてる。 やつみさんは、オレが昏睡状態になってからガックリしてしまって、何の使い物にもならなかったらしい。 ここのいさんは、オレの専任看護師として、ずっとしらつき病院に泊まり込んでくれていたらしいんだけど、むつみさん以上に、しらつき病院の看護師さんたちにモテモテだったって話とか……。 「あの……あげはとぼたんが宿下がりしたって、皇に聞いたんですけど」 ここに来ていない、あげはとぼたんのことを聞くと、泣き止んだいちいさんが『雨花様がお倒れになってすぐ、あげはが体調を崩してしまいまして……。あげははとにかく雨花様をお慕いしておりますので……ショックが大きかったのか……。そのあとすぐ、ぼたんも体調を崩しまして……』と、困った顔をした。 「二人は大丈夫なんでしょうか?!」 「はい。雨花様がお目覚めになられてすぐ、二人の実家に連絡を入れておいたところ、今朝早くに、今日こちらに戻ると二人から連絡がございました。心配ございません」 「はぁ……良かったぁ」 二人共、大丈夫なんだ!良かった。 「みんなに、すごく心配かけて……本当にごめんなさい」 側仕えさんたち向けて頭を下げると、みんなが一斉に床に膝をつけた。 オレに向けて一礼すると、一番に顔を上げたいちいさんが『もちろん心配致しましたが……私共はみな、雨花様が必ずお目覚めくださると、強く信じておりました』と、また目を潤ませた。 「いちいさん……」  みんな、オレのこと……信じてくれてたんだ。 感動して泣きそうになった時、皇が病室に戻って来た。 皇がオレの隣の椅子に座ると、側仕えさんたちは頭を下げて、みんな病室を出て行った。 「戻ってくるの、早くない?」 占者様に何か話があったんだよね? 「あ?先代の柴牧家殿についてサクヤヒメ様にお伺いいただけるよう、占者殿に依頼して参っただけゆえ」 皇が占者様に話があるって、おじい様のことだったんだ? もう……何だよ、バカ。ちゃんと覚えててくれたんだ。 「……ありがと。あ、あげはとぼたんのことは、今、無事だって聞いたから」 「ああ、そうか。それより、そなた朝餉はどう致す」 「え?まだ」 「そうか。では余もここで共に食す」 そう言って、皇がオレにふわりとベールを掛けた。 「へ?」 皇が扉の外に『持て』と、声を掛けると、皇の朝ご飯が乗ったらしきお膳を持った人が病室に入って来た。 机にお膳を置くと、深々と一礼して病室を出て行った。 それを見届けた皇が、またふわりとオレのベールを外した。 「オレ、血液検査のあとで朝ご飯なんだって」 「ん?そうか。待とう」 「え?いいよ、先に食べて」 ふっと短く息を吐いた皇は『飯は共に食したほうが美味いと申したのは、そなたであろう』と、どっかり椅子に座り込んだ。

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