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第2話 化け物。に引きずりこまれる
水の底に引きずり込まれたのを覚えている。
助かるはずがなかったとその後、仲間達が言っていた。
奴らは獲物を逃したりはしないのだ。
光もささない深いところへ引きずりこまれ、もう酸素が無くなることを覚悟したのだった。
奴らは恐ろしい生き物。
獲物を沈めて殺して喰らうのだ 。
彼らが特に好むのは人間だ。
沈みながら目をあけた。
胸の中の酸素はもうなくなっていた。
水の中では絶対に敵わないからこそ、化け物の姿を見たかった。
死ぬ前に。
自分を殺すものを。
そして、化け物と目が合った。
化け物は美しかった。
こんな美しい生き物を見たことがなかった。
白い海中に光る肌も。
北の海のような冷たい青い目も。
波のような髪も。
青い尾鰭のある下半身さえ美しく見えた。胸が苦しくなる程に。
化け物もコチラを見つめていた。
その目が不思議に揺らぐ。
しばらく見つめ合う。
美しい「死」だ。
納得して受け入れた時だった。
美しい唇が重ねられた。
驚きと共に肺に空気が送り込まれ、夢中でそれを貪る。
その間に、ゆっくりと海の底から海面に上がっていた。
化け物は海面まで導くと、その白い腕を離した。
何故か、名残惜しいと思ってしまった。
漁師仲間の声がする。
必死でさがしてくれているのだ。
もう無理だと思っているだろうに。
化け物はまた唇を塞いだ。
海に浮きながら、空気ではなくその舌を夢中で貪った。
その舌の甘さに溺れた。
無意識に抱きしめて、下半身を押し付けていた。
そう、女にするように。
化け物にはゆたかな胸はなく、美しくはあっても男のように見えた。
下半身は魚のようだから、性別はわからなかったけらど。
吐息がキスの合間に聞こえて、たまらなくなった。
夢中でその舌を噛み、吸い舌で擦った。
白い胸を探り、その胸の粒を親指でつぶして、擦ると、堅くなり、尖ったのを感じた。
女のように抱きたい。
触りたい。
貪りたい。
そう思った。
だが、仲間達の声は近づいてくる。
仲間達の小船が来る前に化け物は離れて消えた。
夜更けの海岸に化け物を探すようになった。
海を見るだけで欲望がこみあげる。
あの海そのものの化け物が欲しくて欲しくてたまらない。
あの腕に抱いた白い身体に触れて、舐めて、噛んで、貫き、打ちつけるのだ。
その考えが離れない。
まるで熱に浮かされているよう。
さまよううちに海岸近くまで泳いでいるソイツをみつける。
化け物はこんなに陸に近づかないのに。
海に飛び込み、抱きしめた。
化け物も抵抗しない。
白い腕は引きずりこむためではない理由で背中にまわされた。
唇を重ねあう。
波打ち際まで化け物をつれていく。
砂と波の間に横たえる。
発光する肌。
海の味より何故か甘い。
夢中で白い胸にある阿波池田色の胸の粒を齧る。
思った通り、そこは女のように尖り、感じる。
凝らせる。
吸って、舐めて、また噛んだ。
噛んでなめる度に、化け物は高い声を上げて、その声に脳が焼かれそうになる。
可愛い。
化け物相手に言う。
恐ろしい生き物なのに。
胸や唇は人間のモノと変わらない。
でも、どうやって愛したらいい?
