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粗方薄橙色話①

軽く触れるキスを何度か交わして、皇は『肩はもう痛まぬな?』と、オレの瞳を覗いた。小さく頷くと『口を開けよ』と、囁くように優しい声で、そうオレに命じた。 軽く口を開くと、すぐに唇は塞がれて、皇の舌がオレの口の中に差し込まれた。 皇がこんな風にキス、するのは……オレにだけ、なんだ。 皇と気持ちを打ち明け合ったあと、確認するように、自分の中で何度もそう繰り返してきた。 皇のことが好きだと気付いた瞬間から、オレはずっと他の候補様たちと、自分を比べてきた。でももう、そんなことをしなくていいんだ。そう思うと、いつも心のどこかにあった、劣等感みたいな気持ちがほどけていく気がする。 おずおずと、自分からも皇の舌に触れていくと、皇は自分の膝を、オレの足の間に入れてきた。 「んっ……」 思わず上げた声が、ひどく……甘い。 恥ずかしくなって皇の顔を見ると、目の下の隈が濃いことに気付いた。 そうだ。皇、髭も剃らずに、点滴するくらいの状態だったんだっけ。 「隈、ひどいよ」 皇の目の下に手を伸ばすと、その手を掴まれて、指にキスされた。 「そなたの姿を次にいつ見られるのかと、そればかり考えて、何も手につかなかった。床に入っても、そなたのことばかり浮かんで、眠ることすら上手く出来なかった」 「……バカ」 「そうだな。余は、そなたが絡むと概ねうつけだ。……そなたは、息災であったか?」 「……」 オレは、皇と離れたあの竜宮で、毎日ふたみさんの美味しいご飯を食べて、勉強して、探検して、寝て……体は、元気だった。 「ん?」 「オレは……お前がいなくても、何でも出来たし、しっかり寝てた」 「そうか。そなたが無事で、誠、良かった」 「ちゃんとご飯も食べてたし、元気だったけど……」 体は元気だったけど……。 オレを見下ろす皇の胸に、顔を埋めた。 「ん?」 「元気だったけど……会いたかった」 「……」 「お前に、すごく……会いたかった」 ごくりと喉を鳴らした皇に、ひょいっと抱き上げられて、放り投げられるように、乱暴にベッドにおろされた。 オレの上に馬乗りになった皇は、驚いて半開きになったオレの口の中に、さっきみたいに優しくてふんわりとじゃなくて、性急に舌を滑り込ませた。 「んんっ!」 無理矢理舌を絡ませながら、皇は一気に、オレの寝間着の襟を左右にぐっと開いた。 その瞬間、オレと皇の呼吸音に交じって、チャリッと小さな音がした。 「あ……」 開かれたオレの胸の上を、皇からもらったプレートのペンダントが、サラリと滑っていった。 ハッとした顔をした皇は、ふっと優しい表情になって、プレートを自分の手の中に包み込んだ。 じっとそのプレートを見つめた皇は『温かい。そなたのこの体温を、どれだけ欲したことか』と、プレートにキスをして、オレの胸からペンダントを外した。 「何で?」 何で外すの? 「忘れたか?」 皇は、大事そうにプレートのペンダントを、ベッド脇のチェストの上に置いた。 「え?」 「彫らせた言葉が足らぬと申したのは、そなたであろう」 「あ……」 「……余だけの、青葉」 重ねた唇を離さないまま、皇は、オレの寝間着の裾を割って、足の付け根に膝を入れた。 「欲しい」 キスの合間に、そう呟いた皇の膝が、オレの足を開かせる。 太ももに当たる、硬い……感触。 ドクンっと、体が反応した。 「苦しい……今すぐ、欲しい……青葉」 オレの中心に、皇の熱が押し付けられた。 二か月近く、触れることのなかったその熱を、体が求めて、オレも、苦しい。 皇にぎゅうっと抱きついて、耳元で『オレ、も』と、素直に伝えると、皇はまた、ごくりと喉を鳴らした。 混ざる唾液に、何度もむせそうになりながら、それでも、皇の舌を求めた。 ジリジリとする下半身を、もうすぐにでも、さらけ出してしまいたい。 オレの腰紐をすっと解いて、寝間着を開いた皇の指が、脇腹をなぞって、乳首に届いた。 「はっ……」 血液が一気に、ペニスに集まる。下着の中で、ドクドクと小刻みに揺れるペニスを、触って欲しくて……皇の熱に、こすりつけた。 皇が、驚くほどびくりと体を震わせるから、もっと、もっと皇を感じたくて『お前も、脱いで』と、皇の寝間着の衿もとから覗く、のどぼとけを、そっと撫でた。 「会えぬ間、そなたも……余を欲したか?」 「……ん」 横になっているオレの体をまたぐように、すっと立ち上がった皇は、シュッと帯を解いて、寝間着を脱ぎ捨てた。 「この身も想いも、そなたに、全て捧げる」 皇は、オレの手を掴んで、自分の胸に持っていった。 「余を……そなただけのものに致せ」

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