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♯8 プレスト〝折檻〟10

 懐中電灯を落とし、ヤンキーたちは逃げていく。    二人だけになった公園。  ころころと転がっていく、まぶしい明かり。  その明かりが、桜也の苦痛で歪む顔を照らす。 「ひぃん、ぃ…っ!」  桜也はがくがくと痙攣する。  目は限界まで見開かれ、よだれが口の端からだらだらと落ちる。手元は草を掻き毟り、足は必死でもがくあまり、地面を露出させている。 「…た、すけて、まゆき…、くるしい…」  快楽は許容量をオーバーし、ただの苦痛と化しているのか。  もがき苦しむ桜也を見て、真雪は自分を(あざけ)った。 (化け物、か…)  その通りだ。今の自分は人間じゃない。  愛する人をここまで苦しませるなんて、正気の沙汰じゃない。  真雪は腰を動かすのを止め、ぽつりとつぶやく。   「…ごめん。桜也。今度こそ開放してあげるから」  桜也のベニスをぎゅうっと圧迫している、ひも。  それを取ろうと手を伸ばした、その時。  桜也の手が、真雪の手をつかんだ。 「まゆき、もう、いやだ…、しにたい…」  ぽつりとこぼした桜也の一言が、真雪の心をぐわんと殴った。  あまりのショックで動けずにいると、桜也の両手が、真雪の両手をつかんだ。真雪の両手は、桜也の首元に誘いざなわれる。 「ねえ、おねが、い…。このまま、おれのくび、しめて…」  言うなり桜也は、真雪の手に自分の手を重ね、自らの首を圧迫し始めた。

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