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竜宮までのカウントダウン⑭

勉強合宿中で、家と連絡を取っていないと言ったオレに、サクラは『ネット情報は嘘も混じってるかもしれないけど』と、前置きしてから話し始めた。 日曜日の今日、生徒会主催のクリスマスパーティの準備の手伝いで学校に来ていたサクラたちが帰り支度をしていると、これから帰宅をする生徒は、迎えがないと帰れないという館内放送が入った。 詳しい理由がないままそんな指示が出たことを不審に思った田頭とサクラは、ネットやら仲間の力を駆使して、大学部前で通り魔が出たらしいという情報を掴んだ。 ”襲われたのは数人?一人は、柴牧葉暖さんという神猛の学生か?”という、ネットの書き込みを見て驚いたサクラが、真偽の程が定かでないうちに、オレに電話をしてきた。 そこまで聞いた時、サクラの隣にいたらしい田頭の『ばっつんのお姉さん、軽傷らしい!』と、いう声が聞こえた。 『ばっつん!お姉さん、軽傷らしいって!』 「あ……」 よかったぁ……。 一気に力が抜けて、その場にへたり込んだ。 でも軽傷らしいってだけで、確定したわけじゃない。 『あー……神猛大の男子学生が一人、重症みたいだって。現場に居合わせた人の話が書き込まれてる。その学生さん、ばっつんのお姉さんのこと、庇ったみたいだって』 「えっ?!」 はーちゃんを庇って重症? オレもすぐにサクラが見ていると言っていたSNSを開くと、結構な人が現場に居合わせていたらしく、次から次に、新しい書き込みがされていく。 通り魔にナイフで切り付けられて、男性が重傷を負い、救急搬送された。 女の子を庇ったように見えた。 犯人は未だ逃走中。 そんな書き込みが、何度も何度も画面を流れていく。 『あ、この人かも!お姉さんを庇ってくれた人!サカヨリケイゴさん?』 「サカヨリ……」 サカヨリが”阪寄”って字なら……オレにいつもプレゼントを贈ってくれる鎧鏡家の家臣さんの苗字だ!何度もお礼状を書いているから、覚えてる。 その人が本当に家臣の阪寄さんなら……鎧鏡家がはーちゃんにつけてくれてた護衛さん……とかじゃないの? やっぱり、はーちゃんだってわかってて狙われたの?犯人は逃走中って書いてあった!はーちゃんが無事だって知ってる犯人が、またはーちゃんを狙ってるってことはないの?! 『ばっつんのお姉さん、重傷を負った人と一緒に、救急車に乗ったって書き込みがあるよ!』 「えっ?!一緒に?どこの病院だろう」 しらつき病院なら安心だけど……。 『うちの学生が運ばれたんだから、うちの大学の付属病院じゃないかな?』 「あ……そう、だよね。わかった!ありがとう!サクラ!」 『何かわかったらまた連絡する!』 サクラとの電話を切ってすぐ、父上と柴牧の母様に連絡を取ろうとしたけど、二人とも電話に出てくれなかった。 もしかしたらと思って、はーちゃんにも電話をしてみたけど、やっぱり出ない。皇の電話番号はわからないし……。 はーちゃんは父上とは違う!父上みたいに強くない!今、はーちゃんはちゃんと守られてるの?!不特定多数の人が出入りする病院にいたら、はーちゃんがまた狙われる可能性があるんじゃないの?! とりあえず……いちいさんに話そう!いちいさんにお願いして、はーちゃんの無事を確保してもらわないと!サカヨリさんの容体も気になる。 急いで部屋を出ると『雨花様?どうなさいましたか?』と、さんみさんに声を掛けられた。 「あ!あの……いちいさんは?」 「今、外出していらして……。どうかなさいましたか?」 「あの……姉上が、襲われたかもしれないって、友達から連絡がきて」 「ええっ?!」 倒れそうな勢いで驚いたさんみさんに、サクラから聞いた話をして、未確認情報だけど姉上は無事らしいと伝えると、さんみさんは自分を落ち着かせるように長く息を吐いた。 「もしかすると、一位様はその連絡をもらって、病院にいらっしゃるのかもしれません」 「え?」 「実は……一位様と先程から連絡が取れないのです。行先もわかっておらず……」 「えっ?!」 「病院にいらっしゃるなら、携帯電話の電源を切っていらしてもおかしくないですよね。すぐに私のほうで、葉暖様のご無事の確認と、一位様の居場所を調べますので!」 「あ!」 それは違うんじゃないかと言う前に、さんみさんは走って行ってしまった。 父上の噂についてオレに黙っていたことを、いちいさんはすごく謝ってくれた。そんないちいさんが、はーちゃんが襲われたと知ったら、オレに話さないはずがないと思う。 でも……はーちゃんと関係ないとしたら、いちいさんはどこに? まさか……いちいさんまで……。 次々と浮かんでくる悪い考えを、頭から追い出すのが精一杯で、今、自分に出来ることは何なのか、それすら考えられない自分に、怒りのような、敗北感のような、とにかく嫌な感情がわいた。

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