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ラスボス戦⑤

はーちゃんを襲った犯人と、杉の一位さんの直接的な繋がりを調べ始めた護群は、犯人が小さい頃、子安家に保護されていた過去があることを突き止めたという。 子安家は産婦人科という職業柄か、訳ありの親子を保護することが、それまでも幾度もあったそうだ。 はーちゃんを襲った犯人も、そういった境遇だったようで『小さい頃から世話をしてくれた人がいる。感謝してもしたりない』というような話を、友人たちにしていたらしい。 杉の一位さんは、家業を手伝えない代わりに、子安家が保護した親子の世話をよくしていたという情報があり、そこから、はーちゃんを襲った犯人が言っていた”世話をしてくれた人”というのが、杉の一位さんじゃないかと推察されたらしい。 そんなこんなで、はーちゃんを襲った犯人と、杉の一位さんの繋がりは、おぼろげながら掴んだわけだけど、その繋がりだけでは、杉の一位さんが主犯とはいえない。 それでも、杉の一位さんが主犯だろうと疑っていた大老様は、はーちゃんを襲ったあの男から事情を聞くのが一番手っ取り早いと考えた。 鎧鏡家は、警察との繋がりも強いという。警察で得た情報を、護群にも流してもらえるよう働きかけていたというが、はーちゃんを襲った犯人は『むしゃくしゃしてやった』とだけ言ったあと、ずっと黙秘を続けていたそうだ。 早く手がかりを掴まなければ、オレの身に危険が及ぶのではないかと心配した大老様は、警察には任せていられないと判断し、犯人から直接事件の詳細を聞き出すため、出来る限りの圧力をかけて、ようやく警察から、はーちゃんを襲った男を引き取ったという。 警察の事情聴取なんかより、護群の聴取は厳しいらしい。それでも、はーちゃんを襲った犯人は、未だに何も話していないそうだ。 大した情報を得られないまま、解決策も見いだせずにいた時、避難させる目的でオレを送った竜宮で、オレが襲われる事件が発生した。 竜宮でオレの無事を確認した大老様は、オレを襲ったあの男の素性をすぐに調べるよう護群に命じた。 大老様があの男を護群のもとに連れて行ってすぐ、あの男が、父上を襲った犯人と同一人物だろうことがわかったという。 護群は、父上が襲われた現場を徹底的に調べていて、犯人の靴のあとから割り出されていた犯人像と、オレを襲った犯人の特徴が一致したそうだ。 父上が襲われた時の証言を思い出した大老様が、オレを襲った犯人の脇腹を確認すると、犯人とやりあった時、父上が入れたという蹴りの痣が未だに残っていたそうで、その痣が、父上とオレを襲った犯人が同一人物だということを決定的にしたという。 その後すぐに、オレと父上を襲ったあの男も、子安産婦人科病院で生まれ、子安家でしばらく保護されていた過去があるということが、杉の一位さんのお母さんからの証言で確認されたんだそうだ。 子安家を出たあと、あの男が何をしていたのかはわからなかったらしいけど、はーちゃんを襲った犯人と、オレと父上を襲ったあの男は、杉の一位さんと繋がりがあることがわかった。 父上襲撃事件から始まった一連の柴牧家襲撃事件は、鎧鏡家の家臣ではないと、実行出来なかっただろうことが多い。 鎧鏡一門の人間が、必ず事件に関与していると考えていた大老様は、鎧鏡一門の人間ではない実行犯の二人と繋がった杉の一位さんが、実質の主犯ということで間違いないと確信し、拘束に踏み切ったという。 杉の一位さんは、犯人二人とは知り合いなのは認めているそうだけど、オレたちを襲った事件への関与は否定しているという。 でも、オレのかばんに手紙が入れられていたあの日、曲輪入り口の検査所近くの防犯カメラに、杉の一位さんの姿が映っているのがみつかったという。 それから、はーちゃんを襲った犯人の、犯行前の行動を調べていた警察から得た情報をもとに、護群が犯人の数日間の行動をしらみつぶしに調べた結果、犯行実行の数日前、犯人が杉の一位さんに似た男と話している映像を、コンビニの防犯カメラから入手出来たんだそうだ。画像が不鮮明で、今、画像処理をしているところだそうだけど……。 『今のところ、見つかった証拠はその程度ではございますが、杉の一位を一連の事件の主犯として拘束するには十分と判断致しました。雨花様を襲った犯人の身辺調査を進めていけば、杉の一位が主犯だという証拠はさらに揃うことでしょう。杉の一位が事件を起こした動機については、護群と御台様が聴取をしている最中です。杉の一位が主犯という確たる証拠をさらに集め、必ずや動機も解明し、この先、鎧鏡一門内にて、未来永劫二度とこのようなことを起こす者が出ないよう、対策を立てろと護群に命じました。若の奥方様候補様方、ご家族様方の警備は、さらに強化してございます。どうぞご安心ください』……と、手紙はそう結ばれていた。

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