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粗方薄橙色話⑩
「じゃあ、お前が大丈夫なら、実家、来る?」
皇は『良いのか?』と、明らかに嬉しそうに顔を上げた。
「うん。でも、父上とか恐縮しちゃうから、こっそりだよ?」
「わかった」
「ん」
皇は『そなたと正月の契りを結んだゆえ帰る』と、オレにキスをした。
そのために、わざわざここまで来るとか……。
『電話してくれたら良かったのに』と言うと、皇はもう一度オレにキスをして『電話ではそなたに触れられぬではないか』と、怒ったような顔をした。
もー!ホントに何なの?この可愛い若様は!
気持ちを打ち明け合ってから、皇は何ていうか……子供みたいって思うことが多々ある。……いい意味で、だけどね。
『そっか』と言って、オレからもキスをすると、皇はにやりとしながら『あとでな。また熱なぞ出さぬよう、しっかり防寒して参るのだぞ』と言って、ふわっと窓から出て行った。
サクヤヒメ様の祠にある神社の前で、お館様と母様を先頭に、その後ろに皇が並び、さらにその後ろに、オレたち候補が並んだ。
オレたちから少し離れたところに、大老様や櫂様、曲輪の中での要職に就いている人たちが並んで、"その時"を待っていた。
寒っ……と身震いすると、年が明けたことを告げる鐘が鳴った。
「新年、明けましておめでとうございます」
お館様が、サクヤヒメ様に向けた挨拶をして頭を下げると、それに続いてみんなが一斉に『おめでとうございます!』と、頭を下げた。
新年の行事が始まった。
一通りの挨拶を終えて一旦屋敷に戻り、側仕えさんたちと一緒に、梓の丸の至る所に、お米を置いたり、お水を置いたり……。
そのあと、お正月のしつらえを整えて、まだ暗いうちに軽い朝ごはん?を食べると、またすぐに本丸に向かった。
日の出と共に始まる家臣さんたちからの新年の挨拶を受けるためだ。
家臣さんたちの挨拶は、日の入りの終了時間まで、休憩を一時間と取れないままノンストップで続いていく。
直臣衆と家臣団は、元日に集まりがあるそうで、父上とは結構早い時間に、新年の挨拶を交わすことが出来た。
家臣さんたちからの挨拶を受け終わったのは、日の入りの16時40分くらいだった。
ぐったりしながら屋敷に戻ると、さっきまで本丸で一緒だった皇が、すでにオレの部屋のソファで、足を組んでお茶していた。
「なぁっ!?」
おかしな声を上げると、皇はふっと笑って、オレをキュッと抱きしめた。
一緒に部屋に入ってきたいちいさんは『夕餉の準備は整っております。お望みの時にお呼びください』と、一礼して出て行った。
「さっきまで本丸に居たのに、いつの間に?」
「五日の新年会の準備が済むまで、三の丸におる。本丸は戦場のようだからな」
「……ここ、三の丸じゃないですけど」
皇を睨み上げると、口端を上げて『面倒事があるゆえ逃げて参った。かか様にはお許しをいただいておる』と、片方の眉を上げて、オレを抱きしめた。
「面倒事?」
「ああ。毎年、元日に男娼が贈られて参る。返す手間も面倒ゆえ逃げて参った」
「だんしょう?」
「男色を売ることを生業としておる者のことだ」
だんしょくをうるなりわい?
?
?
?
「男娼?!……え?何で?!」
「余が不能になったことに、責任を感じていらっしゃる余の夜伽の師が、毎年手を変え品を変え、元日にその手の人間を寄越すのだ。閨始めにとおっしゃってな」
「ねやはじめ?!」
「ああ」
皇が、オレ以外そういうことをする気が起きないっていうのは散々聞いてきたし、その言葉を信じてる。
だけど!
そんな話、聞かされたら面白くないに決まってる!
「どう致した?口が尖っておる」
チュッとキスをしてきた皇を、ギッと睨んだ。
「だって……」
ふっと笑った皇が、オレのこめかみにキスをした。
「そなたが贈られて参れば、このように逃げ回らず、喜んで受け取ろうものを」
オレの頬を撫でながら、嬉しそうな顔の皇が、オレの唇にキスをした。
「お前の夜伽の先生、まだお前が……出来ないって、思ってるの?」
「そのほうが、都合のいいこともある」
そう言いながら、皇はオレの着物の帯を解き始めた。
『どういう時に?』と聞くオレに、皇は笑いながら、何度もキスをした。
『余が不能であれば、色仕掛けで権力の恩恵に預かろうとする者を寄せ付けぬであろう?』と、そんな返事を聞いた頃には、オレの着物は脱がされて、肌襦袢一枚になっていた。
肌襦袢の上から、皇の指が、乳首を押す。
「ふっ……」
皇の腕を掴むと、皇はオレの首筋に唇を這わせて、耳たぶを唇で挟んだ。
「んっ!」
ゾクゾクと背筋が震えて『はっ』と小さく呼吸を乱すと、軽く開いた唇を割って、皇の舌が飛び込んできた。
「んんっ!」
口の中でオレの舌を吸いながら、皇はの指は、肌襦袢の上から乳首をこね回している。
腰の奥の”印”が、途端にうずき出した。
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