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♯8 プレスト〝折檻〟1
無我夢中で、桜也の腕をつかんだ。
乱暴に腕を引き、崖から引き離す。投げ飛ばすようにして柵を超えさせ、ずるずると引きずって安全な場所まで移動する。
それから桜也をあおむけに倒し、馬乗りになり、ほおを思いきり殴った。
ごつ、と骨を穿つ音がした。
桜也に手をあげたのなんて、初めてだ。
「どうして、どうしてだよ、桜也。こんなとこから落ちたら、落ちたら…っ」
胸倉をつかんで揺さぶると、桜也は口の端から血を流しながら、ようやく言葉を発した。
「ま、ゆき…、どうして、ここに…」
ああ、桜也の声だ。
生きてる。生きてるんだ。間に合ったんだ。
真雪は息を吐く。と同時に涙がこみ上げてきた。
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