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♯2 即興曲〝桜隠し〟7

「いっぱい食べて。はい、あーん」  つながったままだからこそ、桜也の直腸から、真雪のペニスに直に伝わる。伝わってくる。  ごくんと嚥下する様子が。  食べ物が胃へと落ちていく様子が。  消化しようと胃や腸が活発に動く様子が。   (まるで、桜也と体を共有してるみたいだ…)  性欲を凌駕した感動が、真雪を包む。  真雪は一口も食べていないが、お腹なんてすかない。  だって、桜也の体は、真雪の体も同然なのだから。    桜也のお腹に手を置く。  たくさん食べて、少し膨らんだお腹。  なんて、なんて愛おしい。   「全部食べられたね。偉いよ、桜也」  よしよしと頭をなでてから、食後のデザートであるほうじ茶プリンを、桜也の口元に運ぶ。スプーンを運びながら、耳元で真雪はしゃべり始める。 「今日はね、代々木ホールに行ってたんだ。 今、関東地方を中心にして、『MAYUKI MADARAME ピアノリサイタル』をしてるところ。およそ2000席のホールなんだけど、ありがたいことに満席だったよ」  桜也の反応がなくても、真雪は嬉しそうにしゃべり続ける。 「ショパンの曲を中心に弾いたんだ。 桜也の好きだったあの曲も弾いたよ。 ほら、ショパンの 即興曲 第4番 嬰ハ短調 作品66……『幻想即興曲』」  ぴくり、と桜也が身じろぎする。  だが返事はしない。

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