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第2話◎
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父の寝室の秘密を知ったのは、中学生に上がった後だった。
桐矢は相変わらず綺麗なままで、光に優しかった。白磁のような肌は歳を重ねるに連れて磨きがかかり、色気を増していった。
男性にしては滑らかな腰から足にかけてのラインを見ていると、身体が熱くなる。いたずらのようにそこに触れては、何度も桐矢を困らせた。
「ひゃっ……。もう、駄目だってば」
「ははっ。桐矢さんがどんくさいから」
形だけ怒ってみせる桐矢から、笑って逃げる。あくまでふざけているという体を保つためだ。
本当は気付いていた。自分の性の目覚めに。
友達もろくにいない光は、同世代が好んで見る雑誌や動画については知らない。代わりに、ずっとそばに桐矢がいた。
桐矢の放つ色香は、年頃の少年にとって強烈だ。はじめて光が自慰のお供に妄想したのは、風呂上りの火照った桐矢の姿だった。
そんな頃だった。
ある夜、喉が乾いて目が覚めた。台所に降りて水を飲み自分の部屋に帰る途中、父の部屋から明かりが見えた。
普段は堅く閉ざされたドアが、半開きになっている。
はじめは興味本位だった。ドアに近づくにつれて、桐矢のすすり泣くような声が聞こえた。
光はもう無知な子供ではない。それが意味するものを予想できた。予想しながらも、そっとドアの隙間を覗き込む。
「あっ、あぁっ、みかどさっ、だめっ」
「ここがいいんだろう、桐矢」
ベッドの上に裸で仰向けになり、しどけなく脚を開く桐谷。
淫らな声をあげながら腰を揺らす彼の尻穴に、父の指が入れられていた。
(あんなところに、指が……)
手のひらを上にして、中指と人差し指を激しく抜き差しすると、桐谷は悶えるように脚を伸ばした。
「はぁっ……! あっ、んぁっ、あー!」
ビクビクと痙攣するように、桐谷の身体が震えた。矯声の混じった息づかいを聞いて、光の下肢の中心に熱が集まりはじめる。
「はぁ……はぁ……あっ、待って、まだ、ぁん」
息も整わないうちに、再び太い指が桐矢の中に侵入する。
指を深くくわえこんだそこは、まるで別の器官であるかのようだ。きゅうきゅうと父の無骨な指を締め付けている。
「お前はここが気持ちいいのだろう?」
「あぁっ、だめ、まだイッて、あ、あぁ」
深いところに入れたまま、指を腹側に押すように動かしている。光は知る由もないが、前立腺のあるとこを刺激しているのだ。
腹の奥にあるそこを押されるたび、桐矢が甘い声をあげて跳ねた。
抵抗するように閉じられた両足を、父は無造作に持ち上げる。桐矢はされるがままに脚を上げ、父に導かれて健気にも自分の手でそれを持って支えた。
白い尻がシーツから浮き上がる。犯してくれとばかりに小さな孔が父の眼前に晒された。隠すもののない桐矢の裸体とは対象的に、父は上下ともに服を着たままだ。
「も、だめ…! あっ、いくから……挿れてっ」
(いく?)
桐矢の懇願を受け入れたのか、荒々しい指遣いが止まる。焦らすようにゆっくりとそれを抜いたあとに、自らのズボンの前に手を伸ばした。
大きくて赤黒い、大人のものが布の隙間から出てきた。光の未熟なそれとも、桐矢の愛らしいそれとも違う。
「これが欲しいか?」
「欲しいです……。帝さんの、挿れてほしい」
桐矢が誘うように太腿をすり合わせる。光は生唾を飲んだ。
激しい愛撫によって赤くなったそこに、凶悪な肉棒があてがわれる。先端に触れた孔の縁が拡がる様は、吸い付いているようにも見えた。
(入ってしまうのか、あんなものが)
無意識に、下着の中の自分のものを触った。
光が見ているなどとは露も知らず、父は欲望のままに桐矢の中を押し拓いていく。
「あぁ……ん……はぁ……」
慣れているのか、桐矢の顔に痛みは見られない。代わりに口を開き、赤い舌をちらつかせながら熱い吐息を吐いている。
あんなに大きなものを、ついに根本まで飲み込んでしまった。
「動くぞ。奥がいいか」
「はい……、あっ、あっ! ああっ!」
桐矢の口が閉じる間もなく、容赦のない律動が始まった。
快楽に跳ね回る桐矢の腰を、逃がすまいと両腕で掴む。固定され、逃げ場の無い桐矢の中を、肉棒が何度も蹂躙した。
パンッ、パンッ、と肉がぶつかる音と、開きっぱなしの桐矢の口から漏れる矯声が部屋中に響く。
唾液を零しながら必死に喘ぐその口を、噛み付くように父の口が塞ぐ。遠目からでも、激しく絡み合う舌が見えた。
「ふっ……うっ、はっ……」
貪るような口付けをしながら、押さえつけた桐矢の腰に打ち付けるように父の腰が動かされる。甘やかな喘ぎ声のかわりに、ぴちゃぴちゃと唾液の交じる音がした。
次第に動きは速く、激しくなる。最後に奥に入り込んたあとに、2、3度ほどさらに奥へぐりぐりと抉るような動きをする。
「ん、んぅ、んーーーー!、んっ」
桐矢の身体が一際大きく跳ね上がり、ビクビクと激しく痙攣する。暴れる桐矢を押さえ込むように父の腰が動く。押さえつけられながらも、桐谷の身体は震え続けた。
(これが、いく、ということか)
はっとして下を見れば、右手の中が光の白濁で汚れていた。
光は、2人に気づかれないようにそっとその場を離れた。
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