もっと・・・もっと・・・欲しいのだ。
化け物の白い指が、こちらの手をつかんで下半身へ導く。
触れたなら滑らかな下半身は魚というよりは、イルカのような感触だった。
導かれたそこにそれはあった。
そそり立たつ男性器が切り込みから飛び出していた。
そして、その性器の下にもう一つある切れ込みに指を入れたなら、そこには女のように濡れた穴があった。
「挿れていいのか?」
思わず囁くが、言葉は通じないだろう。
でもその目がそう語る。
指で優しくその穴を探ってやれば、白い背中を反らして、化け物は声をあげた。
気持ちいいのだ。
でも、そそり立った男のモノが先からこぼしているのも可愛くて、思わず咥えた。
そんなことはしたことなかった。
男を抱きたいなんて思ったこともない。
でも、男の部分さえ愛したかった。
口の中で性器が大きくなるのがさらに愛しかった。
どんどん育つそこを舐め、唇で扱き、吸ってやる。
女である穴の中も指を沈めてて、ぬかるみをさぐってやった。
中をゆっくりとかきまわす。
化け物は声をあげる。
敏感で淫らな身体を化け物は持っていた。
2つの性器を同時に愛してやった。
髪に指を立てられ、身体が自分の下ではねるように動くのが可愛くて仕方なかった。
人を喰う化け物を恋人のように抱いていた。
女ではなく、人間ですらないのに。
口の中に放たれた精液は、旨かった。
人間のモノは飲んだことがないから比較できないが。
女の場所も丹念に舐めてやったら、また、勃起して、迸らせて、声をあげて泣いて、本当に可愛い。
その口もとに自分の性器を近づけてみたら、夢中でしゃぶってくれた。
綺麗な髪を撫でながら、その舌が唇が、自分を愛するのを楽しんだ。
先の穴まで執拗に舐める舐め方や、含んだまま動く舌の動きの巧みさに、苛つきはした。
慣れているのが悔しくて。
誰と?
他の人魚と?
でも、喉の奥まで使う必死さに欲しがられていることに歓喜した。
髪は不思議な物質で出来ているようで、濡れているのにサラサラとしていた。
髪を撫で、首筋をなで、自分のモノを欲しがる化け物を恋人のように感じた。
いつ食いちぎられてもおかしくないのに。
下から見上げられる眼差しに思わずイった。
愛しすぎた。
放ったはずなのに硬いままだ。
押したおした。
もう、入りたかった。
ぬかるんだその穴に、ゆっくりと沈みこむ時に感じたのは、なぜか、快楽よりも愛しさだった。
「愛している」
誰にも言ったことのない言葉を囁いていた。
通じないのに。
自分を殺そうとした化け物なのに。
背中に回された腕に歓喜し、唇を少し開いてぼんやりとする顔に胸が痛くなった。
可愛い
可愛い
叫んでいたかもしれない。
化け物の奥深くまではいる。
恐ろしい生き物なのに、貪らずにはいられない。
狂ったように抱く。
化け物も必死で求めてくる。
言葉はない。
離れたくない溶け合いたい
熱い中が絡みつくことも。
そこの甘さが蕩けるようなことも。
絞るような慣れた淫らな動きに、嫉妬してしまうことも。
悔しさに女を代できたように抱き、悔しそうに噛まれて、また愛しくなる。
そして、快楽は凄まじくなる。
こんな風に声を上げながら、誰かを抱いたことなど、なかったなに。
何度出しても終われなかった。
でもそれ以上に。
「愛してる!!」
狂った言葉を叫び続けた。
何故?
わからない。
わからない。
夜明けまで、化け物と互いを貪りあった。
誰にも言えない。
それでも、どうしても会いたい。
でもでも夜な夜な出かけ、消耗する姿に仲間や家族が疑問に思い、交じり合う姿を見られた。
仲間や家族達は素早く動く。
何人も殺されてきたらからだ。
抱き合う最中に化け物は捕まえられる。
化け物の嫌う鉄の手錠がかけられ、ひきずられ、陸の上で殺されそうになる。
殺させないと必死でかばい・・・撃たれた。
それでも化け物を抱いて海へ逃げ出すことには成功した。
手錠をといてやる。
もう、これで海の中では化け物に誰も敵わない。
安心して沈んでいく。
化け物が海の中なのに泣いているのがわかる。
ちゃんと今度は食べろ、と思う。
食べてくれ。と。
これでいい。と。
化け物は撃たれた場所から流れる血を泣きながら舐めている。
甘いのだろ?
それがわかる。
泣いて、泣いて、海の中で叫んでいる。
言葉はわからない。
でも意味はわかる。
俺もだよ。
そう答える。
愛している。
意識は遠くなる。
化け物は本当に恐ろしい。
喰われることにさえ、幸せを感じさせてしまうのだから。
END
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