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「初対面に向かって失礼だろ!?」  会長たちに向かっていきなり怒鳴り付けた王道を、無礼だ野蛮だと罵る親衛隊の殺伐した空気で食堂はさらに騒がしさを増した。  見るのも聞くのも耐え難く、現実逃避よろしく王道の友達らしい二人の生徒の様子をちらりと伺う。  爽やかそうなイケメンくんは確かサッカー部の、ちょっと有名な一年生か。そして大人しそうな可愛い系の男の娘。どちらも周囲の剣幕に押され縮こまっている………いや。小柄な方は、期待したようなキラキラ輝いた目で俺達を見ている。  これはリウと同種、つまり腐ってると見た。 「りっちゃんと親しげなのも驚いたけどー」 「かいちょーたちを怒鳴りつけたのもびっくりだなー」 「「君、おもしろいね~~??」」  ……もう、この後は省略でいいだろうか。  ここから俺は完全に、傍観者。  興味を抱いた双子かはじめた「どっちがどっちでしょう」の恒例のゲームに見事正解。さらに会話の流れでマツリの節操のなさをお説教。決め台詞は「オレが友達になってやる!」。  周囲の悲鳴などお構いなしに、役員たちは王道への興味を露にしてゆく。  ただ予想外だったと、言えば。 「……嫌、」  わんこだ。  昼寝寸前から一変、王道に名前を尋ねられた瞬間、雰囲気が完全なる威嚇に変わった。  身長は190越え、それに見合うだけの体格と、普段の眠そうな目元からは想像もつかない鋭い眼光。チラリと覗く八重歯がまたそれに拍車を掛ける。  さすが野生の勘といおうか。こいつが厄介事を持ち込んでくるタイプだと直感的に察知したようだ。  でも俺の腰にいちいち腕を回して警戒するのは何故ですかね? 「っ、何でだよ!? 名前くらい教えてくれてもいいだろ!」  教えたら君、呼ぶでしょうに。 「や、……ぜったい、嫌」 「ルイの言う通りだよ」 「名前くらいいいじゃん」 「「ルイかわいそー」」 「タツくーん、とりあえず隠れてないでさぁ、出てきなよー」  隠れきれてはないけどね。  双子やマツリを一瞥することなく、俺の肩に顔を埋めもう甘えた発揮のわんこたん。  生徒会同士の接触に周りからの歓声すごいけど今はそれどころじゃない。重たい。誰か助けておくんなまし。 「何やってんだお前ら」  呆れた顔で俺とタツキを引き剥がしたのは会長。双子とマツリが王道と絡む最中は俺と同じく傍観者側で様子を眺めていたようだけど、さすがに黙っておくことが出来なかったようだ。  王道に軽く目をやった後、ソラ、ウミ、マツリ、最後に俺の順で、馬鹿を見るような顔を向けてくる。……屈辱。  しかしさすが生徒会長。この人が一歩前に出たことで、騒がしかった食堂は水を打ったように静まり返る。特にチワワ達はその一挙一動を見逃すまいと熱視線。  さてこの絶倫は一体どうなさるつもりか。頼むぜ面食いさんよ。 「オイ、お前ら4人。こんなヤツのどこがいいんだ?」  同感だな。 「こんなヤツ、じゃないよ」 「会長には関係ないじゃん?」 「「それにりっちゃんが気に入るくらいなんだし、イイコに決まってる!」」  俺なの? 俺が基準なの?  弁解したい弁解したい弁解したい。 「それに、度胸はあるようだしィ」  度胸じゃなくてだな、ソイツはただ頭が、中も見た目も残念なだけなんだ。 「……う、」  さすがに理解不能。  最後に視線を向けられた俺はバ会長と同意見なので、特に発言はせず睨みつけたくらい。各々の反応にバ会長は鼻で笑い、ジッと王道を観察した後、俺達より一歩前、王道と向き合う形で対峙した。 「よくンなダセェ格好で人前に立てるな。大人しく帰った方が身のためじゃねえ?」 「--なっ………っオレがどんな格好しようがオレの勝手だろ! それに、自分の居場所は自分で決める。お前の指図を受ける筋合いはねぇ!」  この一年生が何をどう主張しようが割かしどうでもいいのだが、それよりいちいち声を張らないでほしい。会長に噛みつけば噛みつくほど周りの反感を高めるんだって、わかんないかな。 「テメェの持論なんか知るか。さっきから、黙って聞いてりゃ随分馴れ馴れしい……ちったぁ立場ってもんを弁えろ」 「はあ? 友達に馴れ馴れしいも何もあるかよ!」 「勘違いも甚だしいな。目障りだと言っている」  いやはや。けっこうズバズバ言うな。  会長の言葉に後押しされたように、周りの生徒の罵声はさらに大きく、さらに苛烈なものへと変わる。……さすがにこの空気はマズいかもしれない。    

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