153 / 164
♯11 ロンド〝回帰〟21
真雪は涙をぬぐって笑った。
「桜也ってば。今のセリフ、プロポーズみたいだよ」
「ぷろ…っ⁉ いや、あの…!」
真雪はくすくす笑いながら、朱に染まった唇にキスをした。
かあっと顔を赤くした桜也を抱き締めて、耳元で言う。
「ねえ、もう一回弾いてくれない? 『子犬のワルツ』」
「…ん。あんな下手な演奏でいいんなら」
再び部屋の中にピアノの音色が響き出す。
音楽室でピアノの話に興じていた、小学校の頃。
まるであの頃に戻ったみたいだ。
真雪のための『桜也の子犬のワルツ』。
拙いけれど一生懸命な音色が、桜也と真雪の心を繋いでいった。
ともだちにシェアしよう!