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正しい”お付き合い”のすゝめ㉑
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どうにかこうにかテストを全て終え、屋敷に戻って着替え終わった時、コンコンコン……という元気なノックの音がした。
『雨花様!今よろしいですか?』と、ドアの外からあげはの声が聞こえてきた。
来たー!オレの勘、すごい!
「いいよー」
すぐにドアを開けると、あげはは『雨花様のテストが終わるまで、お部屋に遊びに行ったらいけませんって、一位様に止められていたんです。テストは終わったんですよね?』と、窺うようにオレを見上げた。
「終わったよ。そんな気にせず遊びに来れば良かったのに」
「雨花様が良くても、一位様が駄目だとおっしゃったら駄目なんですよ。一位様、怒るとすごぉく怖いんですから!」
本当に怖がっているような顔をして、いちいさんがいないか確認するように、廊下をキョロキョロ見回すあげはを見て吹き出してしまった。
「もうテストは終わったから、いちいさんも怒らないよ。入って」
「はい!お邪魔します!」
オレの予想だと、あげははお昼に皇と話していた、”あの”話を聞きに来たんだと思う!
オレが勧めるままに、あげははオレの目の前のソファに、ちょこんと座った。
「あげはも、もう期末テストなんじゃないの?」
「はい。もうすぐです」
そういやぁ、あげはってどれくらいの成績なんだろう?神猛の中等部に通ってるんだから、世間一般的には頭が良いってことで、間違いないだろうけど。
あげははまだ子供らしい顔付きだけど、もう何年かしたら、確実にかっこよくなるだろうなっていう、品のある利口そうな顔をしている。
大きな目だけど、その視線はどこかキリッとしていて、鼻は高いし。ニコニコしてる時は可愛い!って印象が強いけど、たまに黙っていると、ただのイケメン予備軍でしかない。
うちの側仕えさんたちは、揃いも揃ってイケメンだけど、その中に一緒にいても、あげはもぼたんも、見劣りするようなことは少しもない。
こんな小さいうちから鎧鏡の家臣として一人前に働いてるんだから、勉強が出来ないわけがないよな。
「雨花様、前、ボクが聞いたこと、覚えていらっしゃいますか?」
はい!来た!
お付き合いって何をするかって、ことでしょう?
万が一その話じゃないと恥ずかしいので、オレはとりあえず『ん?』と、はぐらかしてみた。
「お付き合いって、どういうことをするのかってことです」
「ああ……」
わかってた!うん。わかってたよ、あげは!
よし!まずは何から話そうか……と、ゴクリと息を飲んだ時、いきなりバンッと、ドアが開いた。
「うおっ!……って、皇?」
今日は衆団会議があるから、来られないかもって言ってたじゃん!
「あ……じゃあ、ボクは失礼します。またあとでお話聞かせてください」
皇に遠慮をしたのか、頭を下げて部屋を出て行こうとしたあげはを『いや、出ずとも良い』と、皇が止めた。
ほ?
「雨花に話があるのであろう?余には構わず、済ませるが良い」
「いいんですか?」
あげはは、ぱあっと嬉しそうな顔をして、もう一度ソファにちょこんっと座った。
「若様がいらしてくださったほうが、ボクとしては都合がいいです!」
お付き合いとはなんぞやって話を聞きたいんだもんね。普通の家臣さんなら、皇にそんな話は聞けないだろうけど、あげははいちいさんのことは怖がるくせに、皇に対しては、畏怖の念、みたいなものを持っていない気がする。
「そうか」
皇が、あげはにすごく優しい顔を向けた。
……。
皇があげはに優しいから、あげはは皇に対して、畏まることがないんだろうなぁ。
皇って、小さい子には優しいのかもしれない。でも家臣さんたちには、”威厳ある若様”でいないといけないんじゃなかったの?
そういえば実の弟の、名前は、えっと……あ!伊右衛門 くん、だったかな?伊右衛門くんは、まだ小学生って言ってたっけ。珠姫ちゃんよりも会うことはあまりないって皇が言ってたけど、伊右衛門くんがいるから、小さい子には優しいのかもしれない。
「では、さっそくなんですけど……」
あげはがカバンの中から、おもむろにノートパソコンを取り出した。
へ?何?お付き合いとはなんぞやって話じゃないの?
「前に雨花様に、お付き合いって何をするんですかって、お伺いしたことがあったじゃないですか」
「うん」
その話を聞きたいんだよね?
「あれからすごく気になって、梓の丸のみなさんにも聞いてみたんです」
「え?側仕えさんたちに?」
「はい!」
「何て言ってた?」
いちいさんたちにそんな質問が出来るとか!怖いもの知らずっていうか……もう猛者だな、あげは!オレも聞きたい!教えて!
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