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♯6 スケルツォ〝転調〟3
「えっ⁉」
話が掴めず面食らう真雪に、マネージャーはコンセプトを説明する。
「“銀髪のピアニスト”“ショパンの再来”といわれている真雪。そして、世界的なオーケストラを率いる若き実力者、アレン・トーバー。
二人の邂逅が生む、奇跡の演奏…そんなコンサートツアーを企画しているんだ」
神田マネージャーの説明は、だんだん熱を帯びていった。
「数年前、あるウィルスの感染拡大を防ぐため、国や地域が閉鎖された時期があった。感染症の脅威は去ったものの、いまだ国と国とのつながりが、完全に復活したとは言い難い。
今こそ国境を越え、若き才能が共鳴し合う演奏会が必要なんだ! きっと多くの人に感動を与えるコンサートになるだろう!
さらには、斑目真雪の名を世界に轟かせるチャンスでもあ…」
「お断りします」
即座に真雪は断った。
マネージャーは目を丸くする。
「…は⁉︎ なんでそうむげに断るんだ。
こんなチャンス、滅多にあるもんじゃない。
いいか、よく考えてみろ、おまえとロイヤルマレット・フィルハーモニーが共演するということは…」
食い下がるマネージャーを見ていたら、心の底からふつふつと怒りが湧いてきた。
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