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♯4 練習曲〝憧憬〟9
カーテンをひき、電気を消して、音楽室の鍵をかけて閉じこもり、グランドピアノの下にもぐりこむ。
グラウンドから聞こえる、サッカー部の練習のかけ声。
明るく健全なグラウンドとは対照的に、暗くじめじめした音楽室で、真雪はズボンの中に手をつっこんで、聞き分けのない自分のものを慰める。
「あっ、あっ…」
声を殺して喘ぎながら、真雪は想像する。
グラビア写真のようなポーズで、真雪を誘惑する桜也を。
あられもなく足を開き、両手を広げて、今にも真雪を受け入れようとする姿を。
……来て、真雪。おれの中に来て…。
「あっ、あ…」
現実にはあり得ない桜也のセリフが、幻聴となって耳に響く。
薄暗い音楽室の中で聞こえる、ぐちゅぐちゅと粘着質な音。
(桜也、桜也…!)
「…っ、出る…!」
あわててポケットティッシュを出して、欲望を処理する。最後に真雪が味わう感情は、いつも自己嫌悪だ。
(なにをやってるんだ、僕は…)
桜也が友情以上の感情を受け入れてくれるはずがないのに。こんなことしたって虚しいだけなのに。
丹念に手を洗ってから、真雪は再びピアノを弾き始める。傷心の真雪を、ピアノの音色だけが優しく慰めてくれた。
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