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♯4 練習曲〝憧憬〟2

 桜也の中に入ったまま動かず、真雪は桜也の手を取り、誘う。  桜也の右手で、桜也の性器をにぎらせ。  桜也の左手で、桜也の乳首をつまませる。    戸惑う桜也に、真雪はにっこりと笑って言う。 「ねえ桜也。今ここでオナニーするところ、僕に見せて」 「な、にを…、真雪…? …やっ、あっ、あ…」  返事も聞かず、桜也の手に添えられた真雪の手が動き始める。  右手は性器を上下に擦り上げさせ、左手はくりくりと乳首をいじらせる。  むろん真雪がさせているのだが、まるで桜也が自分を慰めているように見える。 「どう、気持ちいい? 桜也…」 「ま、ゆき、恥ずかしい、から、見ないで…!」  桜也は身をよじって悶える。  真雪のものは桜也の中に入ったままだ。だから桜也が身悶えれば、ぐりぐりと桜也の中が刺激される。普通の自慰よりも強い快感に、桜也は嬌声をあげた。 「ああん、やあ……っ!」  自分で胸を揉み、自分で性器をいじり、喘ぐ。そんな桜也がかわいくてしかたない。かわいらしさに目を細めながらも、真雪はふと複雑な思いにとらわれた。  もともと桜也の性嗜好は女性だった。  中学生の頃は、サッカー部の女子マネージャーと付き合っていた。社会人になった直後も彼女がいたらしい。きっと独りの時には、彼女たちのことを想いながら、自分を慰めていたに違いない。  そう、真雪ではなく、彼女たちを想って。  瞬間、激しい嫉妬に胸を焼かれ、真雪の全身に力が入る。 「い、たい、まゆき…」  はっと気づくと、涙目の桜也が見上げていた。

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