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正しい”お付き合い”のすゝめ㉒
ふたみさんとさんみさんは付き合ってるって母様が言ってたから、そこは確実だろうけど……いちいさんと松の一位さんは付き合ってるのかな?
っていうか、みんな、どんなことしてるの?すごい聞きたいっ!
あげはにずいっと近付くと、オレの隣に座っている皇が、ぴくりと体を動かした。
ん?って顔で皇を見ると、皇はギロリとオレを睨んで、わざとらしくオレに近づくように座り直した。
何?……変なやつ。
「それが……みなさんに聞き回っているところを一位様に見つかって、そういうことは誰かに聞くものではありませんって、怒られちゃいました」
「ああ……」
正論!っていうか、いちいさんには聞けなかったかぁ。うん!そこはもう仕方ない!
「一位様、何でも簡単には教えてくださらないんです。”自分で調べなさい”っていつもおっしゃって……。だからボク、ネットで調べました!」
あげははノートパソコンを開くと、パチパチっとキーボードを叩いた。
「これです!」
あげははノートパソコンをくるりと回して、オレたちに画面を見せた。
『お付き合いの仕方』と、デカデカ書いてある。
「ぶはっ!」
思わず吹き出してしまった。
だってこれ、ふっきーに教えられて、オレと皇が見たのと全く同じページじゃん!
「あ……雨花様もこんなの嘘だっておっしゃるんですか」
目の前のあげはは、シュンっとした顔で口を尖らせた。
「え?」
「学校の友達にこの画面を見せたら、インターネットの情報なんか嘘ばっかりだって。こんなの信じるとか子供だなって、笑われました」
「ほぅ……」
信じる信じない関係なく、あげはもあげはのお友達も、まだ子供だと思うよ?
っていうか、このページに書いてあることを実践して、思いっきり満足してたオレたち……二人とも18歳……。
「嘘と断定するのは、早計かと思う」
隣の皇が片方の眉を上げて、画面を指差した。
「この、”いちゃいちゃする”なぞは、付き合う上で必要不可欠なことだ」
「そうですよね!嘘じゃないですよね!」
難しそうな顔で顎を触りながら、もっともらしくそんなことを言う皇に、我慢出来ずに吹き出した。
「雨花様、どうなさったんですか?」
「ううん。続けて、続けて」
そのあとも、項目ごとに『これも大事なことだと思う』なんて言ってる皇に、オレはもう、笑い転げそうになるのを必死でこらえた。
「ここに書いてあることは、どれも絆を深める手段として有効だろう。だがあくまで手段。付き合うとは、互いが互いを大事な存在と想い合っていこうという、気持ちの約束事……なのではないかと思う。気持ちがあれば、相手がそこに居さえすれば、何をしてもただただ喜ばしく思うもの。ゆえに、何をすれば良いというものではなく、何をしても良いのではないか」
皇は、こつんっと軽く、オレに膝をぶつけた。
皇……。
そうだよね。ここに書いてあること、何をしてもドキドキして、楽しかった。
皇と一緒にしたからだ。
これがサクラとか田頭としたって、ドキドキして楽しい……なんて、そんな風には思わなかったと思う。
皇が好きって、気持ちがあったから……。
目の前に座っているあげはは『すごいです!若様!よくわかりました!』と、感動している。
そう言われた皇は『いや、偉そうなことを申した』と、ちょっとバツが悪そうな顔をした。
……。
何か……皇って、小さい子に優しいっていうか、弱いのかな?いつもの皇ならムッとしそうなところでも、あげはやぼたんが相手だと怒らないってことが、今までも何度かあったし。
あげはは満足そうな顔で『ありがとうございました!』と、パソコンをしまうと『思う存分いちゃいちゃなさってください!』と、元気に部屋から出て行った。
ちょっ……あげはぁ!
「あれで良かったか?」
皇はオレの手を握って、小首を傾げた。
うぅぅぅぅっ!もうっ!
オレは小さく頷いたあと『いいに決まってる!』と、皇の唇に、ぶつかるみたいなキスをした。
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