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♯7 ノクターン〝拒絶〟5

 出席番号はもちろん、会話の内容、桜也がおかわりした給食のメニュー、好きな漫画やゲーム、着替えの順番、桜也が練習しているピアノ曲などが、詳細に記録されている。  二人で買い食いした駄菓子の包み紙や、授業中に回したなぐり書きのメモが、宝物のように大事に貼られていた。   「スマートフォンの中もひどいもんだったぞ」  ロックを解除してもらい、画面を覗く。そこには最近の桜也の様子が記録されていた。   「ああん、そこ、いい…、…まゆきの、おいしいよぉ…」  動画を再生したとたん、聞くに堪えない無様な嬌声が響いた。あわてて動画をストップさせ、スワイプして中身を確認する。  どこを確認しても、二人が絡み合う映像ばかり。まるでAV動画サイトのようだ。  この部屋のいたるところに隠しカメラが設置されているのだろう。桜也のとろけきった顔が、いろんな角度から映されていた。 「ひっ…」  ひきつった悲鳴をあげて、桜也はスマートフォンをとり落とした。  「なんで、おれの名前を…」なんて愚問だった。このノートとスマホの中身を見て、実際に監禁されている現場に出くわしたら、誰だって「こいつは坂下桜也だ」だと即答できるだろう。    …怖い。あいつが怖い。  真雪の異常な執着心が、このノートとスマホに集約されている。  純白のへびに絡みつかれているようで、息苦しくてぞわぞわする。

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