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理事長から預かった茶封筒の中の書類をぱらぱらとめくっていた会長が、ある一枚でピタリと手を止めた。
会長席に座るその両肩の上に息ピッタリな双子が顎を乗せ、書類を覗き込んで目を丸くする。一方、さらにその上から覗き込んだタツキの表情は、ちょっと疑わしげだ。
「編入テスト満点なんだあ!」
「うわぁ、すごいねえ!」
「…………裏口、の可能、性は」
時期外れの突然の転入生ってだけでこれだけ胡散臭いのだ、裏口入学の可能性もゼロではない。タツキが疑念を抱く気持ちには同調できる。
けれどまあ、ゼロに近いとは思う。というのも。
「それならこの点数は明らかに盛りすぎだ。あの理事が後々ボロが出るような捏造を背負わせるとは思えねえな。ましてや自分の甥に」
会長の言うこともそうだし、本当に裏口だったらもっと不自然さを気取らせず、こちらが疑う隙すら作らないと思う。
しかしまじで満点なら、純粋にすげえ。
この学園の編入テストで満点を取るような天才児がヲタルックで来ることは………いや、天才だからこそちょっと発想が変わってるって可能性も……。
いやいや、ないない。
転入生は美形で金持ちの天才児。把握。
右手首に巻いた細革の腕時計で時刻を確認。そろそろ約束の時間だ。
「理事長の甥ってどんなこなんだろー?」
「「僕達も見に行っていーいー?!」」
「だめです。では、行って参りますね。タツキ、双子がついて来ないよう見張っててください」
「「えーー」」
「りょかい」
「「えーーーん」」
「嘘泣き禁止」
俺としても未知の相手にひとりで会うのはちょっと不安だ。だがしかし、王道ルート通り副会長単独で行かなきゃ某腐男子が後々面倒なんだよ。
それにもし……万が一、転入生が王道通りだった場合、リウ及び学園の腐男子の期待はほぼ王道くんへと向かうはず。だからいち早く、どういう人間か見極めておきたい。
もしも王道くんがルート通りに周りの生徒を虜にしていけば、俺をそういう目で見る人間の数も自ずと減るかもしれない。そうなれば僥倖だ。
いやな、自意識過剰ではなく、【会長×副会長】とか、俺と俺の友人を掛け合わせた同人誌が学園内で実際に取引されてるそうなので。あれを見せられて以来、俺でそういうことを妄想する人間は漏れなく全員敵認定している。
もしも利害が一致するなら、リウの希望通り王道ルートとやらに協力してやらんこともない。そして違うようならルート打ち切りで腐男子の嘆く顔を拝んでやる。ククク……。
元より、ヲタルックで来る可能性がほぼゼロの時点で詰んだようなものだが。どんまい幼なじみ。
そんなことを頭の中でこっそり企みつつ、感想教えてね、という双子のお願いにはテキトーに応えておき、やや急ぎ足で校門へと向かった。
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