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♯3〝チロシナーゼ欠乏症〟6

 また、肌が極端に弱く、紫外線にさらされるとすぐに炎症を起こしてしまうのも、チロシナーゼ欠乏症の特徴のひとつだ。  メラニン含有量が少ないと、皮膚細胞を守れない。よって、紫外線の影響をもろに受けてしまう。  そんな弱い肌が直射日光にさらされると、皮膚に炎症を起こし、皮膚がんのリスクが上がる。  だから、日焼けは絶対にNGだ。  夏でも長袖で、サンシェードやサングラスをつけ、体育も運動会もプールも欠席。  そんな真雪が、子どもの目に異質な存在として映ってしまったのも、しかたのないことだと言えよう。 「奇妙な転校生」  それが小学生の頃のクラスメイトたちの、真雪に対する第一印象。真雪は敬遠され、いつも一人ぼっちだった。  あの頃、一人ぼっちでぽつんとしている真雪がかわいそうだった。だから桜也は、真雪と友達になりたいと思い、声をかけた。  だが中学生の頃、彼が圧倒的なまでのピアノの才能を見せつけられると、「部活が忙しい」と理由をつけ、真雪から逃げた。  桜也は思う。  自分はただ、かわいそうな真雪を助けることで、優越感を味わいたかっただけなのかもしれない、と。    そんな醜い自分だから。  神様はこうして、自分に罰を与えているのだ、と。

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