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  『……あ、誤解のないように言っておくと。確かに王道くんは興味深いけど、僕が最も敬愛してるのはヤンデレだからね!』 『急になんだ』 『僕の予想としては、王道くんを想うヤンデレくんで十八番といえば昔の族仲間だと思うの』 『やっぱりアイツ、昔はチームで暴れてた経歴でもあんの?』 『らしいね。それとなく聞いてみたらわりとサクッと聞き出せたよ』 『なんでお前、王道とマトモに意志の疎通ができるわけ』  しばらくするとまた回ってきたルーズリーフ(二枚目)。そして気になる話題へとこっそり誘導。  王道は王道らしく、恐ろしいほどの美形ホイホイだ。そして(表の)リウは、顔だけはいい。その上副会長である俺の幼なじみだから、つまり接触することはたびたびある。  だというのにコイツはあの猪突猛進すぎる性格を見事にヒラヒラ躱し、萌え情報のみを搾取することに長けている。  王道とマトモに話せるコツでもあるのだろうか。教えて腐男子さん。 『まあ……確かに王道くんとの会話って、相手にするのけっこう骨折れるけど、そこは忍耐でカバー』 『そもそもなんでお前、アイツに友好的な態度なの? 傍観者になるつもりなら、あんまり親睦深めない方がいいんじゃねえ?』 『僕の安全性の確保という意味では十分な利用価値があるからだよ』  他人に対して堂々と『利用価値』とか言えちゃうところに腐った人間性が透けてみえるようだ。  しかし安全性と言われたら気にならずにはいられない。黙って続きを促せば、リウはまたカリカリとシャーペンを走らせる。 『まず、好意的に接することで王道くん本人から反感を買う可能性をグッと低くするのが重要。基本、王道くんって自分を嫌ってる相手にこそ固執するタイプだし』 『……嫌えば嫌うほど関わってくんの?』  まじすか。"王道気に入ってる設定"は失敗したとこの一週間悔やんでいたけれど、もしかしてこっちの方が安全策なのか……?  確かにこの一週間、わんこに対して何度かしつこく『友達になろうぜ!』とか『照れるなよ!』とか、王道自ら絡みに行く場面を目撃した覚えがある。  王道ってもしや逃げられると俄然燃えちゃうタイプってやつ? 『美形に嫌われた場合は「オレを無視すんなよな!」のパターンだね。親衛隊の場合だともっとタチが悪いよ。「お前等の存在がアイツらを孤独にするんだ!」とかなんとか言って、親衛対象に親衛隊の悪口を吹き込んだり、隊員をたこ殴りにしたり』  あー……内情がどこまで同じかはさておき、何件か、その手の事案を聞いたな。生徒会役員の親衛隊ではなく、また別の王道信者の親衛隊で。暴力沙汰が、あったと。  幸い、うちの生徒会役員は親衛隊の存在で孤独を感じるほど豆腐メンタルでもないから、親衛隊を必要以上に邪険に扱うこともないだろう……と思いたい。  まあそれでも、王道への嫌がらせ件数を数えれば、ぶっちぎりで会長の親衛隊主犯が多いのだけれど。 『次に、僕が王道に好意を寄せることで、僕を受けだなんだと妄想する同胞たちをすべて王道受け厨へと転じさせること』 『あー……それは俺も考えてた』 『それから巻き込まれ腐男子受けの回避。結果、下手に逃げ回るよりも、いっそ仲良くなって、一人の王道信者として目立たず騒がず王道くんが言うことすべてを無難に受け流していれば事なきを得そうだなと』  ああうん、だいたい分かった。思ったより長いからもういい。このあたりでさっさと退くに限る。  スリーブ状態のパソコンを再び起動して仕事を続行。時間は有意義に使わねば。 「ハァ、ハッ……探したぜえ魔王様っ!! 親父の敵ィイッ!」  しかしそれも、今しがた全力疾走で教室に突如現れた教師によって見事妨害されてしまったわけですが。  

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