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正しい”お付き合い”のすゝめ⑭

「何かをしたから楽しかったのではない。そなたと共にしたからだ。これを、そなたの申す”楽しいと感じることが趣味”という方程式に当てはめるなら、余の趣味はそなた、という答えにならぬか?」 「うっ……」 恥ずっ! なんつう恥ずかしいことを、サラリと言うんだ、こいつは! 言葉に詰まったオレを見おろす皇は、見るからに上機嫌だ。 「ゆえに、何が一番楽しかったかと問われても、何をしても同じとしか言えぬ。そなたがおれば、余は何をしても心躍るゆえ」 もうとにかく恥ずかしくて、オレは『はぁ』と、気の抜けた返事をして、赤くなっているだろう顔を隠すように、吹き出したお茶を必死で拭いた。ちらりと視界に入った皇は、ニヤニヤしている。 「……何?」 「いや。今のやり取りで、何をそのように照れることがあっただろうかと思うてな」 「はぁ?!今ので照れなかったら、いつ照れるんだよ!バカ!それなら、お前の怒りスイッチのほうが全然わかんない!」 「あ?そもそもそなたは、余に馬鹿馬鹿言い過ぎだ!」 そこからお互い、言いたい放題言い合った。 で。言い合っているうちに、一旦落ち着こうということになって、どうしたら一番落ち着くかと顔を見合わせたと同時に『耳掃除だ!』って声が合ったから、二人で耳掃除をし合うことにした。 あんなに文句を言い合っていたのに、何でこうなったのかと思うとおかしくて吹き出しそうになるのを必死でこらえながら、皇に耳掃除をしてもらった。 「余は生涯……こうしてそなたの耳を掻くのだろうな」 笑いながらそう言う皇に、オレは、何だか泣きそうになりながら『そうだよ』と、笑い返した。 皇と一緒の時間を過ごしていくうちに、本当にオレが皇の嫁になるんだなって実感出来るようになったのは、11月も終わりを迎える頃だったように思う。 12月1日 晴れ 今日は、神猛学院高等部、二学期期末考査です。 三年生は、今日一日で期末考査の全てを終わらせる。全13教科を、今日一日で終わらせるのは、受験勉強組への配慮らしい。……もっと違う配慮はなかったの?と、思うけど仕方ない。 学校に向かう車の中から曲輪の景色を眺めていると、いつもより多くの人が行き来している気がした。 「今日、人が多くないですか?」 運転手さんにそう声を掛けると『今日は定例会議がございますので、そのためかと存じます』と、答えてくれた。 そういえば、昨夜皇がそんなこと言ってたっけ。衆団会議があるから、今夜はオレのところに来られないかもしれないって。 『昼間学校で会うし』と、皇に言うと『学校ではそなたにこのようなことは出来まい』と、キスをしてきたので『学校でも散々してきたじゃん!』と文句を言う……みたいな。 「……」 思い返したら、昨日のオレら、ただのバカップルじゃん!恥ずっ! 今日からテストだっつうのに、何してたんだよ!昨日のオレ! 恥ずかしさを取り払うように、学校に着くまで教科書を読み漁った。 学校に着くと色んな人から、体はもう大丈夫なのかと気遣われた。 そういえばオレ、階段落ちしてから学校に来るの、初めてだっけ。オレの携帯番号を知ってるヤツとは、大丈夫だよってやり取りしたけど……。 気遣ってくれるみんなに愛想笑いをするのも疲れてきた頃、ようやく教室についた。 一息吐く間もなく、同じクラスの奴らに、質問責めにされた。体調を気遣う質問じゃなくて、オレが階段から落ちたのは、本当にただの事故なのかって。 オレが階段から落ちたのは、ふっきーと天戸井の争いに巻き込まれたからとか、皇争奪戦の末に突き落とされたんじゃないか、なんて噂があったらしい。 だけど、オレが意識をなくしている間に、あの学祭での一連のゴタゴタは、天戸井の取り巻き連中によるものだったって、天戸井がA組のみんなに詫びを入れたんだそうだ。驚き! そんなことがあって、オレの階段落ちは、ただの事故だろうってことで落ち着いたらしい。 『だけど本当に事故だったの?』と、聞いてくるみんなに、オレは『うん。オレが足を滑らせたんだよ』と、眉を下げると、クラスの奴らは若干残念そうな顔をして『うん。ばっつんなら、だろうな』と、興味を失ったように、自分の席に戻って行った。 ばっつんならだろうなって、どういうことだっつうの! っていうか……やっぱり天戸井って、悪いヤツじゃない、と思う。なんていうか、嫌味なことも言うけど、まっすぐっていうか……あいつなりの筋は通ってるっていうか……。 そのあと、サクラ、田頭、かにちゃんが次々に登校してきて、話をしているうちに、一限の予鈴が鳴った。予鈴と共に教室に入って来た皇と、一瞬視線がかち合って……。 「……」 めちゃくちゃ照れた。 わかってたけど、改めて皇はめちゃくちゃカッコいい。このめちゃくちゃカッコいい皇は……オレの、とか思ったら、鼻の穴が膨らむのを止められないっ!

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