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竜宮までのカウントダウン②

いちいさんはさっきの電話で『心配するから耳に入れないように』とか、言ってた。それって、いちいさんが誰かに心配を掛けないように、何かを隠してるって、こと、だよね。 「……」 その誰かって……オレ、なんじゃないの? いちいさんがおかしい態度を取り始めたのは、あの手紙を見つけたあとだ。 いちいさんは手紙について何か知ってて、隠してる?しかも、オレが心配するようなことを……。 急に父上が心配になって、柴牧の母様に電話をしたけど、コール音がするだけで電話に出てくれなかった。やっぱり、父上に何かあったんじゃ……。 「あ!」 父上が無事なら、今夜の会議に出ているはずだ! 高遠先生が来る前に、父上が来ているかこっそり探りに行こうと、シロのお気に入りの場所に走った。 シロなら誰にも見つからず、本丸に連れて行ってくれる。 シロがいつもいるのは、この(つた)のカーテンの向こう側だ。手を伸ばすと、オレが触れる前に、蔦のカーテンがグワッと開いた。 「うわっ!……え?皇?」 「な、にを、しておる?」 皇がものすごく驚いていることに、さらに驚いた。 「え?お前こそ会議は?あ!父上、会議に出てた?!」 そうだ!皇に聞けば、こっそり本丸に行くまでもない!皇がここに何をしに来たのかわからないけど、とにかくいいところに来たじゃん! 「あ?ああ。おった」 その答えを聞いて、ものすごく安心した。父上は無事だ! 『そっか、良かった』と、ホッとして皇を見上げると、重なると思った視線が重ならない。 お? こいつ……何か、隠してる。咄嗟にそう思った。 「会議、終わったの?」 皇が何かを隠してるのはわかるけど、聞いても答えるはずがない。隠す気がないなら、もう話してくれてるはずだし。 何かを隠してるって、ぐうの音も出ないほどの証拠を突き付けて聞き出さないと! オレは努めて普段通り、当たり障りない質問をした。話しているうちに、いつかボロが出るはずだ。 「いや、休憩だ。忘れ物を取りに参った」 「忘れ物?オレの部屋に?」 携帯電話でも忘れたかな?皇、携帯電話くらいしか、持ってなかったはず。あれ?でも、さっき別れた時、携帯電話、持ってるの見たと思う。え?何を忘れたんだろ?会議の休憩中にわざわざ取りに来るような重要な物……ってことだよね?そんなの、何かあったっけ? 「いや……一位が預かっておると連絡がきた」 「そう、なんだ。それ、取りに来たの?」 「ああ」 いちいさんのさっきの電話、相手は間違いなく皇だろう。 会議の休憩中に、わざわざ皇が取りに来るくらい大事な物を、いちいさんが持ってるだと?オレは何も聞いてないのに?さっきまで散々いちいさんといたんだよ?皇の忘れ物なら、オレに渡すと思う。もしくはさっき、話してくれてるはずだもん! いちいさんと皇が結託して、二人でオレに何かを隠してるってことだ。 いや、何かじゃない。あの手紙のことしかない。 皇と出会ってから今まで、皇が何をどう思って行動してきたのか、オレはもう知ってる。皇とたくさん、そんな話をしてきたから。 オレが勝手に傷付いていた時だって、皇はいつでも、オレのことを考えてくれていたって、今はわかってる。皇の気持ちを聞くまでは、素直にそう思えなかったけど……。 だから、皇といちいさんが、あの手紙のことをオレに隠しているのは、間違いなく、オレのためだ。 それがわかっているからこそ、本当のことが知りたい。 守られるばっかりはイヤだよ。 オレのことなんでしょう? 「そなたはどこに参る?」 「え?……っと、シロのとこ」 皇を先に屋敷に帰して、見つからないようにあとをつけようと思った。皇を尾行して、こっそりいちいさんとの会話を聞ければ、オレに何を隠しているのか、わかるかもしれない。 「高遠先生がいらっしゃる時間ではないのか?先生をお待たせするでない」 「あ、うん。シロをモフモフしたらすぐ帰る」 皇は、オレの頭にポンッと手を置くと、屋敷の玄関方面に向かって、足早に去って行った。 オレは見つからないよう注意しながら、こっそり皇のあとを追った。

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