568 / 584
粗方薄橙色話⑥
「濡れたままなのに!」
「そのようなことを気にするのなら、愛らしいことを申すでない」
何故かプンプン怒ってる皇が、オレをシーツにくるんで、抱きしめた。
「昨夜、そなたを求め過ぎた自覚はある。まだ体が重かろう。閨 を強いることはしたくない。余を焚き付けるのは慎め」
『ん』と、皇の濡れているまつげにキスをすると『それもならぬ』と、すっぽりと頭からシーツをかぶされた。
「ちょっ!」
「そうだ。何か、余が落ち着く話を致せ」
「え?……んんん……受験のこととか?」
「お……もう目前だ。そなた、合格すると豪語しておったな」
「するよ。学部は違っても、絶対お前と同じ大学に通いたいもん」
そう言うと皇は『ならぬと言うておるに、そなたは』と、またプンプン怒り始めた。
「何?」
「愛らしいことを申すなと言うておる」
「何、それ」
「ならぬ。他に、話したいことは?!」
「あ!卒業式、皇、何着るの?神猛、何を着てもいいんだよね」
「鎧鏡の次期当主は、着るものが決まっておる」
「え?着物?」
「いや、歴代の当主が着た神猛の制服だ」
「へぇ、そんなのあるんだ?」
そこで鼻がむずむずしてくしゃみをすると、皇は『寒かったか?』と、シーツをめくってオレの顔を覗き込んだ。
皇の顔が見えたのが嬉しくて、にへっと笑うと、目を見開いた皇に、飛びつくみたいにキスをされて、その衝撃で、ベッドに押し倒された。
皇にくるまれたシーツがひらりと揺れて、素肌の胸が露出した。
「あ……」
シーツを戻そうと引っ張ると、皇の顔が、オレの胸にうずまった。
「皇……」
おずおずと、皇の指がオレの乳首に伸びてくる。
「深くは、求めぬゆえ……」
自分に言い聞かせるようにそう呟いて、皇は、オレの乳首をふわりと口に含んだ。
「んっ!」
お前が深く求めなくても、こんなことされたら、オレのほうが……。
皇が言うように、もう勃つことすら出来ないくらい、夕べ、これでもかってくらい……した、のに。
シシから贈られた、オレの中に出来た”印”がピクリと動いて、期待し始める。
深く求めないと言われたのに、皇のペニスじゃないと触れることすら出来ない体の奥で、擦られる機会を伺い始めてる。
右の乳首に吸い付きながら、左の乳首を指でこね回す皇のペニスが、熱く硬くなっていくのを、足で感じた。
「はぁ……」
もう、普通の呼吸も出来ないくらい……始まってる。
「すめらぎ……」
オレが何も言わなくても、どこを触られたいのかわかるって、言ったじゃん。
まだきっとオレのあそこは……広げなくても、ふにゃふにゃだと、思う。昨日、あんなにお前に、突かれたんだから。
潤滑剤も、要らないでしょう?お前を求めるほど、印から溢れてくるって、言ったじゃん。だってオレ……したい。今、お前と……。
軽く膝立てた膝を、偶然当たっちゃいましたみたいな感じで、皇のペニスに、当てた。
手を止めた皇は、ふぅふぅと深呼吸をし始めた。
「皇……」
我慢、してるの?
本当は……したい、の?
オレは……したい、よ?
皇をじっと見つめると、皇は、オレの頬を指で撫でた。
「……痛むのではないのか?」
ふるふると首を横に振って、心配性の皇に、今、オレがして欲しいことを伝えた。
「奥、突いて……」
後ろから、ガツガツというように、皇に容赦なく突かれる。体を激しく揺さぶられて、皇のペニスが印に届くたびに、オレは喘ぎ声を上げて、四つん這いで踏ん張っていた体も、自分の腕で支えていられず、皇に抱えられた腰だけを上げて、ただ快楽に飲まれた。
何度絶頂を迎えたかわからない。
印を擦られると、吐精せずに登りつめた。
今まで感じたことのない、ふわふわした絶頂感がどこまでも続いて、喉が枯れるほど声を上げた。
さすがに擦られすぎて痛みを感じると、皇にはそれもわかったのか、そこでようやく、オレの中からペニスを抜いた。
「す、め……らぎ……」
ガラガラに掠れた声で皇を呼んで、その胸に顔を埋めた。
オレの頭に何度もキスをしながら、皇は、すまぬと、小さい声で謝った。
「オレ、が……してって、言ったん、じゃん」
お前が謝ることじゃないのに……。
「そのように、声を枯らして……」
裸の皇に、ぎゅうっと抱きしめられると、全身が幸福感でいっぱいになる。
「皇……」
「つらいか?」
違うよ、バカ。
「皇……」
「どうしたい?」
オレも、皇にギュッと抱きついた。
「もっと……ぎゅって……」
して。
「雨花……」
皇は、さっきよりもちょっとだけ強く、オレを抱きしめた。
「……」
好き、だよ。お前のこと……大好き過ぎて……どうしよう。苦しい。
息苦しくて顔を上げると『愛しい』と呟いた皇に、キス、された。
ともだちにシェアしよう!